夏の窓から差し込む強い日差しは、室内の気温を上げる原因のひとつです。室内の温度が上がりすぎると、冷房も効きづらく、家で過ごすのがつらくなってしまいます。近年、屋内でも熱中症にかかるケースが増え、夏に室内を快適な温度に保つことは健康上、とても重要なポイントになっています。この記事では、電気代を節約し、冷房を効率よく使用するための「窓からの日差し対策」について紹介します。
部屋の暑さ対策は「窓」がポイント
室内の暑さの主な原因は、窓から入ってくる太陽光です。日当たりのよい南向きの部屋、西日が差し込む部屋など、時間帯によって光の入ってくる部屋は変わります。窓が大きいと、それだけ光も多く入ります。光とともに熱も一緒に入ってくるため、窓面積の大きさに比例して、室内の温度が上がりやすいといえます。
アルミ建材メーカーとして住宅の窓を扱うYKK AP株式会社の調査によると、家の中で最も熱の出入りが激しい場所は、窓なのだそうです。
特に夏場は、およそ7割の熱が窓から入ってきます。逆にいえば、窓周辺の対策を行えば、熱の流入を大幅に防ぐことができるということです。
直射日光をさえぎる工夫をすれば、室内の温度上昇を防ぐことにつながります。結果、エアコンの設定温度を必要以上に下げる必要がなくなりますし、エアコンの使用時間を短縮することもでき、節電になります。
電気代を気にして冷房の使用を抑えている人も多いのではないでしょうか。熱中症予防のためにも、電気代を心配しすぎることなくエアコンを使用できるよう、日差し対策をしっかり行っていきましょう。
簡単にできる屋内の日差し対策
まずは、室内でできる窓からの日差し対策について検討しましょう。
仕事に行ったり、外出したりして、昼間は家にいないという人は、シャッターや雨戸を閉めて、完全に日光を遮断してしまうという方法もあります。朝、出かける前に少しの間冷房をかけ、室温を下げたあと、暗くしておくとよいでしょう。
家の外壁や屋根から多少の熱は流入するものの、それらは全体の2割程度といわれています。夕方、外気温が多少下がった段階で帰宅し、空気を入れ替えてから冷房をかければ、効率よく部屋の空気を冷やすことができます。
ただ、日中を部屋の中で過ごす場合は、この方法は使えません。明るさを保ちながら、日差しをなるべく取り入れない方法が必要になります。その場合は、窓周辺に使用するアイテムを活用しましょう。
遮光カーテン
最も手軽なアイテムは、カーテンです。ほとんどの家庭に取り付けられているカーテンを、夏用の遮光カーテンに変更してみましょう。
遮光カーテンにも、様々な種類があります。どのくらい光を遮断するのか、見た目では判断がつきませんが、多くの場合、遮光性能を示す等級が明示されています。この等級は、一般社団法人日本インテリアファブリックス協会(NIF)が独自に特許を取得した方法で認定されています。
等級の明示については、有料の表示申請を行う必要があり、業者が勝手に等級をつけることは許されていません。一定の基準にしたがって審査し、認められたものに等級表示か許可されていますので、選び方のひとつの目安になるでしょう。
こちらの基準は、布製の遮光ブラインドにも適用されています。
遮光1級は、さらに5段階に分類されています。表記は、性能の高いほうから順に(A++)(A+)(A)(B)(C)になります。どれも遮光率は99.99%以上です。
ただ、3級以上の遮光カーテンを使用すると、部屋の中は薄暗くなってしまいます。昼間にカーテンを閉めて電気をつけるのも、もったいない気がしますね。
ある程度明るさを保ちながら遮光をするには、レースのカーテンを活用するとよいでしょう。UVカット機能があり、保冷効果が期待できるカーテンが、多数販売されています。布の織り方で柄も出ますので、好みに合わせて選べます。
断熱シート
窓に貼るタイプの断熱シートも手軽で便利です。こちらは、直接窓に貼り付けて熱を遮断します。夏用、冬用、オールシーズン用といった、季節に合わせたシートが各種販売されていますので、夏用を選んで使用してみましょう。UVカット機能が備わっており、夏の強い紫外線を防いでくれます。
水で貼れるシートと、粘着テープで貼るシートがあります。水で貼れるシートのほうが手軽ですが、表面に凹凸があるガラスは、水でうまく貼れない場合があります。すりガラスや模様のあるガラスには、粘着シートタイプを使用するほうがよいでしょう。
