新しい暦に変わると確定申告が気になってしまう人も多いのではないでしょうか。働き方が多様化している現在、会社員でも確定申告を行う人は決して少なくありません。しかし、いざ確定申告の時期を迎えると、「面倒くさいな」と億劫になってしまうこともあります。
一方、2019年よりスマートフォンでの確定申告が可能になっており、ハードルは低くなりつつあります。この記事では2021年におけるスマホでの確定申告について解説します。
スマホで確定申告ができるように
確定申告と聞くと、煩雑な書類作成が必要なイメージがあるかもしれません。しかし、スマホでの確定申告が可能になったことで、個人での確定申告が容易になりつつあります。
2019年1月からスタートしたスマホでの確定申告
スマホでの確定申告は2019年1月からスタートしています。このことに対する認知度は決して高いとはいえず、従来どおりの方法で申告を行っている人も少なくありません。また、サービスが始まった当初は、e-TaxアプリとマイナポータルAPアプリをインストールする必要があり、スマホを使い慣れている人でも煩雑なイメージがあったことも事実です。
2021年1月からはマイナポータルAPのみで送信が可能となり、スマホを使った確定申告の増加が期待されています。
作成画面はスマホやタブレットに最適化したデザイン
スマホでの確定申告では、従来のように電卓を使用して計算を行ったり、専用のソフトを使用したりする必要はありません。
実際にスマホの作成画面を見ると、デバイスに最適化されていることがわかります。氏名や性別など、指示に従って内容を入力していくと、最終的に所得税の確定申告書が作成される仕組みです。
作成後は「マイナンバーカード方式」「ID・パスワード方式」のいずれかを選択して送信します。また、従来のように作成した確定申告書を印刷して税務署に提出することも可能です。
スマホで確定申告ができる人
スマホで確定申告ができるようになったといっても、すべての人に可能となったわけではありません。可能なケースは限られており、自分が該当するか否かを事前に確認しておくことが大切です。
収入について
スマホでの確定申告は給与所得、公的年金等、その他雑所得、一時所得が対象です。給与所得では年末調整済1ヶ所、年末調整未済2ヶ所以上に対応しています。
多くの企業では給与所得者に対して源泉徴収を行っているケースが多く、確定申告は必要ありません。しかし、給与の年間収入金額が2,000万円を超える人、2ヶ所以上の企業から給与をもらっている人など、一定の要件のもとでは個人で確定申告を行う必要があります。
一方、事業所得や不動産所得がある人はスマホでの確定申告はできません。具体的には個人事業主や給与所得者でも事業所得や不動産所得のある人は、収支内訳書等を作成し税務署へ提出する必要があるため、スマホでの確定申告で完結できないので注意が必要です。
所得控除について
確定申告では、実際の収入から控除できる14の項目があり、それらを漏れなく入力することで適正な所得税を計算できます。
14の項目には、よく知られているところで基礎控除や医療費控除、生命保険料控除が挙げられます。ほかにも、地震保険料控除や寡婦控除など「これも控除になるの?」と思うような項目もあるため、保険などの加入状況や寄付金の金額はしっかり把握しておきましょう。
申告間違いを防ぐためにも、年末が近づいてきたら所得控除の証明となる書類を漏れなくそろえておきましょう。
税額控除について
税額控除は所得控除とは異なり、税額から直接差し引かれます。節税効果が高いため、該当する項目がある場合は忘れずに申告しましょう。2020年現在、スマホでの確定申告では政党等寄附金等特別控除と災害減免額が対象となっています。
住宅ローン控除について
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用してマイホームの新築、取得、増改築等をした場合に一定の要件を満たすときは、住宅ローンの年末残高の合計額の1%相当額を還付される制度で、「住宅ローン減税」とも呼ばれます。個人ができる節税のなかでも効果が非常に高く、スマホでの申告が可能なため、該当する人は忘れずに申告しましょう。
実際の申告では「住宅借入金等特別控除」「特定増改築等住宅借入金等特別控除」と表記されます。給与所得者は1年目のみ確定申告が必要で、2年目以降は原則として勤務先での年末調整で手続きを行います。
注意点は、1年目の申告でマイナンバーカードを利用しなかった場合、証明書データの取り込みができないため、2年目以降の手続きでも計算をしなければいけないことです。可能であれば、1年目からマイナンバーカードを利用して申告しましょう。
スマホで確定申告する手順
スマホで確定申告ができるケースに該当することがわかったら、手順を確認しましょう。基本的に難しい操作はなく、必要な書類があればスムーズに申告書を作成できます。ここでは、スマホで確定申告をする手順を解説します。
(1)国税庁ホームページにアクセス
2020年現在、スマホでの確定申告における推奨環境は、iOSはSafari、AndroidはGoogle Chromeとされています。Android端末ではGoogle Chromeが標準ブラウザである必要があるため、事前に確認しておきましょう。
