私たちの生活にとって欠かせない家電。家電で時間を産む「時産」を提唱する、インテリア&家電コーディネーターの戸井田 園子さんに、連載形式でこれから住宅購入を考える方に向けての「家電計画」の極意を教えていただきます。第三回目となる今回のテーマは空気の「質」。
皆さんはお部屋の換気をしていますか? 窓を開けて、空気を入れ替えると気持ちが良いですよね。しかし、最近は花粉やPM2.5、黄砂等の対策をされる方が増えていたり、さらに近年ではゲリラ豪雨や台風などの異常気象が多いことや、日中の不在時間が長い共働きのご家庭が増えているなど、窓を開けての自然換気を行うことができないという環境の方も多くなってきています。
だからこそ、室内の空気を、家電を活用して整えてあげることが大切です。連載第3回は、空気清浄機などの『空調家電』について、前後編の2回にわたって解説していきます。前編では「空調家電の違いと選び方」をご紹介しましょう。
空気清浄機、除湿機、加湿器の役割は?
最近の住宅は性能が高く、高気密・高断熱になっているからこそ、換気が必要であることをご存じでしょうか。24時間換気などの機械による強制換気があっても、使わない人も多くいます。住まい手の健康のためにも、住宅のためにも、換気設備は正しく使いましょう。
さらに室内の空気の質を向上するために、空気清浄機・除湿機・加湿器などの『空調家電』を導入する人も増えています。これから導入を検討されている方も多いのではないでしょうか。
空調家電といっても、色々な種類があります。また、それぞれには異なる役割があるので、まずは違いを正しく理解しておきましょう。
空気清浄機の役割
空気清浄機は、「集じん」と「脱臭」が主な目的です。
室内の空気を循環させ、フィルターでろ過して空気を浄化します。ホコリ・チリ・カビ・ウィルス・雑菌・ディーゼル粉塵・タバコの煙・PM2.5などの空気中の汚れや、ダニの死がい・花粉などのアレルゲンのほか、タバコ臭やペット臭、生ゴミ臭・料理臭などの生活臭、ホルムアルデヒドなどの化学物質臭を取り除く機能があります。
最近では1年を通して使用する「通年家電」として存在感を増し、一家に一台から「一部屋一台」の時代に突入しつつあります。
除湿機の役割
除湿機は、空気中の水分を取り除くことを目的としています。
花粉や大気汚染対策などで室内に洗濯物を干す人が多くなり、洗濯乾燥機を購入するより安価なことや、シワにならずに乾かせることなどから、衣類乾燥機として導入する人が増えてきています。
洗濯物が多いファミリーだけではなく、ひとり暮らしの人にとっても、あると便利なアイテムですよ。
加湿器の役割
乾燥した室内の空気に水分を加えます。
「冬は暖房で乾燥する」という方も多いと思いますが、石油やガスなど燃焼系の暖房器具は、燃焼と同時に水分を生成しているため、実は乾燥しないものです。
しかし、今はエアコンなどの電気系暖房が主流になっていて、室内が乾燥しやすくなっています。電気は水分を生成しないので、物理的にどうしても乾燥してしまうのです。さらに、エアコンは風が出るため温風による乾燥を感じやすくなっています。近年のエアコンの普及により、加湿器を使用する人が増えてきています。
それぞれの役割をあらためて理解できたでしょうか。室内空気のお悩みや状況にあわせて、適切な空調家電を導入しましょう。
空気清浄機、除湿機、加湿器の選び方
空調家電を選ぶときは、「1.タイプを選ぶ」「2.パワー(サイズ)を選ぶ」の2ステップで検討します。
空気清浄機と一言で言っても、タイプ(方式)には種類があり、それぞれに長所・短所があります。家電ごとに詳しくご紹介していきますので、よく見極めて、お部屋の環境や暮らし方、使い方に合うものを選びましょう。
空気清浄機の選び方
【1】タイプを選ぶ
空気清浄機のタイプは2種類あります。
1.単機能特化型
空気清浄機能のみに特化している単機能型。ファンで空気を吸い込み、フィルターでろ過して汚れを除去します。
【長所】
・構造がシンプルでわかりやすい。
・フィルターを捨てるだけで完了のラクラクお手入れ。
【短所】
・集じん・脱臭のフィルター交換タイプが多く、フィルターコストが定期的に必要になる。
2.加湿空気清浄機
「空気清浄機」に「加湿」が合体したタイプ。国内大手メーカーの多くが加湿空気清浄機を発売しています。多くにイオン放出機能が搭載されています。
【長所】
・加湿機能があるので、乾燥する冬のシーズンも1台で済む。
・集じん・脱臭のフィルター10年交換不要が多く、ランニングコストがかからない。
【短所】
・フィルターは10年交換不要とはいえ、定期的な手入れが多少必要となる。
【2】パワー(サイズ)を選ぶ:「適用床面積」をチェック
空気清浄機のカタログには、「適用床面積○畳(○○平米)」が表記されています。この数値は、あくまで30分で浄化できる広さの目安です。
空気は、人が動くたびにチリやホコリが舞い上がって汚れます。30分間で浄化される程度では、つねに空気が綺麗な状態になるとは言い難いものです。少しでも空気が綺麗な状態を維持したいのであれば、部屋の大きさに関わらず、可能な限り適用床面積の広いものを選ぶのがおすすめです。
除湿機の選び方
【1】タイプを選ぶ
除湿機のタイプは「除湿方式」の違いです。3種類あります。
1.コンプレッサー式
