バス代・タクシー代の支出金額が"日本一多い"都市はどこ? 理由も考察!

通勤や通学、お出かけに便利なバスやタクシー。バス代やタクシー代を多く使っているのは、いったいどこの都市なのでしょうか。今回は総務省統計局が発表している家計調査をもとに、バスやタクシー代を多く使っている都市をランキング化してみました。調査結果とともに、バスやタクシーが多く利用される理由を考察していきましょう。

バス代・タクシー代を多く使っている都市ランキング

まずは、都道府県庁所在市と政令指定都市(川崎市、相模原市、浜松市、堺市、北九州市)のうち、バス代・タクシー代を多く使っている都市を確認してみましょう。あなたが住む地域はランクインしているでしょうか。

バス代を一番多く使っているのは長崎市!

出典:総務省統計局「家計調査(二人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング <2017年(平成29年)~2019年(令和元年)平均>」

バス代を多く使っている都市の上位にランクインしたのは、長崎市、奈良市、広島市、水戸市。地方都市が名を連ねています。東京都区部は18位でした。地方都市が上位にランクインしている理由は後ほどじっくり考えてみましょう。

タクシー代を一番多く使っているのは川崎市!

出典:総務省統計局「家計調査(二人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング <2017年(平成29年)~2019年(令和元年)平均>」

タクシー代を多く使っている都市の上位にランクインしたのは川崎市、福岡市、東京都区部。バス代ではトップ10に入らなかった東京都区部が3位にランクインしています。モノレールを除いて電車が走っていない那覇市が8位に入っている点にも注目です。

東京都区部と那覇市のある沖縄県の共通点は、タクシーの初乗り料金の安さにあります。

出典:一般社団法人 東京ハイヤー・タクシー協会「タクシー運賃料金表」 、一般社団法人 沖縄県ハイヤー・タクシー協会「運賃表/法人タクシー」

東京都区部(東京23区)のタクシー料金は、初乗りが420円と割安のため「チョイ乗り需要」が多く、タクシーに乗るハードルがほかの都市より低いと考えられます。

また沖縄県は初乗り運賃こそ東京よりも安いものの、初乗り運賃で乗れる距離数は東京の1.5倍以上で、超過距離数が約130メートルも長いことから、2キロメートル乗っても630円という安さ。タクシーに乗るハードルが東京同様に低そうですね。

余談ですが、かつて筆者が沖縄を訪れたとき、現地の友人が「タクシー代が安いから、お金を出し合って高校生がタクシーで通学する」と聞いて驚愕したものです。

 

前橋市民はバスもタクシーも使わない?

バス代とタクシー代が少ない都市、いずれもトップは群馬県前橋市

次にバス代・タクシー代の年間支出金額が少ない都市ランキングを並べて見てみましょう。

出典:総務省統計局「家計調査(二人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング <2017年(平成29年)~2019年(令和元年)平均>」

バス代・タクシー代の支出が少ない都市ランキングの1位はいずれも前橋市でした。
総務省が実施した家計調査(2017~2019年平均)によると、前橋市のガソリン購入量は全国7位です。また、群馬県は1世帯当たりの自動車保有台数が1.625台と全国4位(※)。日本有数の車大国といえます。
※一般財団法人 自動車検査登録情報協会「自家用乗用車(登録車と軽自動車)の世帯当たり普及台数(平成31年3月末現在)」

前橋市のバス代・タクシー代が少ない理由の一つに、公共交通空白地域が存在し、バスを利用しようにも利用できない点があると言われています。自動車による移動に頼らざるを得ない状況なのです。

また、自分自身が運転できなくても、家族が送迎をしてくれるため、タクシーも積極的に利用されていないとも考えられます。

 

地方都市でバスが多く利用されている理由

都市によってバスが利用される理由は異なります

先述したように、バス代を多く使っているのは地方都市でした。なぜ地方都市でバスが利用されているのでしょうか。「平成22年国勢調査」の通勤・通学の交通手段から考察してみましょう。

