お正月といえば「もち」。鏡もちにお汁粉、焼いて食べても煮て食べてもおいしいもちですが、日本一もちを購入している都市はどこなのでしょうか。今回は、総務省の家計調査をもとに、もちの購入量が多い地域をランキング化してみました。日本全体の人口が減少しているなか、意外なことにもちの購入量が増加している地域も見つけたので、その理由も含めて紹介します。また、もちの形の地域差についても解説していますので、ぜひチェックしてくださいね。
全国もち購入量ランキング
まずは、都道府県庁所在市と政令指定都市(川崎市、相模原市、浜松市、堺市、北九州市)のうち、もちの年間購入量が多い都市をチェックしてみましょう。
もちの購入量ランキング1位は富山市。全国平均と比較すると1,170グラムも多く購入していることになります。丸もち1個を34 グラムとすると、1年間で34個も購入している計算に。
富山市が2位の相模原市を大きく引き離して圧倒的なもち購入量1位を誇っている理由の1つは、富山県名産のもち米「新大正糯(しんたいしょうもちごめ)」が好んで食べられていることにあるといわれています。新大正糯は富山県外ではなかなか手に入らないことから「幻のもち米」とも呼ばれ、粘りとコシが強く、風味が豊かな最高級品との呼び声も高いもち米です。
また、富山県にはさまざまな行事でもちを配ります。妊娠5ヶ月の「腹帯祝い」や出産祝い、お七夜、生後100日のお食い初め、1才のお誕生日などの節目節目でもちを贈ったり、近所に配ったりする文化や風習があるそうです。
安産を祈願して「ころころもち」を作る地域もあるとのこと。出産後3日目にはもち粉で作った団子をお味噌汁に入れるそうです。
もちの購入量が少ないのはどこ?
次にもちの購入量が少ない都市もチェックしてみましょう。
青森市、秋田市の東北2県を除くと西日本の県が多く、特に九州の都市が半分以上を占めていることがわかります。日本一もちの購入量が少ない都市は、青森市。最も多い富山市の半分以下です。なぜ青森市はもちを購入量が少ないのでしょうか。
その理由を探るべく、ほかの穀類の購入量を確認してみたところ、米は平均的なのですが、パンや小麦粉の購入量も非常に少ないことが分かりました。
青森では米以外の穀物が好まれないのではないかというとそうではありません。青森の購入量が上位に位置している食品がありました。
それがカップ麺です。
青森県のカップ麺の購入量は全国で1位の5,422グラム。全国平均が3,819グラムですので、その購入量の多さがわかるかと思います。
では青森の人がラーメン好きなのかというと、そうとも言い切れません。青森市の「即席麺」購入量は全国平均とほとんど差はありません。
青森では、パンや餅などの購入量が少なく、カップ麺が多いという事実から推測できるのは、カップ麺がおやつ化していること。ほかの地域では「ちょっとお腹がすいたからパン・おもちを食べよう」と考えるところを、青森では「小腹がすいたからカップ麺を食べよう」とおやつ感覚でカップラーメンを食べているのかもしれません。
また青森は日本有数の積雪地帯。冬は雪が積もって外出ができなかったり、非常に大変だったりすることから、保存食としてカップラーメンを多く消費することも考えられます。
令和になっても増えている! もち購入量が増加している都市は?
もちの購入量は年々低下しています。全国平均はこの10年で年間500グラムも少なくなってしまいました。 ところがそんなもちの購入量の減少が続くなかで、もちの購入量が増加している地域があります。
それが金沢市です。金沢市の平成20年のもち購入量は3.26キログラムでしたが、令和元年は3.4キログラムにまで増加。もち購入量ランキングでも3位にランクインしています。
金沢でもちが好まれ続けている理由の一つは、金沢市民のお菓子好き。人口約10万人当たりの登録件数でみた洋菓子店の多さは4位(石川県)、同じく人口約10万人当たりの登録件数でみた和菓子店の多さでも2位(石川県)なことから、和洋を問わずお菓子好きなことがわかります(出典:NTTタウンページデータベース)。
これらのデータから金沢ではほかの地域よりも、「おやつ」や「デザート」にお金をかけることに対して抵抗が少ないことが想定されます。また和菓子人気も根強く、市内には多数の老舗和菓子店があり、人気お土産ランキングにはもちのお菓子がズラリ!
もちをおやつとして食べることが生活に根付いており、そのことがもちの購入量を大きく引き上げているのかもしれません。
あなたの家は丸もち? 角もち? 地域別の形状と消費量
もちの形状には地域差があります。地域による形状の違いと、そこから見えてくる消費量の差を考えてみましょう。
餅の形は地域によって違う!
結論を先に言いますと、西日本は「丸もち」、東日本は「角もち」です。丸もちは平たくて丸い形をしたもち。角もちは四角く切られたもちです。
丸もちと角もちの境界線切りもちは岐阜県の関ヶ原あたりといわれており、関ヶ原より東は角もち、西は丸もちになっているのです。
境界線上の、岐阜県、石川県、福井県、三重県、和歌山県では地域によって丸もちと角もちの両方が食べられているそう 。
ちなみにあるメーカーによると、 丸もち一個あたりの目安重量は34グラム、角もちは48グラムと角もちのほうが、一つ当たりの量は若干多くなっています。
もちの形状の違いにみるもちの購入量
ここで再びもちの購入量に注目してみましょう。農林水産省によると、角もちを食べる地域の多くは焼いて食べるそうです。丸もちの地域の一部も焼いて食べることはありますが、一般的には煮て食べることが多いそうです。
これを踏まえて、もう一度もちの購入量ランキングを確認してみましょう。
もちの購入量ともちの形状や食べ方を比較してみると、購入量が多い地域は「角もち」を焼く地域が多く、購入量が少ない地域では丸もちを煮る地域が多いことがわかります。
ここから推察できるのは、もち調理の手間の差による購入量の違い。一般的に焼きもちは非常に簡単に作ることができます。オーブントースターで焼けますので、火を使うことなく食べられます。
一方でもちを煮るのは大変です。鍋を用意しなければならないし、火も使います。
つまり角もちを焼いて食べる地域では、パン感覚で簡単にもちを楽しめるということ。この食べるまでの調理過程の手間の違いがもちの購入量の差につながっている可能性もあります。
まとめ
お正月には多くの人が食べるもち。実はもちの消費量には大きな地域差がありました。あなたの地域はランクインしていましたか?
地域によってもちの形状や食べ方も異なりますが、今年のお正月は違う形のおもち、違う食べ方に挑戦してみてはいかがでしょうか。西日本に住んでいるの人は四角いもちを焼いて食べ、東日本にお住まいの人が丸もちを煮て食べると、新鮮に感じるかもしれません。