3月から始めるガーデニング 初心者でも失敗しない花づくり4選

二十四節気の「啓蟄(けいちつ)」を迎える3月上旬は、ガーデニングを始めるのに最適な時季です。古くから啓蟄は、土のなかなどに身を潜めていた虫たちが表へ出てくる時季とされ、畑仕事を始める目安としている人も少なくありません。加えて昨今では、外出自粛の影響もあり、ガーデニングの人気が高まっています。この記事では、初心者でも育てやすい植物を4つ紹介します。

3月のガーデニングに向けて準備しておくこと

ガーデニングは土づくりが基本です。本格的なガーデニングシーズンを迎える前に、状態のよい土を用意しておきましょう。そうはいっても、土づくりは非常に奥が深く、本格的な土づくりには多くの知識が必要になります。ガーデニング初心者の場合は、失敗のリスクが低い方法で土を準備することを検討しましょう。

(1)プランター・鉢植えの場合
プランターや鉢植えの場合は新しい土に入れ替えましょう。園芸店やホームセンターには、植物の品種に合わせて配合した用土が販売されています。初心者はこれらの用土を利用すると安心です。

古い土は「燃やせる土」などの特殊な土を除いてゴミとして引き取らない自治体が多く、処分には注意が必要です。戸建てであれば庭にまく、マンションであればホームセンターなど土の引き取りを行っているところへ持って行くなどして処分しましょう。

昨シーズンに使用した土を再生して使用することも可能です。一方で、土の再生には再生剤を使ったり、配合し直したりといった手間がかかります。育てる植物に適した土に再生するのは、なかなか難しいのが実情です。

注意点としては、昨シーズンに使用した土をそのまま使って別の植物を育てないことです。植物にはそれぞれ生育に適した酸性度があります。土の酸性度が合わないとうまく育たなかったり、枯れてしまったりといった問題が発生します。また、同じ植物を育てる際にも、昨シーズンの使用で養分が失われている可能性があるため、土の入れ替えは不可欠だと考えたほうがいいでしょう。

(2)地植えの場合
地植えでは、冬の間に「天地返し」や「寒起こし」を行い、土を休ませます。これらの作業は、土の中に存在する雑菌や害虫などを寒気にさらして消毒するために行われます。この期間は気温が低いため雑草もほとんど育ちません。また、夏に育つ雑草も枯れて除去しやすくなっているため、きれいに取り除いておきましょう。

土づくりは一般的に、赤玉土や石灰、腐葉土、パーライトなどを配合して行います。ガーデニングを行う範囲が広く、多くの土を必要とする場合は、園芸店などに相談して土づくりの指導を仰ぐといいでしょう。

また、生ごみや雑草を堆肥化して使用する方法もあります。これらの方法はコストがかからない一方で、理想的な土の状態になるまで長い年月がかかることも少なくありません。完成すれば山の土のように柔らかく、植物がよく育つ土になります。しかし、初めてのガーデニングではホームセンターなどで品種に合わせて配合した土を購入するのが現実的です。

初心者でも育てやすい花(1) ゼラニウム

庭のアクセントになるゼラニウム

ゼラニウムはフウロソウ科テンジクアオイ属(ペラルゴニウム属)の多年草です。原産地は南アフリカ・ケープ地方で、3~12月上旬まで長期間花を咲かせます。色鮮やかな小花が多数集まり、こんもりとしたボール状となるため、玄関先や庭のアクセントとしても適しています。

ゼラニウムの栽培は高温と過湿に注意
ゼラニウムは乾燥に強い一方で過湿には弱く、湿度を適切に保つことが重要です。日本の梅雨はゼラニウムにとって過酷な環境になります。鉢植えは軒下へ移動する、地植えの場合は切り戻しを行って梅雨をしのぎましょう。水やりは表土がよく乾いてからたっぷりと与えます。用土が常にジメジメした状態にならないよう注意しましょう。

極端な高温にも注意が必要です。真夏は西日を避けて風通しのよい場所で育てます。地植えで場所を移動できない場合は、葉が混み合わないように植え方を工夫したり、適宜切り戻しを行ったりして風通しを確保しましょう。

ゼラニウムの土づくり
ゼラニウムはpH7.0~の弱アルカリ性を好みます。pHの調整は石灰などを混ぜて行うのが一般的ですが、分量を誤るとアルカリ性に傾きすぎる可能性もあるため、市販の用土を使うと安心です。

肥料は元肥としてカルシウムを含む緩効性肥料を与え、追肥は早春から初夏に1度、秋に1度行います。開花時に肥料過多になると茎が柔らかくなるため、肥料の量と与える時期に注意しましょう。

ゼラニウムの手入れ
ゼラニウムは生育が旺盛で、鉢植えでは根詰まりを起こすこともあります。真夏と冬を除いた時期に、一度鉢から取り出し、古い根を取り除いて植え替えましょう。日常的な作業は花がら摘みと枯れ葉を取り除くことです。これらを放置しておくと病気や害虫の原因になるため、随時摘み取りましょう。

初心者でも育てやすい花(2) ビオラ

可憐な色合いが人気のビオラ

 

ビオラはスミレ科スミレ属の一年草です。原産地はヨーロッパで、10月下旬~5月上旬まで花を咲かせます。冬の花として人気がありますが、春からのガーデニングでも初夏まで色とりどりの花が楽しめます。一年草ではあるものの、こぼれ種から花を咲かせることも多く、非常に育てやすい植物です。

