毎月の家計のなかで、特に大きな割合を占めるのが家賃や住宅ローンなどの住居費です。月々の支払額が決まっているだけに、住居費の見直しは家計全体に大きな節約効果をもたらします。では、住居費を節約するにはどのような方法があるのでしょうか。賃貸の場合と持ち家の場合、それぞれの節約ポイントを紹介します。
年収から考えた場合の住居費の割合は何%が理想?
住居費が適正かどうかは、額面年収(以下「年収」とします)に占める割合を確認するとわかります。現在の年収と照らし合わせて、どのくらいの住居費が理想的なのかを考えてみましょう。
住居費は家賃や住宅ローンなどのほかにもある
住居費とは、住まいに関係する支出のすべてを指します。家賃や住宅ローンだけでなく、管理費や固定資産税なども含めて考えるようにしましょう。車を所有している人なら月々の駐車場代も必要になります。さらに、火災保険や地震保険など住まいに関わる保険料も住居費の一部です。それらをすべて合計して、年間にどのくらいの住居費がかかっているのかを確認してみましょう。
家賃は年収の20~25%くらいが理想
住居費は年収の30%程度が適正といわれています。そこから考えると、家賃は20~25%ほどが理想といえるでしょう。たとえば、年収500万円の場合、毎月支払う家賃の理想的な範囲は、次のように考えられます。
500万円×20%÷12ヶ月=8.3万円
500万円×25%÷12ヶ月=10.4万円
賃貸の場合、管理費や駐車場代が家賃に含まれているケースと含まれていないケースとがあります。管理費や駐車場代を別途支払うようであれば、それらを含めて適正な範囲内に抑えられるかどうかを確認してください。理想的な物件に出合うと、つい「少しくらい予算オーバーしてもよい」と考えがちですが、その分は別で節約しなくてはなりません。ゆとりある生活を楽しむために、なるべくなら家賃を抑えることをおすすめします。
住宅ローンの場合は年収の20~25%くらいを目安に
住宅ローンを組む際も、年間の返済額は年収の20~25%程度が目安といわれています。ただし、賃貸の場合と違って、住居に関わるさまざまな支出が増えることに注意してください。固定資産税や火災保険、マンションであれば管理費や修繕積立金などがかかります。
年収500万円の例で考えてみましょう。年間のローン返済額を年収の20~25%とすると、月々の返済額は8.3万~10.4万円です。住宅ローンの返済以外に毎月4万円の住宅関連費用がかかると仮定すると、年収に占める住居費の割合は次のようになります。
20%の場合:(8.3万円+4万円)×12ヶ月÷500万円×100=29.52%
25%の場合:(10.4万円+4万円)×12ヶ月÷500万円×100=34.56%
返済比率を25%として計算すると、年収に占める住居費の割合は30%を超えてしまいます。支払える範囲とはいえ、家計にゆとりがないと感じるかもしれません。
賃貸住宅で住居費を節約するには?
ここからは、住居費の節約ポイントについて解説します。まず、賃貸住宅を選ぶ際には、次のような点を意識しながら物件選びをしてみてください。
街の中心部や駅から離れた場所を探す
街の中心部や駅の近くなど、利便性が高くなるほど家賃も高めです。家賃の節約を考えるなら、駅から少し距離のある場所で物件を探してみましょう。自転車やバイクを利用すれば時間短縮ができます。天気や体調によってはバスも利用できるよう、物件の近くにバス停があるか、バスの本数は多いかといったことも確認しておくと安心です。
また、中心部ではなく都市近郊に住むという選択もおすすめです。JR東海道本線沿線を例にすると、単身者向けマンション(ワンルーム~1DK)の家賃相場は品川で 10万6,400円、その隣駅の川崎では 8万1,000円となっています(2020年11月27日時点)。たったひと駅しか違わないのに、東京都から神奈川県に移るだけで約 2.5万円もの節約になります。
出典:LIFULL HOME'S「JR東海道本線の家賃相場情報」
築年数が古くても設備が整った物件を探す
トレンドやニーズを反映したおしゃれな間取りや最新の住宅設備を備えた新築物件はとても魅力的ですが、家賃が高額になることは避けられません。家賃を節約するのなら中古物件がおすすめです。家賃相場は築年数が古くなるほど下がるのが一般的です。新築と比較すると、築10年で10%ほど、築20年では20%ほど家賃が安くなります。外観は古くても室内にはリフォームやリノベーションが施され、快適に過ごせる物件も少なくありません。
ただし、建物の強度には注意しましょう。1981年5月以前の建物は旧耐震基準で建てられているため、耐震性に不安があります。1981年6月以降に建てられた建物、あるいは耐震補強工事がなされている建物を選ぶようにしてください。
ルームシェアで家賃を抑える
1人暮らしの場合はシェアハウスに入居するか、ルームシェアで家賃を節約するという方法もあります。シェアハウスは共同生活を想定して建てられた物件であるのに対し、ルームシェアはマンションやアパートなどの一室を複数人で借りて住むことをいいます。家賃だけでなく、光熱費や通信費などを折半するケースもあり、生活費の節約効果は高いでしょう。
ただし、他人同士が一つ屋根の下に暮らすことで、ちょっとしたことがトラブルに発展することもめずらしくありません。日常生活で守るべきルールは初めにきちんと話し合って決めておくことが大切です。また、マンションやアパートには『ルームシェア不可』の物件もあるため、事前に不動産会社や大家さんに確認してください。
持ち家で住居費を節約するには?
