新型コロナウイルスの感染拡大が、経済に大きな影響を与えています。住宅の購入を検討されていた方にとって、今回のコロナ禍は不動産価格にどんな影響を与えるのか、先行きが不透明な中で住宅ローンを組んで住宅を購入してよいのか不安なことでしょう。不動産価格はこれからどうなるのか、アフターコロナの住宅の買い時はいつなのか、購入するならどんなことに注意すべきなのか考えてみましょう。
不動産価格は新型コロナウイルスの影響を受ける?
新型コロナウイルスの感染拡大が、経済に大きな打撃を与えています。国際通貨基金(IMF)が6月24日に世界経済見通しを改定、2020年の成長率をマイナス4.9%と予測しました。また、6月10日にOECD(経済協力開発機構)が公表したデータでは、このままコロナウイルスが収束した場合でも、2020年の世界経済の成長率はマイナス6%、また日本の経済成長率も同じくマイナス6%と予測されています。
感染拡大がいつ収束するのかによって影響の大きさは変わると思われますが、いずれにしろ、今後しばらく厳しい経済状況が続くことは避けられないでしょう。経済が落ち込めば不動産価格にも影響が出ることが考えられます。
これから不動産価格はどうなるのか、アフターコロナの住宅の買い時はいつなのか、マイホームの購入を考えている人にとっては気になるところでしょう。
不動産価格と新型コロナウイルスの関係
まず、不動産価格がどうなるか、首都圏の新築マンションと中古マンションにスポットを当てて考えてみましょう。
ここ数年、首都圏の新築マンション価格は上昇を続けてきました。不動産経済研究所の「首都圏マンション市場動向2019年度(2019年4月〜2020年3月)」によると、2019年度の首都圏の新築マンション平均価格は6,055万円(18年度は5,927万円)、平米単価は90.1万円(18年度は87.5万円)。前年度比で平均価格は128万円(2.2%)、平米単価は2.6万円(3.0%)上昇しています。
図表1 首都圏の新築マンションの価格推移 (単位:万円)
コロナ禍の影響で新築マンションの価格に変動は出ているのでしょうか。不動産経済研究所の「首都圏のマンション市場動向(2020年5月度)」によると、20年5月は発売が393戸(前年同月比82.8%減、前月比42.7%)と大幅に減少、平均価格は6,485万円、平米単価は108.4万円とともに上昇しています。
図表2 首都圏の新築マンションの発売戸数・価格・平方メートル単価の推移 (単位:万円)
4月、5月とコロナ禍の影響で発売戸数は大幅に減少していますが、価格、平米単価ともに上昇しています。実は、経済が低迷しはじめてもマンション価格がすぐに下落するわけではありません。新築マンションは土地の確保から完成、販売するまで数年がかかります。実際にマンションが販売されるまで、土地の購入費用や建築費などの先行投資を回収することができません。
そのため、マンション販売時に経済が低迷し、需要が落ち込んでいたとしても、すでにかかってしまったコストを回収して利益を出すためには、簡単に価格を下げることができないという供給側の事情があるのです。
ただし、2019年度には供給戸数が前年度比22.8%減の2万8,563戸となるなど、コロナ禍の前から首都圏の新築マンション市場は減速しています。コロナ禍の影響で、さらなる需要の落ち込みが続けば、価格が下落する可能性も十分考えられるでしょう。
とはいえ、2008年9月のリーマン・ショック後、新築マンションの価格下落は10%程度でした。新型コロナウイルスの感染拡大が収束するまでの期間がどれくらいかかるかにもよりますが、マンション価格が暴落するといった事態になることは想定しにくいといえるでしょう。
中古マンションの価格はこれからどうなる?
