日本ではまだあまり知られていないクッションウォール。クッションウォールとは、壁面にクッション材を張り付け、それをファブリック(布織物)で覆う伝統的な施工方法です。高級な壁面装飾としてヨーロッパで親しまれ、宮殿や高級ホテルなどで使用されています。ここでは、クッションウォールの効果と設置する方法について紹介します。
クッションウォールの効果その1
「高級感を演出」
白い壁はあらゆるインテリアと相性がよいため、多くの物件で採用されています。しかし、どの部屋も同じような印象になってしまいがち。
白一面でシンプルな壁も、一部にクッションウォールを取り入れると、空間にソフトな印象や優雅さがプラスされます。ファブリックと壁との間にクッション材があるので一般的なクロスよりも厚みがあり、より立体的な仕上がりに。クッション材が生み出す柔らかな起伏によってできた陰影は、贅沢な空間を演出します。
レザーを使えばホテルのベッドルームを思わせる高級感、アンティークな織物を採用すればヨーロッパの宮殿を彷彿とさせる豪華さをプラスできます。ベッドルームや客間に取り入れれば、クッションウォールの持つ柔らかな魅力が、そこにいる人たちをリラックスさせてくれることでしょう。ファブリックそのものの魅力をより引き立て、上質な空間へとグレードアップさせてくれる、それがクッションウォールの大きな強みです。
クッションウォールの効果その2
「断熱、保温、吸音効果がある」
クッションウォールにはデザインの良さだけではなく、実用的なメリットがあります。壁とファブリックとの間にクッション材を挟むことで、断熱、保温、吸音の効果が期待できるのです。
ダウンフェザーと空気の層でできているダウンジャケットはとても暖かいですよね。クッションウォールも同じようにクッション材と空気の層によって熱を逃さず、保温効果が得られます。さらに、クッション材には音の反響を軽減させる効果も。たとえば、大きな音が響きわたるオーディオルームの壁材に採用することで、騒音対策にもなります。残響時間が減り音環境が整うので、ホームシアターもゆったりと楽しむことができるでしょう。
クッションウォールの効果その3
「小さい子どもの安全対策に」
小さな子どもは家のなかでも転ぶことが多いもの。子どもが壁に頭をぶつけてしまうことなども日常茶飯事で、心配になってしまう場面もあるかもしれません。
そんなとき、クッションウォールを取り付けておけば、柔らかいクッション材が衝撃から身を守ってくれるので安心です。
壁全面ではなく子どもがぶつかる高さまでをクッションウォールにしても、お部屋のアクセントになり印象も変わります。特に、壁の角や出っ張っている部分はぶつかると痛いので、安全対策としてクッションウォールを取り入れるのもよいでしょう。
高級なクッションウォール施工「どんす張り」とは
クッションウォールと一言に言っても、さまざまな施工方法があります。なかでも本格的な方法が「どんす張り」という工法。どんす(緞子)と呼ばれる高級な装飾用織物を布のまま壁に取り付けます。
織物のテクスチャーを生かすことで、高級感のある空間ができあがります。どんす張りは伝統的な工法で、ヴェルサイユ宮殿や日本の国会議事堂などにも施されています。
高度な技術が必要などんす張りですが、現在では専用のジョイナーを使い簡単に施工のできる「近代どんす張り工法」が主流になっています。なかでも代表的なのが硬質塩ビフレーム工法。別の織物への張り替えも容易なので、月日が経ち織物が劣化しても簡単に別のものに張り替えることができます。
また、子ども部屋の安全対策として使用していたクッションウォールを、子どもが巣立ったあとに好きな織物に変えることも可能です。夫婦の趣味の部屋として空間を生まれ変わらせることができますよ。
パネルにクッションウォール
どんす張りを施工するとなると、どうしても工事の期間が必要になり、その間該当する部屋が使用できなくなってしまいます。壁へのダメージを気にすることなくクッションウォールを楽しみたいのであれば、木製の板にクッションウォールを貼り、壁に立てかける方法もあります。
180cm×180cmの大きさの木製合板にクッションウォールを施し、ベッドと壁の間に設置すれば、簡単にお部屋のイメージチェンジが可能です。クッションウォール自体が立体感のある素材なので、壁に立てかけても違和感がありません。
裏表で違うカラーにすると、裏返すだけで雰囲気ががらりと変わります。夏は涼しげなカラー、冬は温かみのあるカラーにして、季節によってパネルを変えるのもおすすめです。
手軽なクッションウォール「クッションシート」
クッションウォールを簡単にDIYする方法もあります。クッションシート(クッションファブリック)を使うタイプです。ポリエチレンフォーム製の壁材なので、カットも簡単。ハサミやカッターで好きな大きさに切って、貼り付けることができます。
「子どもの落書きを隠したい」「玄関の壁にアクセントが欲しい」など小さなスペースに貼るのにもぴったり。コンセントカバーを避けて、壁一面にクッションシートを貼り、古くなった壁をリノベーションすることもできます。
クッションシート自体に粘着剤が付いているものを選べば、接着剤も必要ありません。接着剤の匂いもなく、乾くまで放置しなくてもよいので、作業時間も少なく済みます。
貼ってはがせるタイプのクッションシートなら、工事も必要ないので賃貸住宅でもクッションウォールが楽しめそうです。デザインも豊富で、人気を集めているのがレンガや木目調のクッションシート。いくつかのカラーや素材のものをミックスすれば、自分たちで壁全体をデザインすることもできますよ。
まとめ
クッションウォールには、華やかさ高級感だけではなく、断熱、保温、吸音効果なども期待できます。また、柔らかいクッションが子どもの安全対策にも役立ちます。
「どんす張り」のような本格的な施工方法の場合、それなりに費用がかかりますが、クッションシートなどを使えば手軽にDIYが可能です。模様替えやリフォームを検討している人は、クッションウォールも1つの方法として検討してみてはいかがでしょうか。
(最終更新日:2020.11.19)