戸建てやマンションなどの持ち家では、賃貸とは違った費用がかかります。持ち家にかかる住居費のうち、住宅ローン・固定資産税・火災保険料の節約ポイントを紹介します。
住宅ローンを繰り上げ返済する
住宅ローンの繰り上げ返済には、総返済額を軽減する効果があります。家計に余裕があるときには少しずつでも繰り上げ返済して、ローンの負担を減らすようにしましょう。
繰り上げ返済の方法には「返済期間短縮型」と「返済額軽減型」とがあり、それぞれ次のような特徴があります。
金融機関によっては、繰り上げ返済のたびに手数料がかかることことに注意が必要です。また、窓口やATM、インターネットバンキングなど、手続きの方法によっても手数料が異なります。住宅ローンを申し込む際には金利のほか、繰り上げ返済の手数料もチェックして金融機関を選ぶとよいでしょう。
固定資産税の減税措置を活用する
土地や建物を取得した翌年度から、固定資産税の納税義務が発生します。市街化区域内の土地・建物には都市計画税も課税されます。それぞれの計算式は次のとおりです。
固定資産税=固定資産税評価額×1.4%
都市計画税=固定資産税評価額×0.3%
固定資産税の標準税率は1.4%ですが、地方税のため、自治体によっては税率が異なることがあります。都市計画税も地方税で、自治体ごとに税率が異なりますが、最大税率は0.3%と定められています。
これらの税金を節約するには、「住宅用地の課税標準の特例」を利用しましょう。面積に応じて、次のように減税されます。
建物が新築であれば、「新築住宅の税額軽減の特例」が利用できるか確認してみましょう。建物の種類・構造に応じて、以下のとおり減税されます。
上記以外にも、バリアフリー化や耐震補強などのリフォームに利用できる固定資産税の軽減措置があります。特例を利用する際はいずれも申告・申請が必要です。要件や提出書類などは事前に確認しておきましょう。
火災保険料は長期割で節約する
火災保険料の節約におすすめなのが、長期契約と免責負担金の設定です。一般的な火災保険では最長10年までの長期契約が可能です。契約期間が長くなるほど割引率が高くなるため、検討してみてはいかがでしょうか。免責負担金とは、保険請求時に自分で負担する金額のことです。ある程度の貯金がある場合には、免責金額を高めに設定すると保険料を節約できます。
また、火災保険の見直しも住居費節約に効果的です。たとえば、高台にある住まいでは浸水の恐れはほとんどありません。この場合には水災補償をカットすることで保険料の節約につながります。ただし、いざというときに補償が受けられないと困るため、見直しは慎重に行いましょう。
まとめ
住まいに関連する住居費は、年収の30%程度が適正とされています。家計のなかでも大きな割合を占める住居費を節約するには、まず家賃や住宅ローンを安く抑える工夫をしてみましょう。万一の備えに欠かせない火災保険は、補償プランの見直しや長期割引制度の利用で節約できます。また、固定資産税を一定期間軽減できる特例措置が利用できないかも確認してみましょう。