【グラフで見る】消費行動のこれまでの変化とアフターコロナの行方

全都道府県を対象に発令された緊急事態宣言は5月31日までを期限に発令されましたが、5月14日に39県に対して緊急事態宣言の解除を発表しました。日本での新規感染者数は着実に減っているため、5月31日をもって全都道府県で予定通り解除される可能性があります。よく「アフターコロナ」という言葉を耳にしますが、緊急事態宣言後の日本で私たちはどのような消費行動をしていくのでしょうか。

完全に引きこもり状態になった日本人

今回も経済指標や企業の業績を見ながら、私たちの消費行動がどのような変化をしてきたのかを確認しましょう。総務省が発表している『家計調査(家計収支編)』は最新版が3月分ですが、二人以上世帯の消費支出は前月比4.0%減と2ヶ月ぶりに減少しました。

家計調査ではかなり多くの品目のデータが発表されているのですが、大きく10個に分けた費目のうち、8費目が前月から減少しています。これだけでも、私たちがお金を使わなくなったことが分かるのですが、細かく見てみましょう。

(出所)総務省『家計調査(家計収支編)』のデータを基に株式会社マネネが作成。 (注):二人以上の世帯。季節調整値。

上昇している2費目のうち、「教育」は国立大学授業料などの季節的な要因のため、実際に上昇したのは「光熱・水道」だけと考えてもいいでしょう。やはり、在宅勤務をする人が増えた影響と言えるでしょう。「交通・通信」は微減となっていますが、外出を自粛したことで交通は大幅に減少していますから、実際は通信への支出は増加したと考えてもいいでしょう。在宅勤務でネットやモバイルの通信料は上がるでしょうから整合性が取れます。

一方で、その他の支出は軒並み大幅に減っていますので、日本人は引きこもり生活に最適化しつつあると言えるでしょう。これは3月のデータですから、4月・5月は更にその傾向が強まっていると考えます。

企業にはかなりのダメージが発生

消費者がお金を使わなくなると、大きなダメージを受けるのは小売業です。経済産業省が発表している『商業動態統計』を見てみると、こちらも3月のデータですが全業種が前月比でマイナスとなっています。

(出所)経済産業省『商業動態統計』のデータを基に株式会社マネネが作成。
(注):季節調整値。

消費を減らすといっても、飲み食いをせずに生きていくことはできませんから、やはり「飲食料品」が最も影響が小さくなっています。一方で、遠出をしなくなったことからガソリン販売を主とする「燃料」や、部屋着とたまに近所に外出する時に着る服があればいいことから、「織物・衣服・身の回り品」が大きく下落しています。

個別に見ると深く実感できる

実際に企業が発表している数字を見てみると、いかに私たちが消費をしなくなったかを深く実感できます。たとえば、「織物・衣服・身の回り品」が大きく下落したと書きましたが、アパレル各社が発表している月次売上速報を見てみましょう。こちらは4月分まで発表されています。

(出所)各社の月次売上速報のデータを基に株式会社マネネが作成。 (注):前年比。

ユニクロやユナイテッドアローズはなじみ深い方も多いかと思いますが、前年の同じ月と比較して、売上が60%近く落ち込んでいることが分かります。

(出所)各社の月次売上速報のデータを基に株式会社マネネが作成。 (注):既存店ベース。前年比。

百貨店についても見ていくと、大手の3社は前年の同じ月と比較して、売上が80%近くも落ち込んでいます。そもそも飲食フロア以外は営業していなかったり、訪日外国人観光客がほとんど来なかった影響があるのでしょう。

すぐにはアフターコロナと割り切れない

あらゆるデータを見ていくと、この数ヶ月で日本人は消費をせずに自粛生活に最適化したように思えますが、緊急事態宣言が終わった後やアフターコロナと呼ばれる世界で私たちは本当に元通りになっていくのでしょうか。

内閣府が発表している『消費動向調査』の中に出てくる消費者態度指数を見る限りだと、今後もしばらくは消費を戻すようなマインドになっていないことが分かります。

(出所)内閣府『消費動向調査』のデータを基に株式会社マネネが作成。 (注):季節調整値。

今回の自粛期間によって、今までは絶対に必要な支出だと思っていたけれど、実は不要だったんじゃないか…という対象になってくるものは非常に多いでしょう。

たとえば、企業であればオフィスはいらない、少なくとも一等地に高い賃料を払う必要まではないと思ったでしょうし、リモートワークが普及すれば私たちもわざわざ高い家賃を払ってまで都内に住む必要はなくなり、埼玉県や神奈川県に住んだ方がコストパフォーマンスは圧倒的に高くなるかもしれません。

逆にやはり全てをオンラインでこなすのは難しいという気づきから、コロナ前よりも評価が上がったサービスやモノも出てくるでしょう。このように、私たちはアフターコロナの世界観で、モノやサービスに対する支出を考えていかなくてはいけなくなるのです。

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