新型コロナウイルスの感染拡大を防止する措置として緊急事態宣言が発出されて以降、外出自粛が求められる生活が続きました。平日だけでなく、週末やゴールデンウィークも外出できずに、自宅で過ごした人が多いのではないでしょうか。緊急事態宣言が解除されて、自粛も段階的に解除される方針になりましたが、今後も感染者数によっては、再度自粛生活に突入する可能性はあります。
自粛生活では、大人も子どももストレスフル。特にマンションなどの集合住宅に住む子どもたちは、「静かにして」「走らないで」と言われることが増えたかと思います。
このような状況を受けて、郊外の庭付き戸建て住宅や専用庭付きマンションなどの、「庭のある暮らし」が見直されています。庭があると私たちの生活はどのように変わるのでしょうか。今回は「庭のある暮らし」をのぞいてみましょう。
住環境のニーズは都心から郊外、郊外から都心、そして再び郊外へ?
東京を中心とする首都圏には、戦後から1970年代半ばまでは、地方から大量の人口が流入しました。しかし、地方からの転入者数に対して住宅数が不足していたため、郊外の住宅地の開発が進められます。
その結果、1980年代には都市部の人口は減少に転じて郊外人口が大幅に増加しました。
ところが、1990年代半になると反対に郊外から都市部の流入が増加します。1990年代後半には、都市部の流入が、郊外への流出を超過することになります。
都心の中でも以下の地域が人気を集めました。
・中央区
・千代田区
・港区
・新宿区
・江東区
・足立区
・墨田区
・台東区
・荒川区
・豊島区
・文京区
※参考:内閣府「地域の経済 2011」
近年は都市部の流入が続いていた訳ですが、その状況を覆しかねないのが新型コロナウイルスの感染拡大です。
感染拡大前の調査にはなりますが、リクルート住まいカンパニーの調査によると、2019年11月の時点で、テレワーク実施者のうち53%が「引っ越しを実施・検討・希望」と前向きな回答をしています。
このことから、勤務先への通勤利便性を優先して都心部に住んでいた世帯がリモートワークを経験することにより、通勤の利便性よりも暮らしの快適性を重視するようになる傾向がうかがえます。
さらに、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために広がったテレワークによって、この傾向がさらに高まっていると予想されます。
まだ総務省統計局が住民基本台帳をもとに毎月発表している、2020年4月の人口移動の概況は発表されていませんが、今後は人口流入・流出に何らかの変化があるのではと考えられます。
新型コロナで気がついた「庭がある暮らし」の魅力
新型コロナウイルス感染拡大によって、緊急事態宣言が発出された都道府県の子どもたちは、自宅での「おこもり生活」を余儀なくされました。公園で遊んでいると通報されてしまうといったニュースもあり、思うように屋外で体を動かすことができなかったのではないでしょうか。
そこで注目を集めたのが、「自宅の庭」です。自宅の庭であれば、三密状態になるリスクはほとんどなく、思う存分外気に触れることができます。自宅の庭での日光浴や食事、縄跳びやトランポリンなどさまざまな遊びが楽しめます。また、庭でのガーデニングや家庭菜園なども人気です。
都内の小学校では、夏期の水泳授業の取りやめや夏祭りの中止が決定するなど、子どもたちの楽しみが減っていますが、庭があればいつでも気軽に庭でのプール遊びを楽しむこともできます(集合住宅の場合は管理規約によるため、事前に確認を)。庭があることで、制限が多い暮らしの中でも心にゆとりができそうですね。
どう選ぶ? 郊外の庭付き戸建てや専用庭付きマンション
郊外の庭付き戸建てのほか、マンションの1階部分に設けられることの多い専用庭付き物件を選ぶ際に注意すべきポイントを説明します。ゆとりある庭のある郊外ライフを充実させたい人は、ぜひ参考にしてくださいね。
1.子どもの教育環境
郊外で暮らす場合、都心と比較すると教育に関する選択肢が若干少なくなります。引っ越した後に、「通える範囲に私立の小学校が少ない」「習い事の数が少ない」などの状況に陥らないように、子どもに受けさせたい教育や習い事を想定しながら住む地域を決定しましょう。
また、自宅から公園や学校への距離と、子どもが通る可能性がある道の治安にも注目しましょう。
2.自家用車の必要性
戸建てや専用庭付きマンションを探す場合は、自家用車が必要かどうかという視点で周辺の商業施設や公共交通機関のアクセスを確認しておきましょう。
都心部までの通勤時間が1時間圏内の郊外となると、公共交通機関だけでなく自家用車での移動が必須という地域もあります。