ビオラの栽培は病気と害虫に注意
ビオラの花が楽しめるのは、5月上旬前の涼しい時期までです。前年の秋に植え付けを行った場合は、寒い冬を越すことになります。低温が続く時期は水が乾きにくいことで発生する灰色カビ病に注意しましょう。予防策としては、過度に水を与えないこと、水やりは晴天の午前中に行うことです。

気温が上がってくる春には、アブラムシやナメクジなどの害虫に見舞われることもあります。放置しておくと生育に影響するため、早めに駆除しましょう。病気と害虫は、風通しが悪くジメジメした環境で多発します。ビオラの密植は美しいものですが、可能であれば葉や花が混み合わない程度の距離で植えましょう。

ビオラの土づくり
ビオラは空気を多く含んだ水はけのよい土を好みます。手で握れば塊となり、簡単にほぐれるような団粒構造の土が好ましいでしょう。市販の用土を使用する場合は、草花用のものであれば問題ありません。自分で用土を配合する場合は、赤玉土6、腐葉土3、牛ふん堆肥1を目安にしましょう。

ビオラの手入れ
ビオラは次々と新しい花を咲かせます。古い花が残っていると茎からの養分が分散され、株が弱ってくることがあります。そのため、花がらは花のみならず花茎の付け根から切り取ることが大切です。

秋に種から花を咲かせたい場合は、花がらを放っておきます。こぼれ種からも発芽しますが、同じ花を咲かせるとは限りません。栽培場所を変えたい場合は、結実した果実が割れる前に採種し、十分に乾かして保管しておきましょう。

初心者でも育てやすい花(3) アジュガ

グラウンドカバーにもなるアジュガ

アジュガはシソ科キランソウ属(アジュガ族)の多年草です。原産地はアメリカ大陸を除く温帯地域で、4月~6月中旬まで花を咲かせます。匍匐性(ほふくせい)で地面を覆うように広がり、小さな花を多く咲かせる性質からグランドカバーとしても人気です。多年草のため、毎年植え付けを行わずともピンクや青紫の美しい花を楽しめます。

アジュガの栽培は強い日差しに注意
アジュガは温帯地域原産ではあるものの、真夏のギラギラとした日差しには強くありません。水はけがよく涼しい半日影を好みます。鉢植えでの栽培は軒下などが望ましく、地植えでは西日などの影響が少ない場所を選びましょう。

アジュガの土づくり
アジュガは通気性がよく、腐植質に富んだ土が適しています。水はけのよさと保水性を併せ持つ土が理想です。自分で配合する場合は赤玉土小粒6、腐葉土3、軽石1の割合を目安にしましょう。もちろん、市販の用土でも問題ありません。用土を選ぶ際には軽石など水はけをよくする機能を持つ材料が入っているものが望ましいでしょう。

アジュガの手入れ
日常的な手入れは花がら摘みを行う程度です。古くなった花を花茎の付け根で切ります。水やりは表土が乾いてからたっぷりと与え、地植えでは特に必要ありません。3月上旬は株分けに適した時季でもあります。根本をよく見ると、匍匐している茎から子株が出ているのが確認できます。子株を切り離して植え付けることで新たな株として栽培できます。

初心者でも育てやすい花(4) オステオスペルマム

花の色が豊富なオステオスペルマム

オステオスペルマムはキク科オステオスペルマム属の多年草です。原産地は熱帯アフリカ、アラビアで、1月中旬~5月、9月中旬~11月中旬と、年に2度開花します。花の色が非常に豊富で開花時期も長いことから、ガーデニング初心者からも人気のある植物です。

オステオスペルマムの栽培は温度管理に注意
オステオスペルマムは耐寒性、耐暑性ともやや弱い性質を持っています。そのため、温度管理が非常に重要です。鉢植えの場合は、雨が当たらず日当たりのよい場所で育てます。気温が低くなる12~2月は霜よけや室内への取り込みが必要です。

地植えでは軒下などの雨が当たりにくい場所を選び、冬場は霜よけを行います。寒冷地では冬越しが難しいケースも多いため、鉢植えでの栽培を検討しましょう。

オステオスペルマムの土づくり
市販の用土を使用する場合は、水はけのよいものを選びます。自分で配合する場合は、赤玉土中粒4、腐葉土4、鹿沼土中粒2が目安の割合です。植え付け時にリン酸分の多い緩効性化成肥料を、9月中旬から5月までは緩効性化成肥料と2週間に1度のペースで液体肥料を与えましょう。

オステオスペルマムの手入れ
多年草のオステオスペルマムは、成長とともに根詰まりを起こすことがあります。2年を目安に一回り大きな鉢に植え替えましょう。花がら摘みは開花期間を通して行い、6月と10月には切り戻しを行います。オステオスペルマムは冬の低温で花芽をつけるため、切り戻しは花芽を切らないよう、寒い時期を避けて行いましょう。

まとめ

色とりどりの花は生活に華やぎと潤いを与えてくれます。庭付きの戸建てはもちろん、マンションでもベランダでガーデニングを楽しむことは可能です。花は愛でるだけでなく、エディブルフラワー(食べられる花)として食卓に彩りを添えたり、湯船に浮かべて雰囲気を楽しんだりといった用途もあります。日差しが暖かくなってくる季節、ガーデニングの準備を始めてみてはいかがでしょうか。

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