マンションを購入する際には、資金計画を練る必要があります。いくらくらいの物件を、何年の住宅ローンで返済するのか。そして、最も気になる「月々の返済額はいくらになるのか」を考えていくはずですが、住宅ローンの借入可能金額はどのように決まるのでしょうか。ファイナンシャルプランナー・平井美穂さんのアドバイスとともに、住宅ローン専門金融機関ARUHIで融資を受けた人のデータも併せて、世帯年収別の購入価格と返済額の目安をご紹介します。
住宅ローン借入可能金額はどう決まる?
個人が住宅を購入したい場合、まず検討するのが住宅ローンを利用することによる住宅取得です。一般的に「キャッシュで一括購入!」という人は多くないでしょう。それでは、住宅ローンはどの程度まで借りることができるのでしょうか?
「年収の5倍程度が、無理なく返せる金額の目安とされています。金融機関では年収の8~9倍ほど融資してもらえることが多いですが(2020年3月現在)、無理なく返せる金額が年収の5倍であることを考えると、その1.5~2倍もの金額を借り入れることはあまり現実的ではありません」(平井さん)
金融機関では、借り入れを希望する人のどのようなところを見て融資金額を決定しているのでしょうか。
平井さんによると、チェックポイントは以下の通りです。
・年収に対する年間返済額の割合(既に返済中の借入があればその返済額も含める)
・完済計画のめど
・職種や雇用形態、勤務先の業績、職歴など
・貯蓄額や保有している資産など
・購入しようとしている住宅の担保評価額に対する借入額の割合
本人の資産状況や勤務先の業況もチェックされますが、金融機関が見ているのは「貸した金額をきちんと返済できるかどうか」。無理な返済計画を立てていないか、収入に対して借りすぎていないか、また、よく言われるように信用情報も重要なポイントです。クレジットカードなどの支払遅延もチェックされるので、日ごろから支払い忘れなどのないように心がけておきましょう。
無理のない返済額を考えたい場合には、賃貸物件に住んでいる人であれば現在支払っている家賃の金額が基本。そこに、毎月貯蓄に回している金額から住宅ローン返済に回せる金額を加えて少し上乗せするなどして「この金額なら月々無理なく返済できる」という金額を算出し、借り入れる金額を決めていきます。
「マンションの販売センターでは『月にいくら返せるか』からシミュレーションしていくのが一般的です。そこから住宅ローンの借入可能額を計算し、自己資金がある場合にはそれも加えて最終的な予算を決めていきます。ただし、販売現場では当初の返済額を安く抑えられる『変動金利』で算出されることがほとんど。将来的に金利がアップするリスクを考えて、2~3万円の余裕をもっておくと安心です。また、ボーナスが将来にわたり安定してもらえる会社員の場合は、ボーナス併用返済を活用するのもよいでしょう」(平井さん)
要注意! 返済額以外にもかかる月々のお金
住宅ローン返済額を決めても、それさえ払い続ければ住宅を保有できるというわけではありません。見落としがちなのが「管理費」や「修繕積立金」といった月々の諸費用です。
「『管理費』はその名の通り、マンションの管理人さんや管理会社に支払うための費用で、共用部の清掃などにも使われます。
また、マンションは将来の改修のために修繕費を区分所有者全員から集めて積み立てるのが主流です。この『修繕積立金』は築年数が経つにつれて増額されていくのが一般的。その他、住戸の広さやマンションの構造規模によっても異なり、広いほど高くなると思っていてよいでしょう。金額の相場は物件によっても異なりますが、修繕積立金の将来の値上がりを考えると、管理費・修繕積立金を併せて月額4万円ほどみておくとよいでしょう」(平井さん)
つまり、住宅ローンの返済額とは別に管理費や修繕積立金などの支払いも必要になるため、ローン返済額だけで家計ギリギリのシミュレーションにしないよう、算出する場合は気をつけてくださいね。また、修繕積立金はあくまで共用部にかかる費用。専有部の修繕が必要になった場合には、もちろんその金額が別にかかります。
ちなみに、住宅を購入すると気になるのが「固定資産税」と「都市計画税」。購入する物件の立地や面積、築年数にもよりますが、首都圏では年間10万円~30万円ほどを見込んでおく必要があるそう。
世帯年収別! 購入計画の目安
実際に、世帯年収別にみるとどれくらいの金額を借り入れている人が多いのでしょうか?
平井さんによれば、「年収の5倍までが無理なく返せる範囲といわれていますが、実際には6~7倍を借りる人が多い傾向にあります」とのこと。下に、世帯年収ごとのおおよその借入金額と返済額の目安をまとめました。
世帯年収別にみた借入金額・返済額の目安
住居費負担は年収の25%におさまるのが理想的です。管理費・修繕積立金を考えると、ローンの年間返済額は20%くらいまでに抑えておくのが無難でしょう。
ただし、家庭によって生活費などの支出額は異なります。上記の表はあくまでも目安として、子どもの教育費や老後の備えなど、生涯にわたっていくら必要かをシミュレーションしたうえで、長期的な視点で住宅にかけられる費用を検討するのが最も安全な方法です。
ARUHIの借り入れシミュレーションを使って試算すると、より具体的な数値を算出することができます。
自己資金をプラスしよう
自己資金平均は、20代男性で約300万円、30代男性で約600万円
2019年にARUHIで融資を受けた人の統計によると、30代男性では平均年収が約600万円。自己資金は600万円ほどで、そこへ3500万円を借り入れて月々8万2000円の返済をしているというデータがあります。(※ARUHI調べ)
20代の男性は自己資金が平均約300万円であることから、年齢が上がるとともに自己資金の割合も増えていることがわかります。購入時期までに余裕のある方は自己資金を用意しておくのも有効といえそうです。
頭金となる自己資金がなくても物件価格の10割を融資してくれる金融機関もあります。ですが、頭金があると住宅ローンの借り入れも少なくてすみ、結果として返済額が抑えられるので、日々の生活費はゆとりのある生活を送ることができます。
マネープランの見直しを
「よい物件を見つけたけれど、自分たちの借りられそうな目安金額よりも高いかも…」と悩んでいる方は、マネープランの見直しが必要かもしれません。
夫婦のどちらかがパートタイマーであればフルタイムに切り替えることも検討し世帯収入を増やす、または生活費や教育費の見直しで支出を減らすなどの検討も視野にいれましょう。
具体的な見直し方法としては、住宅を購入した場合の一生涯の収入と支出の推移を年次系列に一覧表に表したキャッシュフロー表を作成し家計をマクロ分析すると、老後を迎えた時に貯蓄が残るかそれとも途中で貯蓄が尽きてしまうかがわかります。
貯蓄が残せれば安全な住宅購入といえますが、途中で貯蓄がつきるシミュレーション結果になった場合は、ライフプランの見直しが必要になります。子どもにかける教育費、住居にかける費用、日々のゆとりある暮らしなど、自分達が一番お金をかけたい優先順位がなにかを見極め、それを実現するための道筋を見つけることが重要です。
まとめ
マンション購入時に借りられる金額の目安と、無理のない返済方法についてFPの平井さんにお聞きしました。住宅の取得は大きな買い物ですが家計に応じた無理のない住宅ローン借り入れを検討することは、今後のライフプランを見つめ直すチャンスでもあります。また、可能な限り自己資金を用意しておき、借り入れを少なく済ませることも大切です。
監修:ファイナンシャル・プランナー:平井美穂さん