最寄り駅までは徒歩や自転車、バスなどで移動できても、日用品の買い物や週末のレジャーなどで自家用車が欠かせないというようなケースです。自家用車を持つつもりがない場合は、このような物件は選択肢から外しておきましょう。
3.隣近所の様子
庭がある暮らしを求めて郊外に引っ越して「庭ライフ」を楽しみたい場合、隣近所の住人の人間性が重要です。子どもが庭で遊べば、少なからず声を出します。
近隣住人の中に子どもの声が苦手という人がいる場合は、郊外での庭ライフが肩身の狭いものとなってしまうでしょう。子どもとの庭ライフを楽しみたいという人は、物件を決定する前に近隣住人の様子を確認しておくことをおすすめします。
小さな子どもがいる世帯が多い地域で、周囲の家に小さな子どもがいるという物件であれば、騒音トラブルが発生する可能性は比較的低いと考えられます。
4.快適にテレワークできる間取りを選ぶ
今後もテレワークを継続する場合、重要になるのは仕事スペースの確保です。これまでは、新型コロナウイルスの感染拡大という緊急事態だったので、ある程度の不自由を我慢しながら業務を遂行していたという人が多いのではないでしょうか。
しかし、テレワークが日常の一部になるのであれば、仕事のためのスペースの確保は必須です。生活スペースとは切り離されたワーキングスペースがあることで、オンとオフの切り替えが容易になります。日常を目に入れないことで、仕事に集中しやすくなりますので、郊外でのテレワークを検討している人は、ぜひワーキングスペースの充実を検討しましょう。
引っ越しを検討する前にチェックしておきたい点
これまで都心のマンションに住んでいた人にとって、郊外の庭付き戸建てや専用庭付きマンションは未知の世界だと思います。ここからは、郊外の戸建てや専用庭付きマンションを検討している人が疑問に思いそうな点をピックアップして説明します。
1.郊外の庭付き戸建てや専用庭付きマンションのセキュリティは?
戸建てに住む場合に、気になるのがセキュリティです。最近のマンションにはオートロックがついていることが多いので、誰でも家の敷地に入ることができる環境は不安になります。
戸建てのセキュリティが気になる場合は、ホームセキュリティシステムの導入も1つの解決策です。
また、物件を選ぶ際に、空き巣や下着泥棒の被害に遭いにくい物件を選ぶことでもリスクは軽減できます。
戸建てやマンションの1階では以下の防犯対策が有効です。これらの設備があらかじめついている物件を選ぶとよいでしょう。付属していない場合は、後から取りつけることが可能なものもあります。
【戸建ての防犯対策】
・ドアに複数の鍵をつける
・防犯性能が高い鍵に変える
・窓にシャッターをつける
・カメラ付きインターフォンを導入する
・フェンスや塀を見通しがよいものにする
【戸建て・マンションの1階に共通する防犯対策】
・センサー付きライトをつける
・窓に防犯フィルムを貼る
・庭に音が出る砂利を敷く
※参考:警視庁 住まいる防犯110番
2.マンションの1階は湿気がひどい?
マンションの1階は地面近くに位置していること、近隣の建物の影によって日当たりが悪いケースが多いことから、湿度が高い傾向にあります。水回りや収納、窓周辺にカビが生えてしまうことも少なくありません。ただし、マンションの1階の湿気は対策可能です。こまめに換気をすること、除湿機を複数台用意することなどで湿気が緩和されます。
3.郊外で暮らすことのデメリットは?
郊外暮らしにはデメリットも存在します。
・テレワークが解除された場合、通勤が大変になる
・都心に比べ、徒歩圏に買い物できる場所の選択肢が少ない
・物件価格は抑えられるが、都市部よりも資産価値が減少する可能性もある
郊外での暮らしは、都心部のオフィスへ通う場合の通勤時間が長く、通勤ストレスが大きいというデメリットがあります。一方で、始発駅を選択すれば座れる可能性が高くなり、ゆったりとした通勤ライフを確保できるというメリットも。また、のびのび子育てしたい世帯にとっても、緑豊かな落ち着いた環境はとても魅力的です。郊外で暮らすことにはデメリットはあるものの、工夫によってはメリットに変えることもできるでしょう。
まとめ
新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着いた後もテレワークに移行して、庭がある暮らしを楽しみたい場合は、家の間取りや面積、庭の様子だけでなく、住む地域や近隣住民の様子、教育環境や自家用車の必要性などを考慮して、新しい住まいを探してみましょう。「庭で過ごす」という選択肢が生まれることで、暮らしは少し豊かになり、心にゆとりが生まれそうです。
(最終更新日:2021.03.29)