新型コロナウイルス感染防止による在宅勤務で、光熱費が増えたという人は少なくありません。在宅勤務をしていない人でも、自宅で過ごす時間は長くなっており、省エネ住宅が注目されています。行政側も以前から省エネ住宅の普及には力を入れており、補助金、減税、融資などの形で様々な支援制度を設けています。支援制度を上手に活用すれば、省エネ住宅で光熱費を削減することができるでしょう。
まず各種の補助制度、減税措置について一覧にまとめてみました。
この中で主な制度、減税措置についてそれぞれ紹介していきます。
3つの主な支援制度
・次世代住宅ポイント制度
消費税率10%が適用される一定の省エネ性、耐震性、バリアフリー性能等を満たす新築住宅やリフォームをした人に対し、様々な商品と交換できるポイントを発行する制度です。お金の補助があるわけではありません。省エネ住宅(住宅性能表示制
度の断熱等性能等級4相当等)であれば30万ポイント、低炭素住宅やZEHなら35万ポイント発行されます。新型コロナウイルス感染症の影響により事業者からやむを得ず受注や契約を断られるなど2020年3月31日までに契約できず、4月7日から8月31日までに契約を行った場合、ポイントの申請が可能です。
・すまい給付金
給付額は、住宅取得者の収入と持分割合によって決まり、所得が少ないほど給付金額が増えます。持分割合は、不動産を共有登記する際に誰がどれだけの割合の所有権を持つか、その割合のことです。
・ZEH支援事業
国土交通省と経済産業省と環境省が連携して実施しているもので、政府はZEHを供給するハウスメーカーや工務店、建売事業者などを増やしたいと考えています。補助金はZEHを新築購入・リフォームした個人を対象とするものと、事業者が対象になるものとがあります。
支援制度は、省エネ住宅を建築したり購入したりする場合(新築戸建て)、所有する住宅を省エネ住宅にリフォームする場合(中古住宅の購入と一体で行う場合も含む)などにそれぞれ用意されています。ただ、支援制度ごとに求める省エネ性能の基準が異なり、省エネ性能の基準に関する専門知識がないと判断できない場合も多いので、詳細については建築事務所やハウスメーカー、自治体担当者などに問い合わせたほうが確実でしょう。
省エネ住宅で利用できる減税制度
新築については、代表的なものとして「低炭素住宅」と「長期優良住宅」について減税制度が設けられています。
・住宅ローン控除
「住宅ローン控除」(ローン残高の1%を10年にわたり所得税などから控除する制度)の対象となる上限額が上乗せされます。その結果、10年間の最大控除額が400万円から500万円に引き上げられます。
省エネリフォーム減税では、住宅ローンを利用した場合と自己資金で支払った場合で、それぞれ減税が受けられます。
住宅ローンを利用した場合は5年間で最大62.5万円、自己資金の場合はその年に最大25万円(太陽光発電設備設置で加算あり)、所得税から控除されます。この場合の省エネリフォームでは、窓の断熱性能を向上させるリフォームが必須です。
・登録免許税の軽減措置
不動産を登記する際に必ず必要となるのが登録免許税ですが、低炭素住宅と長期優良住宅には軽減措置があります。
・贈与税の非課税制度
父母や祖父母などの直系尊属から、自分で住むための住宅を新築、購入、増改築等をするために必要な資金として贈与を受けた場合、一定金額までの贈与について、贈与税が非課税となる制度があります。一般の住宅よりも省エネ住宅を購入したほうが、この贈与金額の上限が高くなります。つまり、非課税枠が広がるということです。
例えば、2020年4月から2021年3月までに契約した省エネ住宅については(消費税10%適用)、1,500万円までの贈与につき、贈与税が非課税となります。なお、これは2015年1月1日以降の贈与が対象です。
減税の中身としては、所得税や地方税からの減税のほかに、固定資産税の負担が軽くなる制度もあります。こちらのほうは見落としがちなので忘れずに。
住宅ローンを利用する際に利用したい制度
住宅ローンには様々な種類がありますが、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携している長期固定金利の住宅ローン【フラット35】もその中の商品の1つです。
そして、【フラット35】には【フラット35】S という商品もあります。これは耐震性や省エネ性能などで優れた品質の住宅を取得した場合に適用されるもので、【フラット35】の金利から一定期間、金利を引き下げる制度です。
さらに【フラット35】S には、当初10年間【フラット35】の金利を下げる「金利Aプラン」と、当初5年間の金利を下げる「金利Bプラン」があり、AプランのほうがBプランよりもより高性能な住宅取得を求められます。
リフォームだけで【フラット35】を利用することはできませんが、中古住宅の購入とリフォームを一体で行う場合に利用できる【フラット35(リフォーム一体型)】があります(2020年12月末で借入申込み受付終了)。その場合、省エネリフォームをして、それぞれの条件を満たせば、【フラット35】S または【フラット35】リノベ による金利引き下げ優遇を受けることができます。
そのほかにも民間金融機関の住宅ローンの中には、省エネ住宅や環境配慮型の住宅で、金利を優遇する場合もありますので、個別に確認するとよいでしょう。
自治体独自の制度も
各自治体が独自に行っている補助制度については、住んでいる自治体に問い合わせるか、住宅リフォーム推進協議会の「地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト」でも調べることができます。
一例として東京都の事業を紹介します。
東京都では、「既存住宅における高断熱窓導入促進事業」と「東京ゼロエミ住宅導入促進事業」を行っています。
前者は、窓を高断熱窓に改修する場合、その経費の一部を助成するというもので、50万円が上限です。
後者は、省エネ性能の高い「東京ゼロエミ住宅」を新築すると、その費用の一部を助成するというものです。助成の対象となるのは、床面積の合計が2000平米未満の都内の新築住宅(個人・事業者)で、1戸あたりの助成額は、戸建住宅が70万円、集合住宅が30万円。加えて、太陽光発電システムを設置すると、キロワットあたり10万円(上限100万円)を追加補助されます。
「東京ゼロエミ住宅」では、断熱性能と省エネ性能が要素ごとに仕様として明示されています。具体的には、照明は全室LED(玄関、トイレ、洗面・脱衣所、廊下、階段のうち1ヶ所以上は人感センサー付き)、空調機はリビングなど一番使用する部屋に必ず高効率エアコン設置(省エネラベル4★または5★)、水栓については湯水混合水栓は節湯型水栓などです。
事業期間は2019~21年度(助成金の交付は2022年度まで)です。受付窓口は東京都環境公社 東京都地球温暖化防止活動推進センター(愛称:クール・ネット東京)。
まとめ
コロナ禍はまだまだ続きそうです。最近は、テレワークや在宅勤務のために、中古戸建てを購入して仕事部屋を確保しようと考える人が増えているようですが、その際はぜひ、省エネリフォームを検討しましょう。補助金の場合は、計画段階で申請して承認を得てからようやく着工できるものがあるなど、どの支援制度を利用するにしても、集めなければならない提出資料は必ず出てきますので、思い立ったらできるだけ早く情報を集めるのが肝心です。