タワーマンションの「セキュリティ」で住民が意識すべきポイント

10月26日、東京都目黒区のタワーマンションで強盗事件が起きました。報道によると、オートロック完備で受付フロントがあり、エントランスやエレベーター、通路などにも監視カメラが設置してあるそうで、セキュリティはかなりしっかりしていたものと思われます。

マンション住民は今後、何に気を付ければよいのか、専門家にセキュリティ事情と防犯対策についてきいてみました。

近年のマンションセキュリティはどうなっている?

マンションで採用されている代表的なセキュリティシステムとしては、「防犯カメラ」「オートロック」「モニター付きインターホン」などがあります。

どのセキュリティもどんどん改善されており、例えば、防犯カメラによって、密室になってしまうエレベーター内部の様子を管理人室やエントランス階にモニター表示されるのは安心感につながります。

エレベーター内部の様子をホールに表示するモニター

マンショントレンド評論家の日下部理絵氏は、セキュリティの進化について次のように話します。

「昔のオートロックは、ロックを解除した住人の後に付いて行って中に入ってしまう『共連れ』ができました。今はそれができなくなっています。タワーマンションでは多重オートロックシステムを採用しているところもあり、例えば、エントランスで非接触カードをかざして解除、エレベーターホールに入るために2つ目を解除、さらにエレベーターに乗ってからもカードをかざして3つ目を解除します。これだとトリプルオートロックですが、さらに厳しいシステムだと、共用施設(ジム・会議室など)がある低層階に高層階への乗り換えフロアがあって、そこでもロックを解除しないと各住戸に行けないようになっています。エレベーターも、来客者はエントランスのインターホンを押した住戸のフロアにしか行くことができないタイプがあります」(日下部さん)

コンシェルジュや管理人など「有人管理システム」は?

コンシェルジュがいても油断は禁物

一般的なマンションでも管理人が常駐しているところは少なくありません。タワーマンションではさらに、エントランスにコンシェルジュが常駐しているところもあります。管理人やコンシェルジュが“見ている”だけでも、住人には安心感がありますが、期待しすぎは禁物です。

「コンシェルジュはクリーニングや宅配便の取り次ぎなど、あくまで住人サービスが業務です。管理人が館内を巡回するのは、防犯・防災よりも、電球が切れていないかなどの設備点検が目的です。また、防犯カメラの映像を監視するのも管理人の業務ではありません。警備員がいるマンションはまだまだ少なく、何か問題が発生したときに駆けつける遠隔警備システムが一般的です。それから、マンションの規模が大型になればなるほど“ホテルライク”になってしまう傾向があります。管理人やコンシェルジュは住んでいる人の顔と名前を覚えにくくなります。日本のマンションは1棟あたり平均50世帯。1部屋に2~3人住んでいるとすると、平均レベルの規模ならば顔と名前が一致するのですが…」(日下部さん)

センター方式の実験的な取り組みも

最近では、宅配業者が1階でまとめて荷物を受け取るような実験的な仕組みのマンションもあるそうです。

宅配業者の受け取り専門の出張所がマンション1階にあるような形です。その場合、例えば、宅配業者A社の人が宅配業者B社の荷物や郵便局からの郵送物までもすべて受け取り、住人に渡すことになります。

また防災センターのあるタワーマンションだと、宅配業者はエントランスではなく、防災センターのある裏口から入るようになっている場合もあります。

新たな生活様式が影響している可能性も?

今回の目黒区の強盗事件、もしかするとコロナ禍の影響もあるかもしれません。

「インターホンのモニターで、訪問客がマスクをしているのを見ても、誰も不思議には思わなくなりました。宅配業者の人なら帽子にマスクでも不自然ではありません。さらに、手袋をしていれば指紋も採取されません。住人が不自然に思わないので、オートロックを開けてしまえば、住戸まで来てしまいます。なお、マンションへの宅配はコロナ禍の中で、あらかじめ指定した場所(玄関前、置き配バッグ、宅配ボックスなど)に荷物を置いておく『置き配』が主流になってきています。廊下に置いてある荷物が盗まれる『置き配盗難』もあるようですが、その場合、補償が問題になりますね」(日下部さん)

セキュリティに頼り切りではなく防犯意識向上を

マンションでは12~13年に1度、大規模修繕工事を行いますが、防水や塗装などが中心で、セキュリティシステムはあまりテーマにならないそうです。

国土交通省のマンション総合調査(平成30年度)によれば、防犯対策のアンケートで1位は「防犯カメラを新たに追加で設置」ですが、2位は「とくに何もしていない」になっています。

「築年数が古いマンションにセキュリティ強化でおすすめなのは、玄関ドアのカギを複製困難なディンブルキーに替えることです。管理組合としてお金がかからない防犯対策は、最寄りの交番の連絡先を掲示したり、防犯マニュアルを作ること。警察グッズを販売する専門店で購入した『警察官立寄所』のステッカーを貼るのもいいでしょう。なお、警察ではステッカー掲示希望の申し入れに対して、警察との協議をお願いしています。そして、セキュリティを変えるよりもまず、住んでいる人がお互いにあいさつをするなど、コミュニケーションをとるよう意識を変えることが大切です」(日下部さん)

一般的に、タワーマンションはセキュリティが充実しているため、一人暮らしの女性でも安心して暮らすことができます。しかし、セキュリティシステムに頼り切りになるのは危険です。防犯意識は忘れずに、自分でも防犯対策を心がけましょう。


<取材協力>
オフィス・日下部

 

 

(最終更新日:2020.11.11)
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