住民票の写しや印鑑証明をはじめとする各種証明書は、これまで市区町村の役所の窓口などへ行かなければ取得できませんでした。しかし、2010年よりスタートしたコンビニ交付サービスにより、コンビニ店舗でも取得できるようになりました。当初、2市1区の3団体から始まったコンビニ交付は、徐々に参加団体が増加し、取得できる書類の種類も増えました。マイナンバーカードを利用したコンビニ交付で、印鑑証明のほかにもコンビニで取得できる証明書について紹介します。
あらためて「印鑑証明」とは?
官公庁の諸手続きをはじめ、各種契約や事務手続き、荷物の受け渡しに至るまで、ハンコは日常的に使われています。一人でいくつかのハンコを持ち、用途に応じて三文判やネーム印、銀行印などを使い分けている人も多いでしょう。
ちなみに、「ハンコ」とは文字が刻まれた本体を指し、「印鑑」は登録や届出された印影のことです。以下に、重要な手続きや契約の際に使われるキーワード「実印」「印鑑登録」「印鑑証明(印鑑登録証明書)」について解説します。
実印
実印とは、市区町村の役所に登録し、公的に認められた印鑑のことです。基本的に実印として登録できる印鑑は一人一つになります。いわゆる三文判なども、実印として登録できないわけではありません。ただし、大量生産されているものは偽造のリスクもあるため、避けた方が良いでしょう。また、印影が薄かったり、欠けたりしているものは実印として登録できない場合があります。
さらに、市区町村によっても規定は異なりますが、サイズが大き過ぎるものや小さ過ぎるもの、輪郭の無いもの、氏名以外の記載がある印鑑も登録できません。実印を登録する際は、あらかじめ登録する市区町村の規定を確認したうえで、耐久性のある素材の、複製されにくい書体の印鑑で登録すると良いでしょう。
印鑑登録
印鑑登録とは、印鑑を役所に登録しておくことです。個人が印鑑登録の手続きをする際は、住民登録をしている市区町村の役所で行います。印鑑登録することで、自分だけの印鑑であることが証明できる「印鑑登録証」が発行されます。印鑑登録された印鑑が「実印」になります。
印鑑証明(印鑑登録証明書)
「印鑑証明(印鑑登録証明書)」とは、「印鑑登録」された印鑑が本物で、本人のものに相違ないことを証明する書類です。重要な契約や高額取引が実印による押印と印鑑証明とを揃えることで、「確かに本人が実印を使って押した書類」であると認定されます。「印鑑登録証」とは違うので、混同しないように注意しましょう。
印鑑証明が必要な主な手続きは次の通りです。
・不動産取引
・自動車の購入、売却、廃車
・銀行融資(ローン契約など)
・遺産相続
・保険金の受け取り
・新会社の登記
印鑑証明は、住民登録している市区町村の窓口や、地方公共団体の委託を請けた一部の郵便局などで取得できます。申請は本人が行えない場合は代理人による申請も可能です。代理人の場合、市区町村によっては委任状が必要になる場合もあるので、事前に確認しておくことをおすすめします。
印鑑証明の取得がコンビニで可能に
コンビニ交付とは、マイナンバー(個人番号)カードまたは住民基本台帳カードを利用して、市区町村が発行する住民票の写しや印鑑証明(印鑑登録証明書)などが、全国のコンビニエンスストア等のマルチコピー機(キオスク端末)から取得できるサービスのことです。
これにより、市区町村の役所の開庁時間に関わらず、土日祝日含む6:30~23:00(※)まで「いつでも」、住民票がある市区町村に限らず最寄りのコンビニ店舗等の「どこでも」、必要な証明書等を「簡単に」取得できるようになりました。(※利用時間帯は自治体によって異なる可能性もあるため事前にご確認ください)
印鑑証明のコンビニ交付の手順
1. マルチコピー機(キオスク端末)の画面上にある「行政サービス」ボタンを押し、利用上の同意事項に「同意」する。
2. メニュー画面から「証明書交付サービス」を選択し、マイナンバーカードを読み取らせる。
