リフォーム工事をお願いしたら、契約書の内容と実際の材料が違っていた、注文した設備の品番が違っていた、ということがあるとせっかくのリフォームもだいなしになってしまいますね。こんな時、注文者を守ってくれる民法が2020年4月1日から改正されます。
今までの「瑕疵(かし)担保責任」が「契約不適合責任」という少しだけわかりやすい言葉に変わり、注文者と請負人の責任の内容が変わります。具体的に何がどう変わるのか、確認しておきましょう。
そもそもリフォームにおける瑕疵担保責任とは
現行民法のリフォームにおける「瑕疵」とは、工事の結果が契約の内容と違っていた、通常期待する品質、性能が備わっていなかった、といった注文した人が予期するような状態や性質が欠けている状態です。注文したクロスと違う品質のものが貼られたといった内装工事から、防水工事をしたのに雨漏りがする、耐震工事をしたのに一定の基準を満たさないなど構造上の欠陥も瑕疵にあたります。
リフォームに瑕疵があった場合、補修や損害賠償など請負人(リフォーム業者)が負う責任を瑕疵担保責任といいます。瑕疵担保責任は工事完了時に瑕疵があることが要件となります。また、無過失責任ですので、請負人は工事にミスがなかったとしても一定期間は不具合を補修しなくてはなりません。
通常の内装工事の不具合で、注文者が請負人に修理などの請求を行える期間は「工事が完了したとき」から1年以内です。例外として建物の構造上主要な部分や雨水を防止する部分などは5年間といった規定もあり、要件を満たせば最高10年まで延長できるとなっています。しかし、一般的には内装工事であれば1年以内、耐震構造や雨漏りなど重要な構造に関わる部分は5年が請求期間です。
瑕疵担保責任で注文者が請負人に行える請求は大きく3つあります。
1.修補請求権
工事に瑕疵があったとき注文者は請負人に修理・補修を求めることができます。ただし、瑕疵が重要ではなく補修に過大な費用がかかるときは請求できず、損害賠償を請求することになります。どこまでが重要な瑕疵でどこからが過大な費用かなど、ケースバイケースですので弁護士など専門家への相談が必要でしょう。
2.損害賠償請求権
はじめから損害賠償だけを請求することもできますし、補修を行ってもなお損害があるときは、補修と損害賠償の両方を請求できます。
3.解除権
瑕疵によって工事の目的が達成できないときに限って契約を解除することができます。ただし、「建物その他の土地の工作物」については解除できません。通常リフォーム工事は建物内の内装や設備工事が主であるため、ほとんどの工事は解除できると考えられます。しかし、建物の増築などは解除できない場合もあると考えられます。
また、注文者側が材料を用意した場合や工事に指示を出した場合は3つすべての請求権がなくなります。ただし請負人が不適当と知って何も言わなかった場合はこの限りではありません。
新民法の「契約不適合責任」でどう変わる?
4月1日から施行される新民法では「瑕疵」という言葉はなくなり、「契約不適合」という言葉に変わります。「契約不適合責任」は「契約した内容と適合していない工事に責任が生じる」ということです。注文した材質と違う床材が貼られた、設備の色が違ったなど欠陥ではないが、社会常識の範囲内で「注文者の期待した工事」とは違う結果になった場合、請負人は「契約不適合責任」を負います。
リフォームにおける現行民法の瑕疵担保責任と新民法での契約不適合責任の違いを4つにまとめてみました。
1.請負人の責任が無過失責任から「過失責任」に変わる
注文者が請負人の過失を証明します。口約束でも契約にはなりますが、言った、言わないはトラブルの元です。請負契約書や品番などが記載されている発注書、見積書を保管して、内容と異なることを証明できるようにしておきましょう。
2.「過分な費用がかかる場合」注文した人は補修や損害賠償を請求できなくなる
現行民法では重要な瑕疵であれば、どんなに費用がかかっても請負人は補修の義務がありました。しかし近年では、技術の進歩で高額な費用をかければ補修ができる場合も想定できるようになり、新民法では「過分な費用がかかる場合」、注文者は補修や損害賠償を請求できなくなります。「過分な費用がかかる場合」の判断は今後の裁判による判例が待たれるところです。
3.注文者が請負人にできる請求の範囲が広がる
現行民法では補修と損害賠償請求と契約解除の3つでしたが、新民法では履行の追完請求と代金減殺請求が加わります。つまり、別の工事で代替したり、値引きで欠陥を相殺できるようになります。
また、現行民法では補修を請求せず、いきなり損害賠償請求を行うことができました。新民法では以下のいずれかに当てはまる場合のみ損害賠償を請求できる、となります。
1.補修ができないとき
2.請負人が補修を拒絶したとき
3.契約が解除されたとき
いきなり損害賠償請求ではなく、補修をお願いしてもできない場合や、補修を拒絶されてはじめて損害賠償請求ができます。
4.工事の種類にかかわらず、欠陥を見つけてから1年以内に通知をすれば上記3の請求ができるようになる
現行民法では工事完了から1年でしたので、注文者から見ると期間が延びた形になります。また、欠陥の立証は注文者が行わなくてはなりませんでしたが、新民法では欠陥を発見したときに通知をすれば請求できるようになります。
以上4つの変更点をまとめると以下のようになります。
法律は変わっても実際の運用はこれから
新民法では請負人の責任が無過失から過失責任になり、重大で過大な費用がかかる欠陥については請求できないなど、注文者に不利な内容になっているようにも見えます。
しかし、実際の法律の運用は4月1日以降です。過失の証明や、重大で過大な費用がかかる欠陥とはどのような欠陥なのか、今後の事例や判例の蓄積を見守っていくことになります
逆に、請求できる期間や請求内容については範囲が広がります。たとえばクロスの貼り方が雑で剥がれてきてしまう、フローリングが汚されていた、といった場合、現行民法の「瑕疵担保責任」では請負人の責任が重いだけに、裁判での判断も注文者に厳しくなる傾向がありました。しかし、新民法では小さな不具合や、製品をまちがったなどの事例でも、代替工事や代金の値引きもできるようになることで、請求の選択肢が増えることで、注文者は請求しやすく、請負人も応えやすくなるのではないでしょうか。
新民法では請負人の過失を注文者が立証することになります。過失を証明するためには契約書の内容チェックや、見積書、発注書での品番確認が重要です。リフォーム時には決めなくてはいけないことも多く、つい契約書を事前に読み込み、品番を確認するといった作業を怠りがちです。しかし、注文者も満足し請負人も安心して施行できるようにするためには、契約するまでのステップがより大切になっていくでしょう。
新民法は4月1日以降の請負契約について適用されます。まだ「契約不適合責任」が具体的にどの範囲まで適用されるのかはこれからです。リフォームを考えたら、そのときにもう一度最新の情報を確認して、施工後にトラブルにならないよう準備しましょう。
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参考サイト
リフォームネット
国交省 瑕疵担保責任履行制度における民法改正への対応について
一般社団法人住宅リフォーム推進協議会