日本の食文化の最先端では、3Dプリンティングやレーザーカッティングに細胞培養技術などを合わせたお寿司(寿司シンギュラリティ東京、2020年オープン予定)や、1食で1日に必要な栄養素の3分の1を摂れる完全栄養食の主食(ベースフード)などが注目を集めています。また、少子化が進んでいるにもかかわらずマーケットが拡大しているベビーフードも大きな話題となっています。今回は、なぜ、いま、ベビーフードが人気なのかを深掘りしていきます。
‟手抜き“から離乳食作りの‟見本”に!
いま市販のベビーフードへの抵抗感は急速に薄れつつあります。外出時に便利、衛生面で安心、荷物がかさばらないといった理由から、活用する親が増えてきているのです。
2019年、厚生労働省が12年ぶりに発表した「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)」には、旧来の常識からは考えられないようなコラムが盛り込まれました。それは「ベビーフードを活用する際の留意点について」というものです。その中で、ベビーフードの利点として、次の3つが挙げられています。
1.単品で用いる他に、手作りの離乳食と併用すると、食品数、調理形態も豊かになる
2.月齢に合わせて粘度、固さ、粒の大きさなどが調整されているので、離乳食を手作りする場合の見本となる
3.製品の外箱等に離乳食メニューが提案されているものもあり、離乳食の取り合わせの参考になる
このように、国の指針にベビーフードの活用を前向きに捉える考え方が盛り込まれるのは画期的なこと。背景には、同ガイドの、「(いまどきの親は)成長過程において子育てを自然に学ぶ機会が少なく、多くの親にとって、初めての育児、初めての授乳や離乳といったように全てが初めての体験であることが推察される」という考え方があるようです※。
いわば、これまで‟手抜き“という後ろめたさがつきまとっていた市販のベビーフードの活用に、国からのお墨付きが出たわけですから、子育てママやパパもひと安心ですね。
市販のベビーフードの利用率は85%!
2019年度に17年連続でベビーフード売り上げ№1(株式会社インテージ調べ)に輝いたWAKODOを手掛ける、アサヒグループ食品 ベビー&ヘルス事業本部 ベビー&ヘルスケアマーケティング部 担当課長の高橋愛子さんに、ベビーフード人気の秘密について伺いました。
「いま、女性の就業率はこれまでにないほど高くなり、働きながら子育てをするお母さんが増えています。さらに女性のライフスタイルの変化により、子どもと外出するアクティブなお母さんも多く、離乳食作りに時間をかけるより子どもと一緒に過ごす時間を優先したいと考える人が増加傾向にあるようです」
実際、同社調べによるとベビーフードの使用率は85%にも上り、そのうち週3回以上活用する人は37%もいることが判明しています。特に週末の利用頻度が高く、おでかけの時や、夫や両親に子どもを預ける際に活用するケースも多いといいます。市販のベビーフードは、誰でも気軽に育児参加できるツールのひとつとして、いまや大きな役割を担うようになっているわけです。
手軽さと豊富な種類、栄養バランスの良さで信頼度アップ!
日本ベビーフード協議会の生産統計によると、2018年の生産量は重量ベースで対前年比113.2%、金額ベースでも112%の伸びを記録しています。特に、ドライタイプの主食は金額ベースで134.3%、ウエットタイプのおかず・スープは118.6%と大きく伸張しています。
WAKODOでも、2018年度の売り上げは前年度比106%と堅調な伸びを示しているそうです。
「離乳食の手作りについては悩みを抱えている人も多い。その理由は手作りだと同じ食材やメニューが同じようなものに偏りがちになったり、子どもの月齢に合わせた食材の大きさや固さ、味付けの濃さなど、わからないことだらけだったりするからでしょう。その点、ベビーフードを使えば、食材の大きさや固さ、味付けを参考にできる上、いろいろな食材やメニューを体験できます」(高橋さん)
WAKODOの商品は、ライフスタイルの変化に寄り添った開発や改良を重ねているのが特長です。例えば、ランチボックスタイプの商品にスプーンが付いているのは同社の商品のみ。これは、おでかけの際に忘れがちなスプーンを付けることで、外出準備の手間を軽減してくれる細やかな配慮です。また、1歳頃から食べられる幼児向けのシリアルがあるのも同社だけだといいます。
「忙しい朝に、お母さんと同じものを食べたいお子さんの気持ちを満たしたり、離乳後に不足したり偏りがちになったり野菜や鉄などの栄養素を補なったりすることもできます。また、手づかみで食べたり、自分で食べたりする練習にもなります」(高橋さん)
グローバルに活躍する味覚を育てる! 「WAKODO GLOBAL」
昨秋発売し、好調な売れ行きを見せている新シリーズに「WAKODO GLOBAL」があります。月齢7~12ヶ月以降の離乳期の乳幼児向け商品で、全9品で30種類の食材体験ができるそうです。食材のバラエティは、鶏レバー・たら・しらす・いわし・鯛などの動物性たんぱく質から、小松菜・インゲン・マイタケ・カリフフラワーなどの野菜、そして、米・うどん・マカロニといった炭水化物など。使ったことのない食材は、子育て中でなくても手を出しにくいものです。でも、同シリーズを活用すれば、離乳期から味覚を広げることができそうです。
「弊社のベビーフードの中でも他のシリーズに比べ、少し価格帯は高めなのですが、おかげさまでご好評いただいております。食への関心が高い方々に手に取っていただけているようです」(高橋さん)
まとめ
コンビニに小袋入り総菜や小分けの冷凍食品が並び、スーパーで手軽に使えるミールキットがいつでも買える時代。日進月歩で進化している便利な市販のベビーフードを活用しない手はありません。いまやベビーフードのバリエーションは、レトルト食品より多いのではないかと思うほど。今後も、どんなふうに進化していくのか楽しみです。