次に中古マンションについて考えてみましょう。公益財団法人東日本不動産流通機構の「首都圏不動産流通市場の動向(2019年度)」によると、2019年度の首都圏の中古マンション成約数は、37,912件(前年度比0.8%)と2年連続で前年度を上回り、2年連続で過去最高を更新しました。また成約物件の価格は7年連続で上昇し、3,478万円となっています。
ここまで順調に拡大してきた中古マンション市場ですが、同じく東日本不動産流通機構の月例速報によると、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、2020年4月の成約件数は前年比マイナス52.6%(1,629件)、5月の成約件数は前年比マイナス38.5%(1,692件)と大幅に減少、3ヶ月連続で前年同月を下回っています。成約価格を見ると、4月は3,201万円と前年同月比でマイナス5.8%、5月は3,296万円で前年同月比でマイナス0.9%となりました。
図表3 首都圏の中古マンションの成約件数・成約価格の推移 (単位:万円)
このように、コロナ禍の影響で中古マンションの成約件数、成約価格ともに下落の傾向が出ています。このまま需要の落ち込みが続けば、下落傾向が続く可能性があると考えられます。
ただし、多くの人が住宅ローンを組んでマンションを購入していることを考えると、中古マンションの価格が暴落するといった局面は想定しにくいと思われます。住み替えなどで売却する場合、住宅ローンの残債以下の価格で売り出すことは考えにくいからです。
そのため、中古マンション価格の下落傾向が続いても、価格はある程度の水準で下げ止まると考えておいたほうが安全と思われます。
住宅ローン金利は当面の間、大幅な金利上昇はなさそう
現在、住宅ローンは非常に低い金利水準が続いています。これは、政府が経済対策として大幅な金融緩和を行ったためです。今後、住宅ローン金利はどうなっていくのでしょうか。新型コロナウイルス感染拡大によって経済は大きな打撃を受けています。この状況で金利を引き上げることはまず考えられません。当面の間、大幅な金利上昇はないと考えられます。低金利がこのまま続くのではないでしょうか。
今は買い時? それとも待つべき?
今後は、不動産価格と金利という条件面で考えれば、家を買いやすい状況になっている可能性があります。
ただし、相対的に不動産価格が下がったとしても、エリアや立地条件、間取りなどによって資産価値の二極化が一層進むと考えられます。コロナ禍によってリモートワークが普及し、働き方が変われば、家に対する考え方も変わっていくかもしれません。
もう少し価格が下がるかもしれないと考えたとしても、その通りになるかは誰にも分かりません。そう考えると、自身のライフステージに合わせて家が欲しいと思ったタイミング、自分の理想に近い物件と出合えたタイミングが買い時と言えるのではないでしょうか。その際に大切なのは、物件選びと資金計画については、慎重に慎重を重ねて検討することと言えるでしょう。
経済が落ち込んだ時に住宅ローンを組んでいいの?
ここで一つ心配なのが、経済が落ち込んだ時に住宅ローンを組んでいいのかという点ではないでしょうか。この点については、無理のない堅実な資金計画を立てることが大切です。住宅購入を検討している時には、つい背伸びをして今後も収入が増えていく前提で資金計画を考えてしまう方もいらっしゃいます。
ですが、先行きが不透明な状況で、そのような甘い見通しで住宅購入を考えることは避けるべきでしょう。特に、仕事の環境や就業状況によって、安定した雇用や収入を確保できるかどうか不透明な人の場合は、事態が収束して経済状況が安定するまで待つことをおすすめします。
また、住宅ローンを組む際には、【フラット35】に代表される全期間固定金利型を選択されることをおすすめします。全期間固定金利型であれば、金利上昇のリスクを受けませんし、返済額が一定なので返済計画が立てやすいからです。
また、全期間固定金利型はインフレに強いこともメリットです。インフレをひとことで言えば、物の値段が上がっていくこと(お金の価値が下がっていくこと)です。仮にインフレが起こって、これまで1,000円で買えていたものが1万円になったとしても、全期間固定金利型の住宅ローンなら返済額は一定です。
生活設計、資金計画をベースに住宅購入を
アフターコロナといっても、住宅購入する際の注意点は基本的に平時と変わらないと考えられます。エリアや立地条件、間取りなど、自身の生活設計に合った住宅を慎重に選ぶことはもちろん、住宅ローンを組むのであれば無理のない堅実な資金計画を立てて、確実に返済していくことが何よりも大切です。
今回の新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、これまで誰も経験したことのない事態です。状況を慎重に見極めて判断しましょう。