家具はUP↑電子レンジはDOWN↓ コロナで日本人の消費はどう変わった?

新型コロナウイルスの感染者数の推移を見てみると、4月に第一波が生じ、第二波が7月、8月に生じたように見えます。8月初旬に第二波のピークをつけ、それ以降は徐々に感染者数も減少していますが、これから気温が下がり始めると、冬にかけて第三波、第四波が警戒されるとも聞きます。さて、いまだに収束の兆しが見えないコロナ禍において、日本人の消費行動はどう変わったのでしょうか?

家庭の貯蓄は19年ぶりの高さに

内閣府の推計によると、2020年1~3月期の家計の貯蓄率は8.0%と約19年ぶりの高水準になりました。家計の収入から税金などを差し引いた所得のうち、消費に回らなかった部分を貯蓄として計算されるのが貯蓄率ですが、この貯蓄率が上昇した要因はいくつか考えられます。

新型コロナウイルスの影響で収入が減ったり、これからの雇用環境の悪化に備えるために、お金を使わずに貯蓄に回したという生活防衛という観点からの貯蓄率上昇もありますし、感染拡大防止を目的とした外出自粛や飲食店などの時短営業や休業によって、これまでお金を使ってきた機会が奪われたことによる貯蓄率上昇もあると考えられます。

この貯蓄率の対象期間は2020年1~3月期ですから、翌四半期にあたる4~6月期はさらに高まる可能性があります。

なぜなら、4月から5月は非常事態宣言によって全国的に消費活動が低迷し、かつ経済も大きく減速したからです。4~6月期の国内総生産(GDP)の速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比7.8%減と大幅に減少しており、それに伴い上場企業の4~6月期の決算も非常に悪い結果となりました。

人々の「消費」は4月を底に徐々に回復

国が発表する経済統計は調査月と発表月の間にタイムラグがあるため、景気をリアルタイムで確認することはできませんが、総務省が発表している「家計調査」を見れば、4~6月期の消費を確認することは可能です。家計調査では非常に細かい品目まで確認することができますので、消費動向を細かく見てみましょう。

まず食事に関する支出を見てみましょう。外食への支出は4月に大きく減少したものの、4月を底に徐々に回復傾向にあります。一方で、茹でるだけでよいパスタの需要は外食への支出とは真逆の動きとなっています。お湯を入れるだけで食べることができ、かつ保存食にもなるカップ麺はこの間、安定して買われていることが分かります。

(出所):総務省「家計調査」のデータを基に株式会社マネネが作成

食事への支出の変化を見るだけでも、4月が底で徐々に消費は回復傾向にあることは分かりますが、他の品目も見てみましょう。

次に見るのは電子レンジや一般家具への支出になります。非常事態宣言による外出自粛に伴い、普段は外食や仕事帰りにご飯を買って帰る層が自炊をするようになったものの、普段から自炊をしているわけではないことから、手軽に料理できる電子レンジの需要が高まったことがデータからは読み取れます。また、定額給付金が振り込まれたことで、比較的単価が高い家具への支出が5月、6月と増えていっていることも分かります。

(出所):総務省「家計調査」のデータを基に株式会社マネネが作成

また、リモートワークの普及に伴い、パソコンへの支出が増えたことや、室内での娯楽ということでゲーム機が3月は売れていたものの、6月にかけて需要が低くなっていったことも確認できます。

(出所):総務省「家計調査」のデータを基に株式会社マネネが作成

これらのデータを見てみると、やはり3月から5月にかけて外出自粛に伴い、外食などへの支出が減る一方で、巣ごもりすることによる室内娯楽や自炊に関わる品目への支出が増えたということが分かります。

ただし「消費」の回復にはムラがある

それでは、その他の支出も見てみましょう。外出自粛ということになると、支出が一気に減るのが移動に伴う交通費となります。軒並み大きくマイナスとなっていますが、興味深いのは、移動距離が長くなる交通手段ほど、支出の回復が遅れているということです。

(出所):総務省「家計調査」のデータを基に株式会社マネネが作成

上図のように6月までのデータを見ると、飛行機に乗る必要がある遠出を伴う旅行は依然として自粛の対象となっているようですが、7月下旬から国内観光の需要喚起を目的とした「Go To トラベルキャンペーン」が開始されているため、8月以降、航空運賃への支出が高まっていくかには注目が集まります。

旅行という観点からみても、宿泊料は6月に急回復している一方で、パック旅行費はほとんど回復が見られません。

(出所):総務省「家計調査」のデータを基に株式会社マネネが作成

日本政府観光局(JNTO) が発表しているデータを見ると、日本から海外へ出国した人の数は4月から7月まで4ヶ月連続で前年の同じ月と比べて9割以上減少しており、パック旅行費の中でも外国パック旅行費の回復が今後も見込みづらいなかで、どこまで「Go To トラベルキャンペーン」によって国内パック旅行費が全体の数字をけん引できるのかにも同様に注目が集まっています。

今後の注目はウィズコロナ時代の消費

外出を伴う娯楽への支出を見てみると、比較的「密」な状態になりやすい映画や演劇、そして大声を出すことも多い遊園地などの支出は回復が見られませんが、特に大声を出す機会もなく、そこまで密にもなりにくい文化施設は回復傾向が見られます。

(出所):総務省「家計調査」のデータを基に株式会社マネネが作成

新型コロナウイルスの感染拡大という脅威がありつつも、社会は徐々にウイルスと共存していく方向に進み始めている中で、ウィズコロナ時代の新しい行動様式がどのように定着していくかに注目が集まります。

今回は3月から6月にかけての日本人の消費行動の変化を見てきましたが、読者の皆さんもこの期間中は同じような消費行動を取っていたでしょうか?

過去の記事では「家計簿アプリを使って自身の消費傾向や支出の内訳を確認しましょう」ということを書いてきましたが、コロナ禍における自身の消費支出についても確認してみると、自身の消費傾向がより理解できるかもしれません。

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