コンプレッサーを使い、空気を冷やすことにより水分を取り除く方式。
いわゆるエアコンの除湿と同じ方法です。
【長所】
・25度以上での除湿力が高く、梅雨や夏場に向く。
・消費電力が少なくランニングコストが安い。
・室温上昇が少ない(1~2℃程度)。
【短所】
・コンプレッサーがあるため、本体サイズが大きめでやや重い。
2.デシカント(ゼオライト) 式
ゼオライト(乾燥剤)で水分を取り除く方式です。乾燥剤に水分を吸着させて、乾いた空気を吹き出します。吸着した水分はヒーターで暖められ、冷やされて水滴に戻り、タンクに溜まります。
【長所】
・低温時での除湿が得意なので、冬場に向いている。
・コンプレッサーが無いので、軽量コンパクトで静か。
【短所】
・ヒーターを使うため、消費電力が大きくなる。
・部屋の温度が上がる。(室温上昇は3~8℃程度)
3.ハイブリッド式
上記で紹介した、1.コンプレッサー方式と2.デシカント(ゼオライト)方式を融合させたタイプ。
【長所】
夏場はコンプレッサー方式で室温上昇を防ぎ、冬場は低温時の除湿が得意なデシカント方式で、1年中除湿能力を維持できる。
【短所】
本体価格は若干高め。
【2】パワー(サイズ)を選ぶ:「定格除湿能力」をチェック
「定格除湿能力」は、1日あたり何リットルの水分がとれるかを示します。この数値が大きいほど、早く除湿ができるということ。すばやく除湿をしたい場合は、部屋の大きさに関わらず大きなものを選ぶ方が良いでしょう。
加湿器の選び方
【1】タイプを選ぶ
加湿器のタイプは5種類あります。特徴をしっかりとおさえておきましょう。
1.スチームファン式
ヒーターで水を加熱し、沸騰させて蒸気に変え、ファンで蒸気を送り出す方式。
やかんでお湯が沸騰しているように蒸気が勢いよく出るので、加湿しているという実感がわきやすいのがポイント。共働きやひとり暮らしなど、家にいることが少なく、使用する時間が短い生活を過ごしている人に向いています。短時間で湿度を上げたい場合にも有効です。
【長所】
・加湿パワーが高く、即効性がある。
・水をいったん加熱するので衛生的。
【短所】
・消費電力が大きめ(200W~500W程度)。
・蒸発皿に残るミネラル分が水アカとして溜まり、こまめな掃除が必要。
2.気化式
水を含んだフィルターに、ファンで風を送り、水分を気化させる方式。
ホテルなどで、水に濡らしたバスタオルを使って加湿する方法に近いイメージです。電気代が安くすむので、小さな子どもがいるご家族や在宅でお仕事をされる人など、長時間にわたって使用する人に向いています。
【長所】
・送風のみで消費電力が少ない(3W~20W程度)。
・いったんフィルターで水をろ過するので、衛生的
【短所】
・急速に加湿をすることは苦手。
・蒸気が目に見えないので、加湿している実感があまりない。
3.気化×ヒーターのハイブリット式(温風気化式)
気化式にヒーターを併用し、加湿スピードを高めたタイプです。湿度が低い時は「温風」をあてて加湿量を多くし、安定してきたら「送風」に切り替えます。消費電力は②の気化式より大きいものの、①の加熱式よりは小さく、加湿のパワーも両者の中間。省エネ性と加湿スピードのバランスの良いタイプと言えます。
【長所】
・状況に応じて「温風・送風」を切り替える。効率が良く、省エネ。
・フィルターで水をろ過するので、衛生的。
【短所】
・本体価格が気化式より高め
4.超音波式
水に超音波を当てて微粒子にし、それをファンで送り出す方式。霧吹きのようなイメージです。デザイン性に優れたものが多いので、見た目にこだわりのある方は気に入ると思います。
【長所】
・消費電力が少ない。
・小型でデザインがきれいなものが多い。
【短所】
・タンクの水をそのまま吹き出すため、タンク内の水を衛生的に保たないと吹き出す蒸気に雑菌が混ざりやすい
・水分中の成分(カルキ等)も空中に放出されるので、壁や家具などに白いものが残ることもある
5.超音波×ヒーターのハイブリッド式(加熱超音波式)
前述の4.超音波式をベースに、ヒーターを搭載したハイブリッドタイプです。乾燥時はヒーターで加湿パワーを高め、湿度が安定すると超音波のみに切り替わることで、超音波の弱点をカバーしています。
【2】パワー(サイズ)を選ぶ:「加湿パワー・適応床面積」をチェック
「加湿パワー」は、室温20℃・湿度30%の時、1時間あたり何リットルの水蒸気を出すかを「ml/h」で示します。この数字が大きいほど加湿能力が高く、より広い部屋をカバーできるということです。「適応床面積」は、室温20℃において、湿度60%を維持できる部屋の大きさの目安のこと。
加湿パワーが大きいほど、カバーできる部屋は広くなります。しかし、部屋の大きさ以上の加湿パワーがあると、過加湿で住宅を痛めることもあります。加湿器は、部屋の大きさに適したサイズを選ぶことがポイントです。
まとめ:特徴はそれぞれにあり! 間違いのない空調家電選びを
様々にある空調家電。その中でも、複数のタイプがあってどれがいいのか悩んでしまうかもしれませんね。この記事でご紹介したそれぞれの特徴や長所・短所を参考に、最適な空調家電を選んでください。
後編では、購入前に知っておきたい置き方のポイントや、インテリアに馴染むデザイン性の高いオススメの機種もご紹介します。どうぞお楽しみに!