ふるさと納税とは、自分で選んだ自治体に寄付することで所得税と住民税の控除が受けられる制度です。特例制度を利用すれば全額を住民税から控除することもできます。住民税はどれくらい安くなるのかシミュレーションしてみましょう。
ふるさと納税とは?
ふるさと納税とは、自分で選んだ自治体に寄付(ふるさと納税)することで、寄付した金額から2,000円を差し引いた金額が、所得税と住民税から控除される制度です。
ふるさと納税という名称ですが、寄附金として扱われ、自分の出身地や現住所に限らず、どの自治体でも対象になります。寄付をした自治体から、寄付のお礼として特産品などを受け取ることができることからも注目を集めました。
ふるさと納税の控除を受けるには?
ふるさと納税の控除を受けるには、原則として、寄付をした年の翌年3月15日までに確定申告をする必要があります。確定申告をする際には、寄付をした自治体から送られてくる「寄附金受領証」が必要になります。送られてきた書類はなくさないようにきちんと管理しておきましょう。
また、平成27年4月から「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が始まっています。この特例を利用すれば、確定申告をしなくても、控除される金額の全額について翌年の住民税から控除を受けることができます(所得税からの控除はありません)。
ただし、この特例を利用するには、次の条件を満たす必要がありますので注意してください。
・確定申告をしなくてもいい給与所得者等である
・ふるさと納税をした自治体の数が5団体以内である
・ふるさと納税をした自治体に特例の申請をしている
ふるさと納税で住民税はどれくらい減るものなの?
実際に税金はどれくらい減るものなのでしょうか。冒頭で述べたように、ふるさと納税は、寄付した額のうち2,000円を超える部分について所得税と住民税から原則として全額が控除される制度です。
「原則として」というのは、収入や家族構成によって控除の上限額が異なっているからです。
総務省のふるさと納税ポータルサイトには、控除を最大限に受けられる寄附金の目安が、収入と家族構成別に一覧表でまとめられているので参考にしてください。
たとえば、年収450万円で共働き、高校生の子どもが1人いる人が、ふるさと納税をした場合、2,000円の自己負担額を差し引いた全額が控除される、ふるさと納税額の上限の目安は41,000円です。この場合の住民税の控除額は次のように計算できます。
(1)所得税からの控除=(ふるさと納税の寄附金額−2,000円)×所得税率
所得税率は所得によって異なりますが、ここでは10%とします(復興特別所得税については計算をわかりやすくするために考慮しません)。所得税からは、(41,000円−2,000円)×10%=3,900円が控除されます
(2)住民税からの控除(基本分)=(ふるさと納税の寄附金額−2,000円)×10%
41,000円から2,000円を差し引いた額の10%なので、3,900円控除されます
(3)住民税からの控除(特例分)=(ふるさと納税の寄付金額−2,000円)×(90%−所得税率)
所得税率は10%とします。41,000円から2,000円を差し引いた額の80%なので、この場合、住民税から31,200円が控除されます。 なお、特例分が住民税所得割額の2割を超えた場合の計算式は、「住民税からの控除(特例分)=住民税所得割額×20%となります。
(4)控除額の合計=(1)+(2)+(3)=39,000円
所得税から3,900円、住民税から35,100円がそれぞれ控除されるという計算結果になりました。ただし、ふるさと納税ワンストップ特例制度を利用する場合は、所得税からは控除されず、住民税から39,000円の全額が控除されることとなります。
なお、ここでの計算はあくまでも概算のものです。具体的な計算はお住まいの市区町村に問い合わせてください。
実際に住民税が安くなっているかを確認するには?
所得税が控除される場合は、還付金として手元に現金が返ってきます。
一方、住民税の場合は、現金が還付されるのではなく、翌年に支払う住民税から減額される形で控除されます。間違いなく控除されているか不安な場合は、住民税決定通知書で確認することができます。
会社員の場合、毎年6月頃に勤務先から住民税決定通知書(「給与所得者に係る市民税・県民税 特別徴収税額の決定・変更通知書(納税義務者用)」)が渡されます。この書類には、前年の収入に対してかかる住民税の金額と、6月から翌年5月までの毎月の支払い額が記載されています。
この住民税決定通知書の左下にある「摘要」欄を見てみましょう。ここに、「寄附金税額控除 市民税●●円 県民税●●円」という記載があれば、その合計額が住民税の控除額です。
もし、「摘要」欄に寄附金税額控除の記載がない場合には、右側の「税額」の欄のうち「市町村」の「税額控除額⑤」と「道府県」の「税額控除額⑤」の欄を見てみましょう。ただし、この2つの欄には、寄附金税額控除のほかに住宅ローン減税控除や調整控除などすべての税額控除の合計金額が書かれています。この場合、ふるさと納税の控除以外にどんな控除を受けたか把握していれば、その金額を差し引いて計算すればよいのですが、そうでない場合にはお住まいの市区町村に問い合わせてみることをおすすめします。
ふるさと納税したのに住民税が安くならない理由
ふるさと納税をしたのに住民税が安くならないという場合は、どんな理由が考えられるでしょうか。
まず、住宅ローン控除を受けている場合が考えられます。住宅ローン控除を受けていても、ふるさと納税を利用することはできますが、住宅ローン控除額が大きい場合には、ふるさと納税による寄附金税額控除を控除しきれない場合があります。
もともと納めるべき税額を超えた金額の控除は受けられないからです。ふるさと納税を利用する場合は、住宅ローン控除の額を確認しておきましょう。
また、住宅ローン控除を受けていない場合でも、もともと納めるべき税額以上の控除を受けることはできませんので、注意してください。
もちろん、確定申告をし忘れてしまった、ワンストップ特例制度を利用するための申請を忘れてしまったという場合には、控除を受けることができなくなってしまいます。忘れずに手続きをしておきましょう。
なお、行政の手続きミスなどで寄附金税額控除の適用漏れがあることも考えられます。実際に控除するのを忘れていた自治体もありますので、「行政だから大丈夫」と思わずに金額をチェックしてみてください。住民税決定通知書で控除額を確認して、疑問があればお住まいの市区町村に問い合わせることをおすすめします。
コロナ禍による売り上げ減少で、各地の特産品を扱う多くの事業者が苦境に立たされています。そうした中、ふるさと納税で事業者を支援しようという動きも広まっています。
自治体の中には、「新型コロナウイルス感染症対策」のための寄付(ふるさと納税)を受け付けているところもあります。また、緊急支援品として特別な返礼品を用意する自治体も出てきています。
この機会に、ふるさと納税を賢く活用してみてはいかがでしょうか。