地震や大雨、台風など、近年は日本各地で大きな災害が続いています。被害を伝えるニュースを見て、「私の家は大丈夫?」と不安になる方も多いのではないでしょうか。
実は、それを知る手がかりのひとつとなり得るのが地名です。地名の由来を知ることで意外な歴史や事実を知るきっかけになるかもしれません。
なぜ地名でわかる?
私たちが暮らしている場所には、長い歴史の中で何度も天災に遭っている土地があります。先人は災害にちなんだ名前をつけることによって、後世に危険を伝えようとしてきたといわれているのです。たとえば、水にちなんだ名前なら水害、蛇がつく地名は土砂崩れなどがそのひとつ。
もちろん災害に無関係な由来を持つ場合もあるので一概に危ないとは言い切れません。
由来の調べ方
地名の由来を調べるにはいくつか方法があります。たとえば、近くの図書館や市役所の資料室。地誌や地名の由来に関する資料が揃っているほか、地名のルーツを解説した雑学本や歴史書なども多くあります。また、専門機関やウェブサイトなどの情報を紹介する国会図書館のリサーチ・ナビなどを使ってネットで検索するのもひとつです。
ただし地名の由来には諸説ある場合も少なくありません。いくつかの文献と比較しながら、それぞれ参考理解を深めましょう。
では具体的に由来がある地名とはどのような字をさすのでしょうか。「地形」に注目して例をあげてみます。
地形由来の漢字例
その1…「窪」
「窪」とは、地面のへこんだところを意味する言葉。地面が他の場所より低いとすると、当然水が溜まりやすくなります。転じて、「窪」がつく地名は地盤が弱く、土砂崩れや地滑りの可能性が高い場所といわれています。
その2…「谷」
「谷」とは山と山の間の地形のこと。隣り合う土地より低い場所であり、川が流れていた痕跡と見る場合も。現在も低地で、雨が降ると冠水してしまうなど、水害に遭いやすいエリアかもしれません。
その3…「梅」
「梅」という字は「埋」に由来し、かつて土砂崩れで埋まった土地だったり、田畑を開墾する際に人工的に埋め立てたりした土地を意味することも。埋立地は総じて地盤の良くない場所とされ、液状化などの問題も考えられます。ほかに、「宇目」「馬」などで表されることもあります。
その4…「倉」
岩盤の露出している崖や崩壊地を示すことがあります。そのほか、「蔵」や「暗」などと表記される場合も。
その5…「平」
「田井」や「台」などとされる場合もありますが、河川周辺で段丘上の平地である可能性があります。「平」は、山間部の地すべりによって形成された緩斜面の場所に使われるケースも。
(参照:東京都地質業協会技術委員会編(2006)技術ノートNo.39特集:東京の地名と地形)
地名が途中で変わってしまうケースも
長い歴史の中で地名が変わってしまった場所も少なくありません。近年では、土地開発や地区の合併、または縁起が悪いといった理由でかつての名称が変えられたケースも存在します。
では、地名が変更されているかどうかを見分ける方法はあるのでしょうか? たとえば、ニュータウンや新興住宅地。「~が丘」や「~台」だったり、「希望」や「光」のような明るいイメージの単語が使われていたりしませんか? これらは新しく名付けられた可能性が高い地名。最寄りの役所や図書館などで新しく名付けられる前の古い地名を調べてみると、意外な歴史がわかるかもしれません。
反対に、比較的災害に強いといわれる土地も存在します。たとえば古い神社やお寺がある場所。人々の心の拠り所として大切にされてきた神社やお寺は、水害に遭いにくい高台や地盤のしっかりした場所に建てられました。同様に古墳や遺跡のある場所も、今に至るまで大きな災害に遭わず歴史が受け継がれてきた場所といえるでしょう。
防災・減災につながる「知ること」の大切さ
以上のように、普段暮らしている街の地名に込められた意味を知ることで、自分がどのような地形に住んでいるのか理解することができます。
とはいえ、命名されてから相当の時間が経っている現代において、地名の由来が災害に直結するとも限りません。
現代において住まいの災害リスクを知る一番の手引きは自治体が発行している「ハザードマップ」でしょう。このハザードマップは地形や地質をベースに作成されているわけですから、当然地名の由来とリンクしてくるはずです。過去の災害の記憶を記録しているという意味では「地名」も「ハザードマップ」も地域のリスクを知る資料です。
東日本大震災や関東大震災をはじめとして、過去に甚大な被害をもたらした自然災害を振り返るタイミングは1年の中で何回かあるでしょう。これを機に、地名の由来を調べてみて、さらにハザードマップと照らし合わせると、「なるほど!」「そういうことだったのか!」と思いがけない発見があるかもしれません。
その発見が、いざという時の備えにつながれば、一人ひとりの防災・減災につながってゆくのではないでしょうか。