2021年1月に再び緊急事態宣言が発出され、新型コロナウイルス感染症の拡大がやみません。それだけに、新築マンションにおいてもさまざまなレベルでのコロナ対応が求められるようになっています。今分譲各社はどんな点に力を入れているのか、実際の動きはどうなのか、具体的な例を見てみましょう。
住戸内外のワークスペース確保が最大の課題に
まずは、図表1をご覧ください。これは、株式会社リクルート住まいカンパニーが「SUUMO新築マンション 首都圏版」の2020年12月8日発行号に当たって、マンション分譲会社81社を対象に行ったアンケート調査の結果をグラフ化したものです。
コロナ禍によるライフスタイルや働き方の変化を踏まえて、分譲会社が注目する住まいづくりのポイントを聞いており、住戸内や共用部のワークスペースの確保が最大のテーマになっていることがわかります。
これまでの日本の住まい、その中でも専有面積が限られるマンションにおいては、ワークスペースはほとんど念頭に置かれませんでした。しかし、テレワークの定着で、住まいのなかにも仕事をする空間が求められるようになっています。
専有部の住戸内に設置できれば一番いいのでしょうが、そうはいかない場合もあるので、共用部にコワーキングスペースなどの形で、ワークスペースを確保することに力を入れようということです。
参考:リクルート住まいカンパニー「『今後の住まいづくり』アンケート」
居住者はテレワークしやすい環境に関心強める
こうした流れのなか、三井不動産レジデンシャル株式会社では、同社が分譲したマンションに居住している人たちを対象に、ニューノーマル時代に求められるくらしのサービスニーズに関する調査を実施しました。そのなかで、マンション内の共用部や設備に関する利用意向を聞いたところ、図表2のような結果でした。
非接触で荷物を受け取れる宅配ボックス、テレワークしやすい通信環境のための共用部Wi-Fi、そして共用部におけるワークスペースの確保としてスタディルーム、ライブラリーなどが上位に挙がりました。
こうした結果を踏まえて、2020年11月から販売を開始した「パークタワー勝どきミッド/パークタワー勝どきサウス」(東京都中央区)では、共用部のコワーキングスペースを充実させています。
参考:三井不動産レジデンシャル「ニューノーマル時代に求めるくらしのサービスニーズ調査」
約300平方メートルに及ぶコミュニティスペースを設置
「パークタワー勝どきミッド/パークタワー勝どきサウス」は、総戸数2,786戸のメガマンションで、都営地下鉄大江戸線の勝どき駅から徒歩1分、2分で、かつ駅と地下で直結した利便性の高いマンションです。
規模によるスケールメリットを生かして、共用施設がたいへん充実しています。パークタワー勝どきミッドの8階にはホテルライクなもてなしやくつろぎの空間が設けられています。ガラス張りの広々とした空間に、ラウンジパーティールーム、キッズパーティールーム、ゴルフレンジ、フィットネスルームなどがあります。
一方、パークタワー勝どきサウスの3階には300平方メートルに及ぶコミュニティスペースが設置されています。写真にある個室ブースのほか、会議室、リフレッシュスペースなどもあり、Wi-Fi、コピー機、電話ブース、自動販売機が設置されているほか、コンシェルジュが常駐して、利用者のさまざまなニーズに対応します。
リモートワークを行う人のなかには、オン/オフの切替えのために自宅以外で仕事をしたい、でも、電車での通勤やオフィスでの密などは不安という人もいます。そうしたニーズに対応できる空間として期待されます。
参考:三井不動産レジデンシャルプレスリリース「コワーキングスペース全体 完成予想イラスト」
在宅ワークのためのモデルルームを設置する動きも
マンションの専有部である居室内にワークスペースを設ける動きも強まっています。
たとえば、東急不動産株式会社は、「ブランズシティ世田谷中町」(東京都世田谷区)、「ブランズ浦和別所沼公園」(埼玉県さいたま市)の2物件に、事務用品のコクヨ株式会社との連携で協同開発した、在宅ワーク向けオプション家具を備えたモデルルーム「テレワークモデル」を設けました。
そのうち、ブランズ浦和別所沼公園では、写真にあるような可動式のパーテーションパネルでゾーニングを行い、緩やかなプライベート性をもたせ、仕事に集中しながらも家族とのつながりを意識できるようなプランニングになっています。
