毎年2月16日頃から申告期間が開始する確定申告(還付申告の場合は、同日以前も可)。2020年度は延長措置があったとはいえ、2ヶ月の申告期間中に確定申告を終える必要があり、多くの人が苦労したかと思います。「こんなことなら定期的に入力作業をしておくんだった」「確定申告用の書類はまとめておけばよかった」などと、毎年同じような後悔をしている人も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、フリーライター歴10年の筆者の経験をもとに、確定申告で苦しまないための方法を解説します。無理なく取り入れられて続けられる方法を取り上げたので、「これからは心を入れ替えて頑張りたい!」と意気込んでいる人はぜひ参考にしてみてください。
多くの人が陥る確定申告の落とし穴
確定申告は「早く終わらせなきゃ」と思いつつもなかなか手を付けられず、結局期限ギリギリに提出してしまいがちです。なぜ多くの人が確定申告に苦しめられるのか、「確定申告あるある」を探ってみましょう。
確定申告あるある1:確定申告をすべきかどうかわからずに放置
フリーランスになったばかりの人、副業収入がある人のなかには確定申告をすべきかどうかの判断ができずに、先延ばしにしてしまい期限ギリギリになることがあります。以下の条件に該当する場合は確定申告を行う必要があります。
●副業収入がある場合
・副業の所得が20万円を超えている場合
※住民税の場合は申告が必要な場合もありますので注意を
・2箇所以上の事業所から給与を受け取っている場合
・医療費控除を受ける場合
・住宅ローン控除を受ける1年目の場合
副業を始めたばかりの人が勘違いしやすいのが「所得」という単語です。所得とは収入から経費などを差し引いた金額のことです。つまり副業収入が25万円あったとしても、副業収入を得るために支払った経費が10万円であれば、所得は15万円ということになりますので、所得税の確定申告は原則として必要ありません。
●フリーランスの場合
・所得が48万円を超えている場合
フリーランスの場合は「基礎控除」と呼ばれるすべての人に適用される控除が48万円ですので、所得が48万円を超えていれば確定申告を行う必要があります。
確定申告あるある2:売上・経費の入力をサボりすぎて挫折
フリーランス、副業をしている人のなかには、確定申告を表計算ソフトやクラウド会計ソフトなどで行っているケースも多いのではないでしょうか。確かに、会計ソフトは確定申告の手間を大幅に軽減してくれるのですが、入力をサボっていると売上・経費の未入力項目が膨大になってしまい、心が折れてしまいます。定期的に入力することを心掛け、上手に活用しましょう。
確定申告あるある3:必要書類がないから後回しに
確定申告を行うためには、提出しなければならない書類、用意しなければならない書類があります。領収証や経費のレシート、医療費の領収証など確定申告を行う際に必ず参照しなければならない書類が見当たらないと、ついつい後回しにしてしまいますよね。
なかには経費に計上できたはずのレシートを紛失してしまい、本来の所得よりも多く申告する事態に陥った人もいるのではないでしょうか。
確定申告あるある4:フリーランスの繁忙期と確定申告期が重なる
フリーランスの多くは2〜3月にかけて繁忙期を迎えます。フリーランスが年度末の3月に忙しくなる理由の一つが企業の決算月。なぜなら、多くのフリーランスの顧客である法人の決算は3月末に集中しているからです。
国税庁によると269万9,881の法人のうち、3月末決算の法人は55万4,147。全体の2割以上が3月に決算を迎えます。年度内に予算消化するため、社外への発注を増やすケースが多いようです。そのため、2・3月のフリーランスの多くが多忙を極めているというわけです。
作業をしても収入が増えない確定申告より、時間を費やせば収入になる仕事をフリーランスは優先してしまいたくなるものです。
税理士直伝! これだけやれば確定申告は怖くない
さまざまなハードルが確定申告への着手・完了を阻みますが、放置しても確定申告は終わりません。むしろ「確定申告しなきゃ」という焦りが脳内を占拠することにより本業の効率が落ちてしまうことも。
そこで確定申告に苦しまないための簡単な方法を紹介します。この方法を実践していれば、次回の確定申告にはスムーズに進むはずです。