・長崎県の通勤通学手段
バスが多く使われる長崎県では、通勤通学手段を「自家用車」と答えた人の割合は56.1%。ほかの九州地方の県が軒並み6割を超えているなかで、長崎県だけは5割強にとどまっています。

次いで多いのが、「乗合バス」で12.1%、次が「徒歩だけ」で11.5%です。「乗合バス」で通勤している人の割合が、日本で最も多いのが長崎県でした。

長崎はすり鉢状の地形で知られます。坂道が多いことから自家用車よりもバスなどの公共交通機関が多く利用されているのかもしれません。

・奈良県の通勤通学手段
奈良県の通勤通学手段を「自家用車」と答えた人の割合は38.7%。この数字は首都圏に通勤をする人が多い埼玉県や千葉県に匹敵する数字です。また鉄道とバスの両方とも使うと答えた人の割合は6.7%。

奈良県で鉄道とバスが通勤に使われている理由は、奈良県の県外通勤の多さにあるといえます。同年の国勢調査によると奈良県から県外に通勤する人の割合は29.9%。全体の約3割が県外に通勤しておりその9割近くが大阪府に通勤しています。

都市圏の企業の多くは電車などの公共交通機関での通勤を推奨していることから、奈良県は自動車社会であるにもかかわらず、バスをはじめとした公共交通機関の利用が多いと考えられます。

・広島県の通勤通学手段
広島県の通勤通学手段を「自家用車」と答えた人の割合は48.1%。隣接する岡山県や山口県の自家用車を利用する割合は7割近いことを考えると、かなり低いことがわかります。

広島県でバスもしくはバスと電車の両方を使って通勤している人の割合は7.2%。バスのみを利用する人の割合は5.1%と全国平均の2.5%の2倍です。

広島県のなかでも広島市中心部は路面電車やバス網が充実しており、「自家用車」を使わずに日常生活を送ることは可能そうです。

実は、広島は日本の乗り合いバス発祥の地。日本で初めてバスが走ったのは1905年(明治38年)のことで、広島市の可部と横川を結んだ「かよこバス」と呼ばれたバスが日本初のバスといわれています。広島が日本の乗り合いバス市場のトップをけん引しているのは、乗合バス発祥の地であることも関係しているのかもしれません。

公共交通機関が発達している都市は自動車よりも公共交通機関を使う?

バス代を多く使っている地方都市は、バスをはじめとした公共交通機関が発達していました。地方都市は公共交通機関が発達していても自動車保有率が高く、自動車通勤ができないわけではありません。

にもかかわらず、バスなどの公共交通機関を利用する人が多い理由は、公共交通機関での通勤にメリットが多いからだと考えられます。公共交通機関で通勤をすれば会社から交通費が支給されますし、車の維持費も軽減されます。

また国、地方自治体では公共交通機関での通勤通学が増加すれば、環境への負荷が軽減し、渋滞も緩和されることから、バスをはじめとした移動手段の利用を推奨しています。

現在はバスなどの利便性が低く、利用されていない地域でも、オンデマンドバスなど使い勝手の良いバスシステムを導入することで、バスの利用を促進する取り組みを推進しているケースもあります。

今後は従来とは異なる使い方ができるバスも登場しそうです。一部地域では自動運転バスの試験運行も行われており、今後の展開に期待できますね。

 

まとめ

バス代やタクシー代を多く支払っている地域は、首都圏や大都市に集中しているかと思いきや、バスは地方都市で多く利用されていましたね。タクシー代は、初乗り料金が安く、利用ハードルが低い東京都区部や、長距離でも安い那覇市が上位にランクイン。東京や沖縄を訪れたときは、気軽にタクシーを利用している人々の姿を目にするかもしれません。

監修:ファイナンシャル・プランナー(AFP)二宮 清子

(最終更新日:2021.03.19)
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