また写真にはありませんが、ベッドとしてもソファとしても使える、デイベッド型のワークスペースを設置したプランもあります。スマホやタブレットの利用を想定したUSBコンセントや、音の反響を抑制する吸音パネルを採用するほか、ベッドの下部は便利な引き出し収納になっています。
東急不動産では、こうした新しい日常に対する提案を行うなど、さまざまな社会課題の解決に向けた提案を行っていきたいとしています。
参考:東急不動産ニュースリリース「在宅ワークに対応したテレワークモデルの完成」
クローゼットにワークスペースを設ける例も
「リビオ」シリーズのマンションで知られる日鉄興和不動産株式会社では、リモートワークへの住まいのソリューションとして「リモタス」を提案しています。
そのコンセプトに基づいて、新生活様式にフィットする、収納+ワークスペースの新発想「リモーゼット」、間仕切り位置が選べるウォールドアの「リモドア」、収納下部を有効活用したデスクの「リモデスク」を採用したプランを用意しました。
たとえば、リモーゼットは、間取り図にあるように大容量のウォークインクローゼットのなかに、デスクやチェアを設置してリモートワークができる環境を整備します。リビングなどにワークスペースを設けるのと違って、居住空間が狭くなることがないので、居室のゆとりをキープしたまま、仕事用のスペースを効率よく確保できます。防音性の高いドアを設置すれば、電話やWeb会議などもできますから、仕事に集中できそうです。
リモデスクやリモドアなどと組み合わせれば、夫婦でテレワークに取り組むことができるのではないでしょうか。
参考:日鉄興和不動産プレスリリース「リモートワークへの住まいのソリューション『Remotas(リモタス)』 新発想の自宅内リモート空間『リモーゼット』『リモドア』『リモデスク』を分譲マンションに導入」
急速に広まるマンションの非接触キー
マンションは一戸建てに比べると敷地内、建物内での人との接触が多くなりますし、エントランスのキーやエレベーターのボタンなどに触れることもあります。そうした機会をいかに少なくするか、さまざまな取り組みが見られるようになってきました。
最近の新築マンションでは、リーダーにかざすだけでオートロックを解除できる非接触キーを採用する物件が増えています。また、1階エレベーターホールでは、やはり非接触キーをかざすだけで、エレベーターの呼び出しボタンを押せるようになっているケースもあります。
利便性向上のために進化してきた機能ですが、コロナ禍で安全・安心のシステムとして高く評価されるようになっており、今後は新築マンションの標準的機能として採用されるようになるのではないでしょうか。
さらに、エレベーターメーカーでは、エレベーター内の行き先階ボタンに関して、指先をかざすだけで行き先を指定できる機能を備えた機種を開発しており、新築マンションでも順次搭載が進んでいくことになりそうです。
顔認証でエントランスを通過できるようになる
非接触機能をさらに進化させ、安全・安心とともに利便性を一段と高めたシステムも開発されつつあります。たとえば、エントランスでの顔認証システムの採用などが、その例として挙げられます。
株式会社ライナフは東急リバブル株式会社の子会社であるリバブルアセットマネジメント株式会社の賃貸マンション「リバーレ」シリーズのエントランスに、検温機能付き顔認証システムの導入をスタートさせました。エントランスのモニターに顔を向けると自動的に検温され、顔が登録したデータと一致し、体温に異常がなければエントランスドアが開錠されます。
キーやドアに触れることなく、建物のなかに入ることができます。コロナ禍ではマスクをつけるのが当たり前になっていますが、最近の顔認証システムではマスクをつけていても大丈夫だそうです。また、小さな子どもと手をつないだままでも顔認証で開錠できますし、両手に大きな荷物を持っているときでも安心です。
参考:ライナフプレスリリース「東急リバブルの賃貸マンションに「検温機能付きAI顔認証システム」を導入」
これからは大切な人の命を守る選択を考える
2021年1月には再び緊急事態宣言が発出され、ポストコロナはまだ遠く、当面はウィズコロナが続きそうです。
それだけに、より安全・安心で快適に暮らせるマンションづくりが求められていますし、マンション選びに当たってもそうした対策の充実度が重要なポイントになってきそうです。
家族や大切な人の命を守ることにつながるのですから、最新動向を把握して、間違いのない選択につなげていただきたいものです。