ポイント1:書類置き場を可視化する
確定申告には、「確定申告をするために参照しなければならない書類」と、「税務署に提出しなければならない書類」があります。いずれも紛失してしまうと確定申告が進みませんので、散逸させないことが大切です。
【確定申告をするために参照しなければならない書類】
・支払調書
・経費のレシート
・源泉徴収票(給与所得がある人)
・医療費の領収書(医療費控除がある場合)
【税務署に提出または提示しなければならない書類】
・給与所得の源泉徴収票 ※
・生命保険料控除証明書 ※
・地震保険料控除証明書 ※
・住宅ローン控除のための必要書類(建物・土地の登記事項証明書、借入金の年末残高証明書など)
・社会保険料控除証明書 ※
・小規模企業共済等掛金控除の証明書 ※
・寄附金の受領証明書(ふるさと納税を含む) ※ など
※所得税の確定申告をe-Tax(電子申告)により行う場合、第三者作成書類については、その記載内容を入力して送信することにより、これらの書類の税務署への提出または提示を省略することができます
これらの書類には自身で手配するものだけでなく、生命保険会社や住宅ローンを借りた金融機関から送付されてくるものもあります。確定申告シーズン前にバラバラに届くので、「大切なものだから」としまいこんで行方不明になってしまわないように注意が必要です。
書類の紛失を防ぐために重要なのは、定位置を可視化することです。心の中で、「ここに置こう」と決めて見えない場所に片付けるのはNG。見えなくなってしまうと、書類の存在を忘れてしまう可能性があります。
ですから、シールなどに「確定申告の必要書類」と記載してチェストや収納ボックスに貼り付けて、常に目に入るようにしましょう。居場所が確定することで、書類の紛失は防げます。
ポイント2:細かい分類は気にせず、とにかく集める
確定申告のために必要な書類は種類が多いため、きれいに分類をして保管したい気分になります。「今年こそは」と経費の領収書を貼り付けるファイルなどを購入しようと考える人もいそうですが、細かくルールを決めすぎるのは筆者の経験上、おすすめしません。レシートや領収書を台紙に貼り付ける、ファイルに分類するなどの作業は長続きしないことが多いでしょう。
それよりも「全部入れる箱」を作って、確定申告に関係しそうな書類を全部入れておくのが無難です。紛失のおそれはありませんし、箱に入れるだけだから手間もかかりません。「書類をなくさないこと」を目標に、ゆるく書類集めを継続しましょう。
ポイント3:クラウド会計ソフト・アプリで自動化
確定申告を格段に楽にしてくれるのが、クラウド会計ソフトやアプリです。クラウド会計ソフトは、インターネット銀行やクレジットカード、各キャッシュレス決済と連携することができます。
売上げの入金や仕入れた製品の支払い、経費の決済や外注費の支払いなどをすべてインターネットバンキングやクレジットカードで行えば、その情報を会計ソフトが自動で取り込んでくれるのです。
青色申告に必要となる複雑な複式簿記に必要な仕訳も自動で行ってくれるため、記帳の手間が大幅に軽減されます。自動仕訳には誤りがあるケースもありますので一通り確認は必要ですが、手動入力の手間と比較すれば格段にラクになることが期待できます。
さらにクラウド会計ソフトでは、記帳さえ終われば確定申告書も自動で作成してくれるものもあります。確定申告書の作成に必要な情報も明確に表示されるため、従来と比較して確定申告をスムーズに行えるでしょう。
まとめ
フリーランスは2・3月に仕事と確定申告に悩まされがちですが、確定申告スタートと同時に作業を終わらせることができると、えも言われぬ爽快感があり、3月の仕事がスムーズに進むことも。インターネット上やフリーランス同士の雑談で飛び交う「確定申告が終わらない」という嘆きを尻目に仕事に没頭できます。ぜひ参考にして、次回の確定申告は先延ばしにせずに真っ先に終わらせましょう。
※この記事は、記載日時点の法令・通達などに基づいて作成しています。一般的な取り扱いを記載したものであり、個々の前提などを勘案した上で判断する必要があります
監修:油谷 景子さん(税理士/油谷景子税理士事務所代表)https://tax-mgt.com/