断熱シートはほとんどが透明なタイプです。似たような働きをするシートに、アルミシートや緩衝材のようなシートもありますが、こちらはあまり見た目が自然ではないので、インテリアにこだわる人にはおすすめできません。
透明の断熱シートでも、マジックミラー効果があり、外から室内が見えにくいタイプもありますので、それぞれの機能を確認してみましょう。
遮熱ブラインド
カーテンと並び、ブラインドにも日差しをさえぎる効果があります。夏場は、羽根の1枚1枚に遮熱効果を持たせた商品が便利です。カーテンと異なり、羽根の角度をこまかく調整できますので、風通しをよくしたまま、遮光・遮熱ができます。木製のブラインドなら、素材自体が熱くなりにくいというメリットもあります。
部屋の雰囲気や用途に合わせて、カーテンやブラインドを使い分けてもいいですね。
直射日光をさえぎる屋外の日差し対策
室内の対策と同時に、屋外の日差し対策も行いましょう。ダブルの効果で、より日差しをさえぎることができます。
すだれ・シェード
昔から日本で利用されてきた日差し除けの道具に「すだれ」があります。すだれは、葦(よし)や竹、麻などの自然素材でできています。最近では、PVC(ポリ塩化ビニル)製の、カビにくいすだれも販売されるようになりました。いずれも、軒先からつるし、不要の際はくるくると巻いて上方でとめておけます。
よく似た道具に「よしず」があります。こちらは、すだれよりサイズが大きく、2〜3メートルの高さがあり、家の壁に立てかけて使用します。主な材料は葦です。
すだれやよしずに水をかけ、気化熱を利用して涼をとることもできます。見た目も涼し気で夏らしく、風情がありますね。
洋風の住宅には、シェードもおすすめです。シェードは、断熱・遮光・防水コーティングなどをほどこした大きな布で、サンシェードとも呼ばれています。工事不要で取り付けることができ、気軽に利用できます。色柄も多種多様で選ぶのが楽しいアイテムです。
グリーンカーテン
ゴーヤや朝顔、ヘチマ、ひょうたんなど、夏に生育するつる植物を利用したグリーンカーテンは見た目も涼やかです。ただ、たくさんの葉を茂らせて大きく育てるためには、手入れが必要なところが難点です。
とはいえ、植物の蒸散(葉の裏から水分を蒸発させる)は気化熱が発生し、周囲を涼しくします。日差しもさえぎることができますから、一石二鳥ですね。育てる楽しみも味わえる、子どものいる家庭にもおすすめの暑さ対策です。
ベランダの照り返し予防にウッドパネル
マンションなどのベランダも、熱の発生源です。窓付近の日差しの照り返しが、部屋の温度を上げる原因になります。コンクリートむき出しの地面はとても熱くなりますが、人工芝やウッドパネルを並べれば、照り返しの防止にも一役買います。
すでに敷いている、もしくはウッドデッキがある場合は、窓の付近で植物を育てることも有効です。グリーンカーテンと同じ原理で、周囲の熱を下げてくれます。
ベランダのプランターで植物を育てるときは、暑さに要注意です。プランターをベランダの床に直置きせず、台に乗せて風が通る隙間を空けておきましょう。土が乾きやすいので、様子を見て涼しい時間帯に水をやります。
夏の暑さに強い植物としては、キク科のエキナセア、ハナシノブ科の宿根フロックスなどがあります。きれいな花が咲く多年草で、種を落としておけば、毎年芽を出します。料理に使えるハーブを育てるのもおすすめです。夏のハーブといえば、シソ(大葉)が有名ですね。一株あると何にでも使えて便利です。
窓ガラスの材質変更も効果あり
窓の周囲ではなく、窓そのものを変えてしまうのも効果がある方法です。寒冷地の二重ガラスはよく知られていますが、夏向けに、熱を遮断する二重構造の遮熱ガラスというものがあります。窓から入る日射熱を5割程度カットする製品もあるので、ほかの対策と組み合わせれば十分な効果を発揮してくれるでしょう。
窓の取り換えが必要なため、一時的な費用がかかりますが、特に暑い部屋やリビングに限定するなど、導入を検討してみてもよさそうです。
まとめ
部屋の暑さ対策は、物理的に日光を遮断するか、熱の流入を防ぐことです。部屋の温度がそこまで上がらなければ、冷房をつける時間も短縮できます。結果として、節電になり、電気代を抑えることができます。カーテンやブラインド、すだれなどのアイテムを駆使して、対策してみましょう。日差し対策をすれば、紫外線量が抑えられ、畳や家具などの劣化も防ぐことになります。適切な対策をして、節電しながらエアコンをうまく活用し、夏の暑さを乗り切りましょう。