「年をとったので、そろそろ家をバリアフリーにリフォームしたい」「セカンドライフではのんびりした郊外に住み替えたい」「高齢者サービス付き住宅に入りたい」など住まいに関するセカンドライフの希望はたくさんあると思います。
ただ、ネックとなるのが金銭面です。金銭面での悩みをサポートするローンが「リバースモーゲージ型住宅ローン」です。
1.リバースモーゲージ型住宅ローンは60歳以上が対象
通常の住宅ローンでは、元本と利息を一緒に返済していくので、月々の返済金額が多くなりがちです。現役時代のように給与や賞与といった収入があれば安心して返済できますが、セカンドライフでは主な収入源は公的年金のみとなってしまいます。年金という限られた収入の中では通常の住宅ローンを返済するのも大変ですし、そもそも住宅ローンを組むことも難しいのが現状です。
また、手元資金を使ってリフォームや建て替え、住み替えをするとその後のセカンドライフに不安が残ってしまう、というデメリットもあります。
この悩みを解決すべく、手元資金をある程度残しつつ、年金収入の範囲の中で安心して返済できる仕組みが「リバースモーゲージ型住宅ローン」です。
これは住宅金融支援機構の住宅融資保険【リ・バース60】を活用した住宅の購入や新築、リフォームや借り換えを目的にした住宅ローンです。セカンドライフの住まいをサポートする制度なので、60歳以上であれば契約者の年齢に制限がありません(一部の金融機関では50歳以上から利用できる【リ・バース50】を活用しているケースもあります)。
なお、住宅金融支援機構の住宅融資保険【リ・バース60】を活用したリバースモーゲージ型住宅ローンを取り扱っている金融機関は約60機関(2020年3月時点)。金融機関によって金利や借入用途、商品性、年齢要件は異なるので、利用時には確認が必要です。
2.最大の魅力は借入期間中の返済は「利息のみ」
最大の魅力は、利息のみの返済でリフォームや住み替え、住宅取得などが可能になること。
元本の返済は契約者が死亡した後、相続人が「死亡保険金などの自己資金で返済する」もしくは「担保となっている自宅を売却して返済する」か、を選べます。もちろん、返済中に余裕資金が出れば、契約者本人が元本を返済することも可能です。ですから、計画的に元本を繰上げ返済したり、一括返済することで、自宅を家族に残すこともできます。
では、利息のみの返済でどの程度、返済に余裕がでるのでしょうか。
例えばA金融機関の場合、自宅の建て替えで1,800万円の住宅ローンを組んだ場合でも月々の返済は40,125円(変動金利型 金利2.675%)です。もちろん物件価格のすべてを借入れできるわけではないので、頭金の充当は必要ですが、ある程度の資金を手元に残しつつ、年金収入の範囲内で無理なく返済できるといえますね。
なお、「契約者が死亡したとき、妻などの同居人がいた場合」には、同居人に契約を引き継いでそのまま住み続けることも可能です。ただし契約が引き継げるのは通常、連帯保証人となっている配偶者のみで、子どもなどは引き継ぐことはできない点には要注意です。また金融機関によっても取り扱いが変わるケースもあるので確認しましょう。
3.「リコース型」と「ノン・リコース型」がある
住宅ローン借入時に「利息のみ返済していく」場合、借入元本が全く減らないため、担保不動産価値の下落というリスクがあります。
例えば、仮に現在の不動産の評価が1,500万円だと考えてお金を借りても、20年後30年後に800万円に下がってしまえば、自宅を売却しても元本を返せなくなってしまう可能性があるのです。
もちろん、金融機関はそのリスクを避けるために不動産担保評価の50~60%程度に融資額を抑えていますが、万が一、担保割れして自宅を売却しても返済できない場合には、相続人が残りの債務を返済しなければなりません。これを「リコース型」といいます。
一方で、「ノンリコース型」は、仮に、契約者の死亡時に不動産の価値が下落して自宅の売却資金で全額返済できなかったとしても、相続人に残金の返済義務はありません。
「子どもや配偶者など相続人に債務を残さなくていい」というのは活用するうえでは大きな安心といえますね。もちろん自宅を売却して元本を返済しても資金が余れば相続人が受け取れます。
リコース型:担保物件(住宅および土地)の売却代金で返済した後に債務が残った場合は相続人が残った債務を返済する必要がある。
ノン・リコース型:担保物件(住宅および土地)の売却代金で返済した後に債務が残った場合は相続人が残った債務を返済する必要がない。
ただし、ノン・リコース型でも相続人に残金の返済義務はありませんが、長生きをすることで返済期間が長くなり、支払い利息が元本を超えてしまう、というリスクや金利上昇リスクがなくなるわけではありませんので、活用法には注意が必要です。
ちなみに、金融機関によって「リコース型」「ノンリコース型」のどちらを取り扱っているかは異なり、「ノンリコース型」の方が金利は高くなるケースもあるので要チェックですね。
3.借り入れの目的はあくまでも「住宅資金」
あくまでも住宅資金のサポート制度なので、資金用途は「本人が住む住宅の建設・購入」「自宅のリフォーム資金」「住宅ローンの借り換え」「サービス付き高齢者住宅の入居一時金」「子世帯などが居住する住宅の取得のために親世帯が借り入れるための資金」などで、生活資金や投資物件購入資金には使えません。
つまり、リバースモーゲージ型住宅ローンは、「理想の住まいを手に入れつつ、住宅ローンの返済額を抑えることで、手元資金や年金などの収入を生活のゆとりや安心に使う」ことが目的、といえますね。
融資額は金融機関によって異なりますが、通常100万円程度から新築や住宅購入では最大5,000万円まで、リフォームでは最大1,500万円までとなっています。
なお、金融機関によっては自宅の購入・新築・リフォームのみで借り換えには使えない、というケースもありますし、活用できる地域や取り扱い可能物件も変わるので注意が必要です。
手元資金をある程度残しつつ、年金収入の範囲の中で安心して返済できる「リバースモーゲージ型住宅ローン」定年後の住まいとセカンドライフを充実させるためのひとつの手段として活用できる制度といえるでしょう。