ガス代や灯油代といった光熱費は、生活費のなかで大きなウエートを占めるもの。特に冬期はガス代や灯油代が高くなってしまい、生活費を圧迫してしまうことも…。そこで今回は、総務省統計局が発表している家計調査のなかから、プロパンガス、都市ガス、灯油代への支出金額が多い都市を調べてみました。
プロパンガスの年間支出金額が多いのは地方都市
まずは、都道府県庁所在市と政令指定都市(川崎市、相模原市、浜松市、堺市、北九州市)のうち、プロパンガスの年間支出金額が多い都市をチェックしてみましょう。プロパンガスの支出金額が多い理由についても探ってみました。
最多の山形市は5万円越え
プロパンガスの年間支出額が多い都市上位は、地方都市によって占められています。
そもそもプロパンガスとは、LPガスと呼ばれる天然ガスを詰めて業者が配達するタイプのガスのこと。敷地内にガス管を埋設する必要がなく、災害発生時でも利用できることから、イニシャルコストが安く、かつ災害に強いエネルギーとして、地方都市を中心に広く利用されているガスエネルギーです。
ただしプロパンガスの料金は、業者によって基本料金が大きく異なり、都市ガスと比較すると基本料金や単価が高額になりやすい傾向があります。プロパンガスは、ボンベを業者が配送するため、運送コストがかかることから、どうしても高額になりがちなのです。
プロパンガスの年間支出金額が多い地域では、プロパンガスの基本料金や単価の高さだけでなく、冬期の温度や灯油の利用量とも関係がありそうです。
後ほど灯油の年間支出金額ランキングも紹介しますが、プロパンガスを利用している世帯では、灯油も併用していることが多い傾向にあり、給湯を灯油で賄っているのか、プロパンガスで賄っているのかによっても状況が異なります。給湯は灯油、調理のみプロパンガスを利用するという選択肢もあるわけです。
都市ガスの普及率との比較
プロパンガスを利用している地域は、都市ガスの普及率が低い地域であるとも言えます。2014年度末の全国の都市ガス普及率は約46%。都市ガスの供給率は実は約6%に過ぎません。
都市ガスは、ガス管を地中に埋設して各家庭にガスを届けるため、容易に整備することができません。特に内陸部への導管はなかなか進んでいないのが現状です。
先ほどのプロパンガスの年間支出金額が多い都市ランキングに、都市ガスの普及率を当てはめて考えてみましょう。
全国の都市ガス普及率は約46%ですが、都市部以外では10%を下回る道府県が多く、プロパンガスの支出金額が多い地域は都市ガスの普及率が低い地域とマッチすることがわかります。
都市ガスの年間支出金額が多いのは都市部
次に都市ガスの年間支出金額が多い都市とその理由について解説していきます。
最多の大阪市は7万円越え
都市ガスの年間支出金額が多い都市は、都市部ばかりだとわかります。都市ガスの普及率とともに確認してみましょう。
都市ガスの普及率と、都市ガスの年間支出金額の多さはおおむね一致していると考えられます。
灯油の年間支出金額が多いのは寒冷地
次に灯油の年間支出金額が多い都市もチェックしてみましょう。
最多は青森市、北国が上位を席巻
灯油の年間支出金額が多い都市ランキングの1~5位はすべて北国です。1位は青森市で、年間支出金額は、7万8,541円でした。
買って持ち運ぶだけでも大変そうですが、灯油を大量に使用する地域では、敷地内に大型の灯油タンクを備え付けてあることがほとんど。ひいきにしているガソリンスタンドなどが巡回して、灯油タンクが空にならないよう補充してくれるケースが多いようです。
寒冷地では、灯油をストーブや床暖房などの暖房用だけでなく、給湯用にも用いていることが多いため、温暖な地域と比較すると支出金額が多くなる傾向にあります。
上位都市と下位都市の年間平均気温を比較
では、灯油の年間支出金額と年間平均気温に相関はあるのでしょうか。確認してみましょう。平均気温は気象庁の過去気象データから2019年のものを参照しました。
灯油の年間支出金額の多い都市は軒並み平均気温が低く、支出金額が少ない地域は東京以西の都市です。しかしながら、支出金額が少ない地域が温暖な地域かというとそうでもなく、都市部が多い印象です。都市部において灯油の支出金額が小さい理由は、住宅環境に起因していると考えられます。
集合住宅では、灯油を用いた暖房機器の利用を禁じているケースが少なくありません。また集合住宅では、屋外に灯油タンクを設置できないケースが多く、灯油の入手も手間がかかります。
以上のような理由から、都市部では灯油の支出金額が少ないと推測できます。灯油の支出金額が少ない都市部は、都市ガスの支出金額が多くなっている傾向があるため、給湯や暖房を灯油ではなく、都市ガスに依存しているとも考えられます。
まとめ
プロパンガスの支出金額が多い地域は、都市ガスの普及率が低く、都市ガスの支出金額が多い地域は都市部に集中していて、灯油の支出金額が少ないなど、それぞれが相関していると言えそうです。都市ガスが普及している地域では、一般的に、都市ガスを利用したほうが光熱費は抑えられます。物件を選ぶときは、都市ガス物件を選ぶようにするだけで、光熱費を節約できそうですね。
監修:ファイナンシャル・プランナー(AFP)二宮 清子