3. 証明書交付の市区町村を選択し、暗証番号を入力。
4. 「印鑑登録証明書」を選択して発行部数を入力。
5. 内容を確認して、料金を支払う。
支払い後、コピー機から印鑑登録証明書が出力されます。なお、領収書も発行されます。
コンビニ交付には、「いつでも」「どこでも」「簡単に」のほかにもメリットがあります。市区町村にもよりますが、窓口申請では通常300円ほどかかる交付手数料が、コンビニ交付であれば50円から100円程度安くなります。さらに、窓口交付の際には必要な申請書も、コンビニ交付の場合は不要です。
利用できるコンビニ拡大中
総務省によると、2020年11月時点でサービスを提供しているのは763の市区町村です。また、利用できるコンビニ、ドラッグストア、スーパーなどの店舗数は全国約55,000店舗(2019年3月末現在)となっています。
コンビニ交付サービスは順次拡大中です。現状では取り扱いがないコンビニ店舗も、近い将来に利用できるようになる可能性があります。コンビニ交付サービスを提供している市区町村、利用できる店舗や場所は、それぞれ総務省のホームページから検索できます。
事前準備はマイナンバーカードと4桁の暗証番号
コンビニ交付を利用する場合に、事前に準備が必要なものは、交付の手数料の他には、マイナンバー(個人番号)カードまたは住民基本台帳カード(住基カード)のみです。ただし、注意しておきたいのが「暗証番号」についてです。
マイナンバー(個人番号)カードは、交付される際に暗証番号を設定します。暗証番号は、「署名用電子証明書」「利用者証明用電子証明書」「住民基本台帳」「券面事項入力補助用」のそれぞれに設定が必要ですが、「署名用電子証明書」以外は4桁の同じ番号にすることができます。コンビニ交付で必要なのは「利用者証明用電子証明書」の暗証番号です。交付の際にそれぞれ違う番号を設定し、混同してしまう人が少なくないようです。
暗証番号を3回間違えるとロックがかかるので注意
コンビニ交付の際に、暗証番号を3回間違えるとロックがかかってしまいます。ロックがかかると、発行を受けた市区町村窓口に行き、ロック解除とともに暗証番号の再設定の手続きをしなければなりません。手続きは、ロックがかかったカードと、暗証番号変更・再設定申請書、本人確認書を用意して、本人が行う必要があります。便利なサービスを存分に享受するために、暗証番号の管理には注意しましょう。
なお、「印鑑登録証」を持っていても、マイナンバーカード(または住基カード)がない場合は、印鑑証明をコンビニで取得することはできません。印鑑登録証、身分証明書、手数料を準備して、市区町村の役所の窓口で「印鑑登録証明書交付請求書」に必要事項を記入して手続きをすることになります。
ちなみに、住基カードはマイナンバーカードの発行開始にともない平成27年12月で発行終了しています。今後、住基カードの機能は順次マイナンバーカードに引き継がれます。
印鑑証明の他に取得できる証明書
コンビニ交付では、印鑑証明のほかにもさまざまな証明書が取得できます。
まずは、住んでいる市区町村の証明書である「住民票の写し」「住民票記載事項証明書」「各種税証明書」「戸籍証明書(全部事項証明書、個人事項証明書)」「戸籍の附票の写し」です。
さらに、住んでいる市区町村と本籍地の市区町村が異なる人が「戸籍証明書(全部事項証明書、個人事項証明書)」「戸籍の附票の写し」を取得することも可能です。
なお、市区町村によって取得できる証明書の種類が異なります。事前に先述した総務省のホームページで確認しておくことをおすすめします。
まとめ
高額な取引や重要な契約の際に必要な印鑑証明は、マイナンバーカードを利用したコンビニ交付で取得できます。マイナンバーカードを利用したコンビニ交付では、印鑑証明だけでなくさまざまな証明書がコンビニで取得できます。身近なコンビニ交付を積極的に活用してみてはいかがでしょうか。
(最終更新日:2021.03.29)