確定申告は、個人事業主やフリーランスだけでなく、給与所得者である会社員でも必要なケースがあります。マイナンバー制度の導入により、確定申告の手続きが簡略化され、行政機関による個人の所得や税情報の把握の正確性が向上したため、確定申告と納税は確実に行わなければなりません。確定申告をうっかり忘れてしまった場合や、期限を過ぎてから申告した場合は、加算税や延滞税などのペナルティが科されることもあるため注意が必要です。
今回は、確定申告の方法や確定申告を忘れた場合の手続き、ペナルティなどについて解説します。
確定申告はいつまで? 対象者や提出方法も確認しよう
働き方の多様化により、副業を持つ人やフリーランスで働く人も増えています。何らかの収入を得た場合、一定の要件を満たす人は確定申告をして所得税を納めなければなりません。また、給与所得者でも、還付申告により納めすぎた税金を取り戻せるケースがあります。自分が確定申告の対象者かどうか、申告の期限、提出方法などを確認しておきましょう。
確定申告の期限
所得税の確定申告の期間は、毎年2月中旬から3月中旬頃までです。2020年の収入に対する申告は、2021年2月16日(火)から2021年3月15日(月)までの1ヶ月の間に申告する必要があります。そのうち、土曜、日曜、祝日など税務署の閉庁日には税務署窓口での受付は行っていません。
ただし、還付申告に対しては2021年2月15日より前でも手続きが行えます。還付申告とは、医療費控除や借入金取得等特別控除などの適用による優遇措置で、納めすぎた税金が戻ってくる制度です。
確定申告が必要な人
確定申告は、個人事業主や投資などで利益を得た人のほか、会社員でも必要なケースがあります。また、会社の年末調整では行えない控除を受ける場合や、ふるさと納税でワンストップ特例を適用していない場合も確定申告が必要です。確定申告を行えば、納め過ぎた税金が戻ってきます。そのため、年末調整をした場合でも確定申告が必要かどうかを確認し、必要な場合は期限内に忘れずに申告しましょう。
給与所得者で確定申告が必要な人は、以下の関連記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:【初心者必見】2019年版「確定申告」の対象者、必要書類、申告方法まとめ
確定申告の方法
確定申告書の提出方法は、インターネットを利用したWEB申告、税務署への郵送、税務署の窓口への持参の三つです。
1.インターネットによるWEB申告
国税庁が運営するe-Tax(国税電子申告・納税システム)のWEBページで申告書を作成し、そのまま送信する方法です。e-Taxなら、税務署に出向かずに一連の手続きをWEB上で完結できるため便利です。
2.税務署へ郵送
記入が終わった確定申告書を郵便または民間の運送業者の信書便で、所轄の税務署に期限までに送付する方法です。確定申告の記入用紙は、国税庁ホームページからダウンロードして印刷するほかに、e-Taxを利用して作成したものを印刷する方法、または税務署や関係機関で入手する方法があります。
3.税務署に持参
住所地の所轄税務署の受付窓口に直接提出する方法です。税務署の閉庁時は、時間外収受箱に投函することも可能です。
申告期限内に確定申告するのを忘れたら?
申告期限内に確定申告書を提出できなかった場合は、どうしたらよいのでしょうか。以下に、期限後の申告についての対処法を解説します。
忘れたことに気づいたらすぐに提出する
原則として所得税法では前年の所得に対して、2月16日から3月15日の期間内に確定申告を行い、所得税を納めることと定められています。確定申告を忘れたことに気づいたら、できるだけ速やかに申告しましょう。この場合は、期限後申告として取り扱われます。
重要なのは自主的に期限後申告のアクションを起こすことです。確定申告を行わず税務署の調査により無申告が発覚した場合は、無申告加算税や延滞税のペナルティも重くなります。期限後申告になってしまった場合は、申告書を提出した日が納期限となるため、当日に税金を納めなければなりません。
確定申告後に申告漏れがみつかった場合
確定申告をしても、計算間違いや申告漏れがみつかる可能性はあります。もし内容の誤りに気づいたときは、速やかに訂正しましょう。納めるべき税金を少なく申告していたときは「修正申告」、税金を多く申告していたときは「更正の請求」の手続きを行います。
自分で誤りに気づかず税務署から通知されたときは、過少申告加算税や重加算税のペナルティを受ける場合があります。修正申告により税金を新たに納める必要があるときは、期限から遅れた分の延滞税と合計して納付してください。
還付申告の際に、還付されるべき金額を少なく申告してしまったときも、「更正の請求」を行えば納めすぎた税金が戻ってきます。手続き可能期間は、確定申告の期限から5年以内です。更正の請求手続きには、証明する書類の添付が必要になります。
確定申告を忘れた場合のペナルティとは?
