「エアコンを1日中つけっぱなしにしたほうが電気代が安い」「ある程度の時間使わないのであれば、消したほうが電気代が安い」。この議論は昔から幾度となく繰り返されてきました。
最近では、「エアコンはこまめに消してもつけっぱなしにしても、電気代はそれほど変わらない」という認識を持っている人が増えているようです。エアコンメーカーのダイキンが実験を行い、「日中はつけっぱなしのほうがお得」「夜間はこまめに消したほうがいい」という結論を出したことも話題になりました。では、一般家庭ではどのような結果が出るのでしょうか。筆者宅でエアコンをこまめにオンオフした場合とつけっぱなしにした場合の電気使用量を比較してみました。
「こまめにオンオフ」と「つけっぱなし」はどちらがお得?
まずは、ダイキンが行った実験の結果を確認してみましょう。
同社は9:00から23:00まで「エアコンをつけっぱなし」にする部屋と、「30分ごとにオンオフ」という部屋を設けて消費電力の推移を比較しました。この実験は、エアコン以外には稼働している電化製品がない状態ですので、純粋なエアコンの消費電力量の推移が分かります。
実験日の最高気温は36.3度、エアコンは26度で自動風量という設定です。
その結果、トータルの消費電力量は、「つけっぱなし」のほうが少なくなりました。
ただし、18:00から23:00までに限って言えば、つけっぱなしよりもこまめに入り切りすると消費電力量が少なくなるという結果になりました。
ダイキンは、この差について、夜間は気温が低いことから起動時の消費電力量が小さくなったためと推察されるとしています。
さらに同社では30分ごとに機械的にオンオフを繰り返すだけでなく、外出時間に合わせてオンオフをするという実験も行っています。その結果、不在時間の長さによっては外出時はオフにしたほうが消費電力量が小さくなることが分かりました。
時間帯ごとに「つけっぱなしにしたほうが安くなる外出時間」も算出しています。その結果、「日中は35分までの外出ならつけっぱなしのほうが安い」「夜間は18分までの外出ならつけっぱなしのほうが安い」という結論に至ったようです。
一般家庭で実験してみた
ダイキンの実験は、ノイズとなるそのほかの家電の使用がなく、また人がいない部屋で行われたものでした。しかし、実際には人が在宅していればそのぶん室温が高くなりやすいと考えられます。
そこで、筆者宅でほぼ同じような気候の日に「在宅中はオン、外出時にオフ」と「1日中つけっぱなし」にした場合の電気使用量を比較する実験を敢行しました。さて、その結果はいかに―。
【実験条件】
・使用機種:富士通ゼネラルAS-J22B-W 冷房能力2.2kW
・設定温度:冷房25度
・風量:自動
・住居:RCビル2階(築40年)
・実験した部屋の広さ:13畳
・実験時に部屋にいた人数:3人
・外出時オンオフ実験時の外気温:最高気温30.0度、最低気温22.0度
・つけっぱなし実験時の外気温:最高気温30.7度 最低気温23.9度
・電気使用量の確認方法:東京電力 くらしTEPCO web
実験1:外出時はオフ、帰宅したらオンを徹底した場合
まずは在宅時は基本つけっぱなしで、外出時にオフにしてみました。外出時間は9:30~10:30の1時間、12:30~14:15の1時間45分です。その結果、グラフの通りオンにした際に大きく電力使用量が増加していることが分かります。
この使い方をした場合の18:30までの消費電力量は7.7kWhでした。電気代に換算すると203.896円(※)です。
※東京電力従量電灯B契約、120kWhをこえて300kWhの単価26.48円で計算
ダイキンの実験に則れば、外出時間が長いことから外出時はオフにしたほうが電気代はお得になるはずです。
実験2:1日中エアコンをつけっぱなしにした場合
1日中エアコンをつけっぱなしにした場合の電気使用量は、気温が高くなる時間帯に増加しているものの、不在時にオンオフにした場合と比較すると乱高下がありません。午後6時半までの電気使用量は6.4kWhでしたので、1kWhあたりの単価26.48円をかけると169.472円となります。
筆者宅では、日中はダイキンの想定した「オフにしたほうが電気代が安くなる」という35分よりも長い外出にもかかわらず、「つけっぱなしのほうが電気代が安くなる」という結果になりました。
日中は経済面でも快適さでもつけっぱなしがよいかも
筆者は基本的に「エアコンはつけっぱなし」派でした。エアコンをつけっぱなしにしていると、リビングに入った瞬間に体が冷気に包み込まれて、なんともいえない幸福な気持ちになります。
ところが、エアコンをオフにして出かけると、家に帰った瞬間にむわっと暑い空気がじめじめと体にはり付いて、疲れが倍増する気がするのです。
今回の実験では、つけっぱなしにしたほうが消費電力が抑えられたうえに帰宅時の快適さを得られることが再確認できたため、これからも日中はつけっぱなしにしておきたいと思います。
ただし、あくまで筆者宅での実験結果であり、エアコンの機種や部屋の広さ、外気温などで大きく異なりますので、すべての事例でこのような結果になるとは限りません。
あなたの家でも実験! エアコンの電気代検証
今回筆者がエアコンの電気使用量を確認するために使用したのは、東京電力公式サイトくらしTEPCO webの「エネくらべ」というページです。エネくらべでは、月別、日別だけでなく時間別の各家庭の電気使用量を30分間隔で確認できます。当日の電気使用量も把握できますので、「今日は節電できているかな」と確認するのも楽しいものです。
電気使用量から電気代を確認したい場合は、電気使用量に1kWh当たりの電気代の単価をかけましょう。例えば、1時間当たりの電気使用量が0.5kWhだった場合は、0.5×契約している単価で1時間の電気代が分かります。
電気代を節約するために、気を遣いすぎてあちこちの電気を消したりエアコンを切ったりするのはストレスがたまるかもしれませんが、ほぼリアルタイムで電気使用量を確認できるこのサイトを活用すれば、ゲーム感覚で電気代の節約に挑戦できるのではないでしょうか。
東京電力だけでなく各電力会社で同様のサービスを提供していますので、ぜひ参考にしてくださいね。
電気代にとらわれすぎず快適な生活を
筆者宅でのエアコンのオンオフ実験では、「日中は1時間以上の外出であってもエアコンをつけっぱなしにしたほうが電気代が安くなること」が分かりました。
しかしながら、ダイキンが行った実験では日中は35分を超える外出であればエアコンをオフにしたほうがいいという結果が出ています。ノイズが少なく同条件で実験を行っているダイキンの実験のほうが正確であることは間違いありません。
エアコンの電気代にとらわれることなく、快適に生活できるようにエアコンを活用してみてはいかがでしょうか。
【監修者】コヤマ タカヒロさん
大学在学中に男性ファッション誌でライターデビュー。その後、PCやデジタルガジェット、白物家電を専門分野として執筆活動を展開。寄稿先は多岐にわたる。家電コミュニティ「家電総合研究所」を主宰。調理家電のテストと撮影のための空間「コヤマキッチン」を用意。米・食味鑑定士の資格を所有。執筆以外に企業のコンサルティングやアドバイザーなども務める。