多くの人にとって春の訪れはうれしいものです。一方で、植物や木々の花粉が飛散する時期でもあり、花粉症の症状に悩んでいる人も多いのではないでしょうか。花粉症の原因となるアレルゲンは人によって異なるものの、スギ花粉が飛び交う春が1年で最もつらい時期という人もいます。この記事では、花粉症に悩む人へ向けて、花粉の侵入を防ぐカーテンについて解説します。
花粉はどこから家のなかにやってくるのか
花粉の侵入を効果的に防ぐためには、侵入経路について正しく理解することが大切です。まずは花粉がどのように家の中に入ってくるのか、侵入経路の割合を見ていきましょう。
外出後の衣類による花粉の侵入はとてもわずか
「花粉が付着するもの」と聞いて、衣類を思い浮かべる人も多いでしょう。確かに外出後の衣類には花粉が付着しており、家のなかに入る前に花粉を落とすことは一定の効果が期待できます。一方で、花王株式会社生活者研究センターの調査によると、衣類による花粉の侵入は侵入経路の2%に過ぎません。まったく意味がないわけではありませんが、衣類を払うだけで大きな効果を期待するのは難しいでしょう。
衣類以外の侵入経路としては、外に干した布団や洗濯物が挙げられます。これらは、衣類の付着と比較すると大きな割合を占めているため、花粉症の症状がある家族がいる場合は室内干しが望ましいでしょう。
花粉は「換気口」や「窓」から入ってくる
それでは、多くの花粉はどこから侵入してくるのでしょうか。前出の調査では換気口や窓からのものが60%を占めるとしています。これは、換気口や窓からの侵入への対策を講じれば、高い効果が期待できるということでもあります。そうはいっても、昨今の住宅事情は断熱性と通気性を両立させているものが多く、24時間換気のシステムが装備されているケースも少なくありません。また、トイレやお風呂場などの換気をやめるのは抵抗があるという人も多いでしょう。
ここからわかることは、換気口や窓からの換気を絶てば花粉の侵入も防げるが、それは現実的ではないということです。換気がなされていない部屋は空気が汚れ、決してよい住環境とはいえません。トイレの換気を止めれば臭いがこもり、お風呂場はカビが発生しやすくなります。キッチンでは臭いや煙の排出が不可欠です。
また現在では、新型コロナウイルス対策のために季節を問わずこまめな換気が必要になっています。何より、窓を開けて季節の風を感じることは生活の潤いにもなるでしょう。そのため、生活していくうえで必要な換気は適切に行いながら花粉の侵入をできるだけ抑えることが重要となります。
花粉をキャッチするカーテンがある
花粉の侵入対策は、窓に焦点を絞ると実践しやすくなります。カーテンの使用や選び方で、窓から侵入してくる花粉に対して一定の効果が期待できます。
レースカーテンの使用で侵入量は大幅に減少する
前出の調査では、レースカーテンを閉めるだけでも侵入量が40%減少するとしています。一般的にレースカーテンは、光や風を通しつつ、外からの視線を遮断するために使用されます。マンションの高層階など、人の視線が気にならない環境ではレースカーテンを使用しないケースも多く見受けられますが、花粉の侵入対策には非常に有効です。花粉症の症状がある場合は、レースカーテンの使用が必須だと考えましょう。
花粉をキャッチする素材「エフコット(R)」
近年では、花粉をキャッチする機能を持つレースカーテンが販売されています。なかでも帝人フロンティアが開発した素材である「エフコット(R)」は有名です。繊維にクリンプといわれる縮れが施されており、花粉やホコリをつかまえやすいという特徴があります。エフコット(R)は、一般のカーテンで使用されているポリエステル素材と比較して、約2倍以上の花粉キャッチ率を誇ります。機能性のみならず、コットンのような風合いの良さも人気の理由です。
多くの場合、エフコット(R)や同様の機能を持つ素材が使用されているカーテンは、その特徴を宣伝する広告があります。一方で、カーテンの品質表示は家庭用品品質表示法と消防法という法律で規定されており、ラベルを見ただけでは花粉キャッチ機能の有無を確認できないこともあります。家具店などで購入する場合はパッケージの表示を確認しましょう。オーダーでカーテンを購入する場合は、あらかじめ花粉キャッチ機能がある素材で製作してもらえるよう相談することが大切です。
花粉キャッチレースカーテンの特長
