国際情勢の変化によって、大きく価格が変動するガソリン価格。ガソリン価格の値上がりが話題になっている今、マイカーを保有している家庭にとって、ガソリンの使用量は大きな関心事項ですよね。そこで今回は、都市別のガソリン購入量ランキングをお届けします。
ガソリン購入量が多い都市、少ない都市ランキング
一般家庭では、主にガソリン車やバイクの燃料などに利用されることの多いガソリン。まずはガソリン購入量が多い都市、少ない都市のランキングを確認してみましょう。使用しているデータは総務省統計局が発表している「家計調査」の令和2年版です。
ガソリン購入量が最も多いのは山口市
まずは、都道府県庁所在市と政令指定都市(川崎市、相模原市、浜松市、堺市、北九州市)のうち、ガソリンの購入量が多い都市を確認してみましょう。
ガソリンの用途は、自動車だけでなく発電機や工場の機械など、さまざまです。一般家庭では発電機や大型機械を使用することは少ないため、こちらのガソリン購入量は、大半がガソリン車やバイクに給油されている量と考えられます。
予想していたとおり、ガソリン購入量の上位は地方都市が席巻。公共交通機関が大都市ほど発達していない地方都市では、ガソリンの購入量が多い傾向です。
数ある地方都市のなかで、これらの地域が上位にランクインしている背景については後ほど解説します。
ガソリン購入量が最も少ないのは東京都区部
ガソリン購入量が少ない都市ランキングの上位は、首都圏を含む人口が多い都市部ばかりです。いずれも公共交通機関が発達し、自動車を用いなくてもある程度は日常生活を送ることができる都市ばかりとなっています。
国土交通省が5年に1度実施している「大都市交通センサス」という三大都市圏の公共交通機関の利用実態調査によると、首都圏では平成22年から平成27年にかけて、通勤目的の乗車人員が629万人から682万人に増加しています。
また、都道府県別の一世帯当たり自家用車の普及状況の調査によると、東京都は0.439台で、47都道府県中最下位です。これらの要因により、今後も東京都を中心とした大都市部でのガソリン購入量は低い状態が続くと考えられます。
山口、金沢、鳥取、山形が上位になった理由
次に地方都市のなかでも、山口市、金沢市、鳥取市、山形市の4市のガソリン購入量が、ほかの地方都市よりも多い理由を考えてみましょう。
公共交通機関の普及とガソリンの使用量の相関
公共交通機関がどれくらい普及しているかを把握するため、2010年に実施された国勢調査から、通勤や通学に利用する交通機関を「自家用車」と回答した人の割合が多い上位10都道府県を抜粋。さらに、ガソリン購入量が多い都市のランキングも付け加えてみた表は下記の通りです。
通勤・通学に自家用車のみを利用すると答えた人の割合が多い都道府県と、ガソリン購入量が多い地方都市には一定の相関関係があることがわかります。
ところが、ガソリンの購入量が多い山口市のある山口県(67.2%で23位)、金沢市のある石川県(70.6%で14位)は上位にランクインしませんでした。
一世帯当たりの自動車保有台数とガソリン購入量の関係
次に、一世帯当たりの自動車保有台数とガソリン購入量の関係について統計を確認してみましょう。
今回のガソリン購入量のランキングに利用したデータは「二人以上世帯」を抽出したものなので、一世帯当たりの自動車保有台数が多い都道府県のガソリン購入量が増加すると考えられます。
そこで、都道府県別の自家用乗用車の普及状況の調査から、一世帯当たりの自動車の保有台数を抜粋しました。
一世帯当たりの自動車保有台数が多い都道府県と、ガソリン購入量が多い都市はある程度合致しているようですが、福井市のガソリン購入量が全国27位という点だけが不自然です。なぜ、福井県は自動車保有台数が日本一多いのに、福井市のガソリン購入量は少ないのでしょうか。
福井県総務部政策統計課が2013年まで発信していた「統計スポット情報」にヒントがありそうです。2008年(平成20年)の統計スポット情報によると、福井県では全国平均と比較すると、軽自動車の割合が多く、普通車の割合が低い傾向にあります。一般的には軽自動車のほうが普通車よりも燃費がよいことが多いため、ガソリン購入量も少なくなるのかもしれません。
また、福井市ならではの要因としては、福井市が行政、経済、教育の中心地であり、福井市在住の人が福井市内に通勤・通学している割合が高いことも考えられます。平成19年5月31日版の「統計スポット情報」によると、福井市の昼夜人口比率は113.1%。夜間よりも昼間のほうが人口が多いことがわかります。これは他市区町村から通勤・通学している人が多いことの表れです。福井市在住の人が福井市内に通勤通学している割合も高いと想定されますので、移動距離が短くガソリン購入量が少ないと考えられます。
※参考:福井県総務部政策統計課「統計スポット情報」従業地・通学地による人口について〜国勢調査から〜
一世帯当たりの自動車保有台数の多い都道府県トップ10には、ガソリン購入量が多い都市ランキング1位の山口市のある山口県、2位の金沢市のある石川県が登場しません。山口県の一世帯当たりの自動車保有台数は1.243台と全国30位です。その理由については次項目で読み解いていきます。
一人当たりの面積が広い? 行動範囲の広さ
次にガソリン購入量が多い都市ランキングの上位都市の人口密度を比較してみましょう。
山口市の人口密度は全国の県庁所在地で最も低く、最も高い東京(新宿区)のおよそ100分の1。広い土地にゆったりと暮らしていることがわかります。山口市の人口密度は約190人で、46位の鳥取市は約245人。山口市は圧倒的に人口密度が低いのです。
また、山口市民には山口市外で働く人が少なくありません。平成22年の国勢調査によると、山口市在住の働いている人と学生のうち、17.6%が市外に通勤通学していることがわかりました。また県外に通勤通学している人も、10万5,323人中706人です。
国土交通省の「自動車燃料消費量統計年報」と「全国都道府県別自動車保有台数」から都道府県別自家用車の1年間の走行距離を計算してみたところ、山口県は約1万1,200キロメートルと、全国平均の約1万メートルより1,200キロメートルほど年間走行距離が長いことがわかりました。山口市では、ほかの都道府県よりも通勤、通学時の移動距離が長く、年間走行距離が多いことから、ガソリン購入量も多いのではないかとも考えられます。
まとめ
ガソリン購入量の上位は地方都市ばかりでした。若者の自動車離れが定期的に話題になりますが、公共交通機関が大都市ほど発達していない地方都市では、自動車がなければ生活することもままならないケースもあります。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大、継続により東京都の人口流入数は減少中。郊外や地方での暮らしを選択する人も増えているようです。
今後、都市圏から地方都市への引っ越しを考えている人は、地方では自動車が欠かせないことを念頭において、資金計画を立てるとよいですね。
監修:ファイナンシャル・プランナー(AFP)二宮 清子