先述したとおり、確定申告を忘れた場合は、ペナルティが科される可能性があります。自分が確定申告の対象者であることに気づいていない場合もあるため、特に注意が必要です。
申告を忘れると無申告加算税がかかる
確定申告を期限後に提出した場合はすべて「期限後申告」として取り扱われ、申告内容や理由次第では重いペナルティが科されることがあります。期限後申告については、本来納めるべき税金のほかに無申告加算税を納めなければなりません。課税割合は、納付すべき税額が50万円までは15%、50万円を超える金額に対しては20%が上乗せされます。
ただし、申告が遅れた正当な理由がある場合に、申告期限から1ヶ月以内に自主的に申告した場合は不適用となり、ペナルティは科されません。また、税務調査で発覚する前に自主的に申告した場合は、ペナルティの軽減措置として課税割合が5%になります。
税金の納付が遅れると延滞税がかかる
所得税の納税は、税務署の窓口納付のほかに、銀行の口座振替、インターネットを利用した納付、クレジットカードでの納付、コンビニや金融機関での現金納付などさまざまな方法があります。確定申告を期限内に正しく行っても、期日までに納税しないと延滞税がかかるため気をつけましょう。
延滞税は、納期限の翌日から完納した日までの日数に応じて計算されます。納期限の翌日から2ヶ月を超えると、延滞税の割合が倍になるため注意が必要です。確定申告による納税期限は、期限内に提出した場合は法定納期限、期限後申告や修正申告の場合は申告書を提出した日、更正を受けて納付すべき税額がある場合は更正通知書を発した日から1ヶ月後です。この期限を守らないと、無申告加算税などを除外した本税に対して延滞税がかかってしまいます。
仮装や隠蔽があった場合は重加算税がかかる
納税を逃れるために意図的に所得の仮装や隠蔽を行った場合は、重加算税の重いペナルティが科されます。確定申告をうっかり忘れた場合と異なり、悪質な場合は脱税脱法行為とみなされる危険性があります。刑事罰の罰金ではないものの、罰則的な制裁の意味を持つ重いペナルティであることを弁えておきましょう。
仮装や隠蔽などの悪質な所得隠しがあった場合は、従来の過少申告加算税、無申告加算税などの課税割合よりもさらに多い割合の重加算税が適用されます。それぞれ該当する課税要件に応じて、過少申告加算税に代えて35%、無申告加算税に代えて40%が追加されます。
期限後申告では青色申告の65万円控除が受けられない
確定申告を青色申告で行う個人事業主は、期限内に申告することで最大65万円の特別控除が受けられます。しかし、法定期限内に申告が行えず期限後申告となる場合は、特別控除が10万円に減額されてしまいます。収入から差し引く控除額が少なければ、その分課税所得が増え納税額が多くなってしまうため、期限内に申告と納税ができるよう準備を進めなければなりません。
さらに、無申告または期限後申告が2期連続した場合は、2期目以降の青色申告の承認が取り消されてしまいます。これでは、青色申告ならではの節税対策のメリットが享受できなくなってしまうため十分な留意が必要です。
まとめ
会社員でも確定申告が必要なケースがあります。また、還付申告をすることで納めすぎた税金を取り戻すことが可能です。還付申告は5年前までさかのぼって申告できますが、確定申告は法定納期限内に申告と税金の納付を済ませる必要があります。
確定申告を忘れてしまった場合は、速やかに申告書を提出することが大切です。期限が過ぎた後に申告をするとペナルティが科され、本来の税額とは別に加算税がかかることがあるため、確定申告は忘れずに期限内に提出することを心がけましょう。
なお、令和元年分(2019年分)の確定申告・納付は新型コロナウイルス感染拡大の影響もあって、期限を延長するなどの措置が取られました。今後の状況によっては令和2年分(2020年分)以降の確定申告・納付期限も変更が生じるかもしれません。国税庁、税務署などの情報は随時確認をすることをおすすめいたします。