物件の間取り図で時おり見かける「DEN」の表記。一体、どんなスペースのことを指すのでしょうか? DENはもともと英語で「鳥の巣」や「洞穴」を意味する言葉です。最近は注文設計住宅だけでなく、建売住宅やマンションの間取りにも採用されるようになってきました。サービスルームや納戸などと同様に、居室として認められていないスペース・DENは、どのような空間で、どのような活用法があるのか、注意点などについて紹介します。
サービスルーム、納戸との違いは
物件検索サイトなどで紹介される物件の間取り図に、「2LDK+S」のように書かれていることがあります。この「S」はサービスルームのことです。これが「N」であれば納戸を表しています。サービスルームや納戸、DENをまとめて「S」と表記することもあります。これらはいずれも広さに関わらず、「居室」ではありません。
住宅の居室には、建築基準法第28条に定められた定義があります。条項には、「採光のための開口部がその部屋の床面積の1/7以上の面積で設けられていること」「換気のための開口部がその部屋の床面積の1/20以上の面積で設けられていること」と記載されていて、これに合致しないスペースは「居室」とみなされないのです。
したがって、居室として使用するに十分な広さがあっても、窓がなかったり、あるいは窓があっても、採光や通風が前述の要件を満たしていなかったりする場合は、「居室」と表記することができません。しかし、居室要件を満たしていない場合でも、一つの部屋として使用することはできます。
実は、サービスルーム、納戸、DENに明確な定義はなく、違いもありません。欧米では、サービスルームをアイロンがけや裁縫などを行う家事スペースとして使用することが多いようです。納戸は古くから衣類や家具、日用品などを収納するスペースの名称でした。現在でも、和風建築に設けられた個室は、「納戸」と表すことがあるようです。
居室以外の空間には、フリールーム、ユーリティスペース、マルチルームなどという呼び方もあり、DENもまた多用途なフリースペースとして使用できます。DENは、住む人のライフスタイルに合わせて自由に使うことができるスペースなのです。
個室タイプか、オープンタイプか
新型コロナ感染症対策として、リモートワークが推奨されるようになって以降、自宅で仕事をする人が増えています。自宅で仕事をするスペースとして、DENの活用を検討している人も少なくないでしょう。
DENにはもともと「洞穴」という意味があることから、閉ざされた空間をイメージしがちですが、必ずしも閉ざされた個室である必要はありません。
ドアで閉じることのできる個室タイプのDENを仕事スペースにすると、生活スペースから切り離されるため、集中しやすくなります。壁を防音にすると、家の中の生活音や雑音がDEN内に入り込んでくることはなく、その逆もしかりです。リモート会議や仕事の電話もスムーズに行えるでしょう。また、DEN内では音楽やテレビ、映像などを大音量で楽しむのにも適しています。
一方、壁・ドアで区切られていないオープンタイプのDENは、小さい子どもがいる場合は、常に目の届くところで仕事や作業ができるので安心感もあります。ただし、照明の明るさが十分でなかったり、コンセントが設置されていなかったりするケースもあるため、注意が必要です。また、家族の生活音が気になり、気持ちの切り替えが難しい、集中しづらいなどのデメリットもあります。
DENの活用方法
DENの使い方は自由です。広さや形状によって、さまざまな用途に活用することができます。ここからはDENの活用例を紹介します。
書斎として
最も一般的なDENの活用方法のひとつが、書斎やワークスペースです。書斎といっても、壁を本棚で覆ったり、大きなデスクを構えたりする必要はありません。小さなテーブルと椅子、パソコン一台あれば書斎やワークスペースとして十分です。リモートワークの拡大で書斎やワークスペースの需要は急速に高まっていて、それに伴いDENのある間取りの家も人気が高まっています。
収納スペースとして
昔の納戸のように、収納スペースとして活用する方法もあります。ただし、あらかじめウォークインクローゼットになっているスペースとは違い、ハンガーラックや棚などは自分で設置しなければなりません。手間はかかるものの、衣類や荷物などの種類と量に合わせて、使いやすくレイアウトすることができます。
窓がなかったり、小さかったりする空間は、日が射しにくく衣類などが日焼けする心配が少ないというメリットがあります。一方で、風通しが悪く、湿気がこもりやすいため、カビが生えやすくなるなどのデメリットもあります。定期的な荷物の入れ替えや、除湿、換気を心がけると良いでしょう。
家事室として
欧米のサービスルームのように、アイロン台やミシンなどを置いて、家事室として活用する方法もあります。アイロンやミシンは意外と出し入れが面倒なものです。ボタン付けや繕い物などに使う裁縫道具も、すぐに使える場所に出しておけると便利です。専用の部屋があって常設されていると、家事の効率アップにつながるでしょう。
趣味の部屋として
趣味の部屋を持つことに憧れている人は少なくないでしょう。専用の部屋があれば、心置きなく趣味に没頭できます。カラオケやプラモデル製作、映像編集などは、そこまで広いスペースがなくても可能です。また、マット一枚置けるスペースがあればヨガやピラティスができますし、筋トレやストレッチなども行えます。そのほか、犬や猫、鳥、熱帯魚などペット専用の部屋として、楽器の練習部屋、絵や陶芸のアトリエにするなど、さまざまに活用することが可能です。
DENの注意点
DENにはさまざまな活用方法があるものの、いくつか注意すべき点があります。DENの注意点を紹介します。
電源・コンセントの問題
分譲の建売住宅やマンションの場合、DENには電源用のコンセントやエアコン用コンセント、テレビ配線などの設備が用意されていないことがあります。書斎や家事室として使うつもりで、パソコンやアイロンをセットしても、電源コンセントがなくては使用できません。また、エアコンが設置できないと、快適に過ごせなくなります。注文住宅の場合は、設計段階で最低限の設備を敷設することも可能でしょう。そうでない場合は、ほかの部屋から延長ケーブルを引き入れるなどして電源を確保したり、暑さ寒さの対策を講じたりする必要があります。
採光の問題
開口部からの採光が十分ではない場合もあります。書斎や家事室として使う場合は、文字や手元が見やすい明るさが確保できるよう、照明の配置に気を付けましょう。細かい作業用にはデスクライトなど手元を照らす明かりがあると良いでしょう。
まとめ
DENは建築基準法的には「居室」として認められていないスペースですが、どのように使うかは住む人の自由です。用途は書斎や家事室、趣味の部屋、トレーニングルーム、収納スペースなど、アイデア次第。設備や採光などの点で注意が必要ではありますが、工夫次第で問題は解消できます。
上手に活用することで、暮らしのクオリティアップに貢献するDEN。自分らしいDENライフを見つけてみませんか。
(最終更新日:2020.11.19)