住宅ローンは年収の何倍で借りた? 無理なく返せる額を解説

マイホーム購入にあたり、現在の年収でいくらくらいの住宅ローンが組めるのか気になる人は多いでしょう。そのときに目安になるのが「年収倍率」です。今回は、年収倍率について解説するとともに、無理なく返済できる住宅ローンを組むための注意点を紹介します。住宅ローンを検討中の人は、ぜひ参考にしてください。

年収倍率とは

年収倍率とは、住宅の購入価額が年収の何倍になるのかを表す数値です。金融機関の融資判断に用いられるもので、一般的には年収の4~5倍程度といわれています。

ただし、適切な住宅ローンの借入額は、住宅ローン以外のローン利用状況、それぞれのライフスタイルによっても異なります。そのため、年収倍率は借入額を決めるときの大体の目安として把握しておきましょう。

住宅ローンの年収倍率の平均

では、これまでに住宅を購入した人は、どのくらいの年収倍率で住宅ローンを組んだのでしょうか。ここでは、住宅金融支援機構が公表するデータから、2022年度の【フラット35】利用者の年収倍率平均を紹介します。

出典:2022年度 フラット35利用者調査|住宅金融支援機構

あくまで平均ですが、年収倍率は全体的に上昇傾向にあります。新築物件では、戸建・マンションともに7倍近くから7倍を超える年収倍率になっていることが分かりました。

理想的な住宅ローンの年収倍率

年収倍率の目安は4~6倍とお伝えしましたが、実際には明確な基準があるわけではありません。金融機関では「返済の見込みがある」と判断すれば融資を実行するため、結果として8倍や10倍になるケースもあります。

しかしながら、確実に返済を続けるには、少なめに抑えておいたほうがよいでしょう。年収が同じでも、家族構成やライフスタイルによって家計の状況が異なります。計算で用いる年収は「総支給額」ですが、税金や社会保険料などを控除した「手取り額」で計算して5~6倍程度に抑えるのが理想です。

住宅の金額や借入金額を決めるのは年収倍率だけではない

年収倍率は一つの目安であり、実際の借入金額を決めるものではありません。ここでは、借入金額を考えるときに注意したい3つのポイントについて解説します。

頭金の有無
日本では低金利が長く続いているため、頭金ゼロで住宅ローンを組む人も少なくありません。しかし、頭金を入れて借入額を少なく抑えれば、総返済額を減らしたり、月々の返済額を抑えたりするメリットがあります。頭金を多く用意できるのであれば、一般の年収倍率よりも高い住宅を購入できる可能性もあるでしょう。

返済負担率
返済負担率(返済比率)は年収に占める年間返済額の割合で、次の計算式で算出します。年間返済額は、自動車ローンや教育費ローンなど住宅ローン以外の返済を含んだ金額です。

返済負担率(%)=ローンの年間返済額÷年収×100

返済負担率の基準は金融機関によって異なりますが、基準を超える場合は希望する金額を借りられなかったり、住宅ローンの利用そのものを断られたりする可能性があります。

ちなみに、全期間固定金利型の住宅ローン【フラット35】では「年収400万円未満の場合は30%、年収400万円以上は35%」という基準があり、それを超える返済負担率になると利用できません。

ただし、余裕をもって返済することを考えるのであれば、返済負担率は「20~25%以下」に抑えるのが理想です。借入金額に対して返済負担率25%になる年収を、ARUHIの住宅ローンシミュレーションで試算してみましょう。

【条件】
・借入は住宅ローンのみ
・頭金なし、ボーナス返済なし
・借入期間:35年
・返済方法:元利均等
・団信:加入なし
・金利:1.78%(2024年3月の実行金利)

ここでは「年間返済額=毎月返済額×12」「年収=年間返済額×4」で計算しました。頭金やボーナス返済の有無、金利などによって計算結果は変わるので、シミュレーションツールで試してみてください。

家計や今後のライフプラン
必要な支出は家庭ごとに異なります。年収に対して平均的な借入額だとしても、支出が多い家庭では返済負担が大きく、無理が生じるかもしれません。

賃貸から持ち家になる場合は住宅ローンの返済だけでなく、これまでには支払う必要がなかった固定資産税や修繕費などの支出が増えることに注意が必要です。そのほかにも、子どもの教育費や老後の生活資金なども計画的に貯蓄しなくてはなりません。

今後のライフプランをしっかり考えて、無理のない返済が続けられるかどうかを慎重に考えることが大切です。

住宅ローン利用者は年収倍率を気にしている?

すでに住宅を購入した人は、住宅ローンを組むときに年収倍率を考慮したのでしょうか。2020年にARUHIが行ったアンケート調査では、100人中63人が「考えた」と回答しています。年収倍率を意識して住宅ローンを組んだ人の声を一部紹介します。

【年収の2倍~3倍】
・2.8倍くらい。実際にシミュレーションを出してくれた不動産会社にはコンサルタントもいたので相談でき、安心しました。(40代/女性/パート・アルバイト)

【年収の3倍~5倍】
・5倍です。頭金がしっかりとあったのでこのくらいあれば十分であると思いました。(30代/男性/正社員)

【年収の6倍~7倍】
・7倍ほどだった。35年ローンを組み、月々7万円ほどなら返していけた。(30代/男性/正社員)

【8倍以上】
・住宅ローンの借入額は当時の年収の約10倍だったが、住宅購入と同時にファイナンシャルプランナーと今後の生活プランを相談し、無理のない範囲で決定した。(30代/男性/正社員)

一方、年収倍率を意識せずに住宅ローンを組んだ人からは、「いろいろなことを考えると思い切って住宅を買うことができなくなりそう」「銀行の審査に通ったので問題ないと思いました」などの声がありました。

無理なく返済できる住宅ローンを組むためには

住宅ローンの借入金額を考えるには、年収倍率や返済負担率などのチェックポイントがあります。それらを踏まえ、無理なく返済できる住宅ローンを組むために気をつけたいことを2点紹介します。

借入期間は長めに設定する
毎月の返済額を減らすためには、借入期間は長めに設定しましょう。返済途中で借入期間を延ばすには、再度審査を受けて借り換えをするなどの手間がかかるため、最初から長めにしておくことがおすすめです。

ただし、借入期間が長くなるほど利息の支払いが増え、総返済額は多くなります。なるべく利息分の負担を軽くするためには、家計に余裕があるときに少しずつ繰り上げ返済をして、借入期間を短縮させることも検討してみてください。

予算を守って物件を探す
住宅選びをしていると目が肥えてしまい、予算を超えたものが欲しくなってしまいがちです。このときに「少し無理をすれば購入できる」という考え方はおすすめできません。住宅ローンの返済は長期にわたります。途中で収入が減っても返済が続けられるよう、「予算を超えたら購入しない」という固い意志が必要です。

まとめ

年収倍率は物件購入価額が年収の何倍になるのかを表す数値で、一般的には4~6倍が理想とされていますが、実際には2倍から8倍以上と人によってまちまちです。

年収倍率を基準にすると希望する住宅が購入できないという場合は、頭金をプラスするとよいでしょう。大切なことは、無理のない範囲で返済していけるかどうかです。自分に合った借入額をしっかり計算するようにしましょう。

(最終更新日:2024.04.23)
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