まずはスマホで国税庁のホームページにアクセスし、「確定申告書等作成コーナー」へ進みます。次に、トップページの「作成開始」をタップします。トップページには、作成の流れを説明するページへのリンクもあり、初めてスマホで確定申告を行う場合は一度確認しておくと安心です。また「作成開始」のほかに「保存データを利用して作成」の項目もあり、後から作成したデータを確認することもできます。
注意点は、スマホでの確定申告はあくまでも所得税に限られることです。消費税や贈与税の申告書を作成したい場合や、収支内訳書、青色申告決算書など事業に関する申告書の作成には対応していないため、気をつけましょう。
(2)提出方法を選択
続いて、画面に表示される質問に回答していきます。まずは提出方法を「e-Taxで提出する」か「印刷して書面提出する」のいずれかを選択します。e-Taxを選択した場合は、さらに「マイナンバーカード方式」「ID・パスワード方式」のいずれかを選択します。
それぞれの提出方法についてはこのあと詳しく説明します。
(3)申告内容に関する質問に答える
次に氏名や性別、生年月日など、本人情報を入力します。「必須」の表示がある欄は、入力しなければ次に進めません。
その後は給与所得の入力へ進みます。給与所得の入力には、勤務先などから発行される源泉徴収票が必要です。画面に表示される項目と源泉徴収票を照らし合わせながら、間違いのないよう入力しましょう。そのほかの質問は、基本的に「はい」「いいえ」のいずれかを選択していきます。指示に従ってタップしていきましょう。
最後に、e-Taxを選択した場合は送信の指示が、印刷を選択した場合は印刷の指示が表示されます。
提出方法:マイナンバーカード方式の場合
マイナンバーカード方式は、マイナンバーカードを持っている人を対象とした提出方法です。先に発行された通知カードは利用できないので注意しましょう。マイナンバーカードは申請しなければ発行されません。この機会に発行を検討するといいでしょう。
マイナンバーカードを読み取るICカードリーダライタは、一部のスマートフォンにも搭載されています。iPhoneではiPhone7以降で対応しており、Androidでは機種によって対応の有無が異なっているのが実情です。対応機種については一覧が開示されているため、事前に確認しておきましょう。
(参照)マイナンバーカードに対応したNFCスマートフォン一覧
2020年秋からはマイナポイントの申請が始まり、その際に自分のスマホがICカードの読み取りに対応しているか否かを始めて知ったという人も少なくありません。基本的には、スマホでマイナポイントの申し込みができた場合は、マイナンバーカード方式での確定申告も可能だと考えていいでしょう。
提出方法:ID・パスワード方式の場合
手持ちのスマホにICカードの読み取り機能が搭載されていなくても、スマホでの確定申告は可能です。税務署へ出向き、IDとパスワードを発行してもらうことで、申告書を印刷しなくてもe-Taxでの申告ができます。
IDとパスワードの発行には、運転免許証などの本人確認書類が必要です。発行は即日で、税務署が開庁している日なら時期を問わず受け付けてもらえます。所得税は納税地を管轄する税務署に届け出るのが一般的ですが、IDとパスワードはどこの税務署でも発行可能です。管轄する税務署に出向く機会がない場合は、勤務地などから近い税務署に発行してもらっても問題ありません。
注意点は、発行されたIDとパスワードを厳格に管理することです。紛失した場合、e-Taxでの確定申告ができなくなるだけでなく、IDとパスワードの無効化や再発行の手続きが必要になります。他者から悪用される可能性もゼロではないため、発行後は自身の責任で管理しましょう。
なお、国税庁は、ID・パスワード方式を「マイナンバーカード方式が普及するまでの暫定的な対応」としています。将来的には廃止もありえますので、e-Taxによる申告を行うためには、この機会にマイナンバーカードを取得した方がいいでしょう。
提出方法:書面の場合
マイナンバーカードを持っておらず、IDとパスワードの管理に不安がある場合は、従来のように印刷して税務署に提出することも可能です。スマホで必要事項を入力すると、確定申告書がPDFで出力されます。このデータを印刷して税務署に郵送もしくは持参すれば提出完了です。
「自宅にプリンタもない」という場合は、コンビニなどでもPDFの印刷は可能です。提出方法としてはハードルが低く、特別な準備もいらないため、初めて自分で確定申告を行う場合は印刷による提出も検討してみましょう。
確定申告はデジタル化が進んでいるものの、確定申告書そのものを自分の目で確認することも非常に重要であり、仕組みを理解するためにあえて印刷を選ぶのもひとつの選択肢です。持参は税務署へ出向く手間がかかりますが、その場でわからないことを教えてもらえたり、ミスを見つけてもらったりできるといったメリットもあります。これらも踏まえて、自分に合う方法を選択しましょう。
まとめ
2020年の改正により、確定申告書をスマホのみで完結できる人が増加しました。手順を追って入力していけば、自宅にいながらにして確定申告が完了します。従来の記入方式と比較して手間が格段に省けるうえ、専門的な知識がなくても自動計算によって正確な数値が算出されるなど、メリットも少なくありません。該当する人はスマホでの確定申告を検討してみましょう。
(最終更新日:2021.02.04)