花粉キャッチレースカーテンには優れた特長があります。特長を生かして活用すれば、より快適な住環境づくりに役立つアイテムになるでしょう。花粉キャッチレースカーテンを清潔かつ多目的に使用するためは、以下の特長を把握しておくことが大切です。
洗濯機で丸洗いできる
エフコット(R)をはじめとして、多くの花粉をキャッチするレースカーテンはポリエステル素材でできています。ポリエステル素材は水にも強く、丸洗いが可能です。
そうはいっても、ドレープカーテンと比較すると生地は薄くデリケートなデザインであり、洗濯機で洗う場合はおしゃれ着なども洗えるモードに設定するなど、生地を傷めないよう配慮することが大切です。洗濯機の使用が不安な場合は、クリーニング店を利用したり、バスタブなどでの漬け置き洗いにしたりするといいでしょう。
また、使用する洗剤にも注意が必要です。アルカリ性の洗剤は汚れを強力に落とす一方で、適さない生地もあります。中性洗剤は比較的安心して使えるため、用意しておくといいでしょう。どんなに汚れをしっかりと落としたくても、塩素系漂白剤は生地を傷めたり脱色したりするため、使用しないようにしましょう。
洗っても機能は落ちない
花粉キャッチレースカーテンは、繊維の形状で花粉をキャッチします。コーティングとは異なるため、洗濯によって機能が落ちることはありません。一方、適さない洗剤を使って生地を傷めた場合や、干し方などに問題があった場合は、その機能を十分に発揮できなくなることもあります。使用する洗剤や洗い方、干し方などは、商品についているラベルをよく見て正しく扱いましょう。
ドレープカーテンとの重ね使いで多目的に
レースカーテンは単体で使うことは少なく、多くは生地が厚いドレープカーテンと組み合わせて使われます。レースカーテンとドレープカーテンにはそれぞれ異なる特長があり、重ね使いによってお互いの特長をより実感できます。
レースカーテンは主に昼間、採光や風通しを目的として使われる一方、ドレープカーテンは主に夜間、室内からの光を遮断し、断熱を目的として使われます。この2枚を組み合わせると、昼間はレースカーテンで花粉の侵入を防ぎながら換気を行い、夜は遮光と断熱のためにドレープカーテンを閉めるといった使い方が可能になります。レースカーテンだけでは心もとない窓際も、ドレープカーテンを使用することで安心感を得られるでしょう。
花粉キャッチレースカーテンの注意点
花粉キャッチレースカーテンは、目的や形状の特長から、通常のレースカーテンとは異なる注意点もあります。購入にあたっては、以下のポイントを把握しておきましょう。
サイズの測り間違いに注意
花粉キャッチレースカーテンは、窓全面をしっかりと覆ってこそ効果を発揮するものです。そのため、窓のサイズは正確に採寸する必要があります。「サイズを測り間違えて、下が30cm空いてしまった」という状況は、通常のレースカーテンであれば大きな問題にはなりません。
しかし、花粉キャッチレースカーテンでは隙間から花粉が侵入してしまい、本来の目的を果たせません。また、長すぎても風によって翻ったり、引きずることで余計に空間ができてしまったりすることもあります。特に掃き出し窓など、住宅によってサイズが異なる窓では、市販品の規格に合わないこともあるため、必ず採寸を行いましょう。
こまめに洗濯する
花粉キャッチレースカーテンは、あえて生地を縮ませることによって花粉を絡みつかせる仕組みです。花粉が絡みつくということは、細かなホコリも絡みつくということです。そのため、通常のレースカーテン以上に清潔を保つことが重要になります。具体的にはサイクルを決めてこまめに洗濯をするのが望ましいでしょう。特に花粉が多い季節は、絡みついた花粉が蓄積されやすいため、よりこまめな手入れが必要です。
洗濯が手間だからといって、花粉やホコリを放置しておくとカーテンが本来持っている花粉をキャッチする機能が落ちてきます。カーテン自体も変色してきて、見た目にもよくありません。そして、何より清潔を維持できず、花粉やハウスダストなどのアレルギーの発生や悪化につながる恐れもあります。花粉キャッチレースカーテンをうまく活用するには、こまめな洗濯が必要不可欠です。
まとめ
花粉症の人にとって春はとても憂鬱な季節です。しかし、カーテンを上手に活用することで、花粉の侵入を軽減できます。症状の程度にもよりますが「せっかくの春なのに窓を一切開けられない」という状態からも解放される可能性もあります。花粉が多くなるこの季節、花粉対策としてカーテンを見直してみてはいかがでしょうか。