経済産業省は、2018年4月に発表した「キャッシュレス・ビジョン」において、「2025年までにキャッシュレス決済比率40%を実現する」と宣言。2019年10月の消費税引上げ時には、「キャッシュレス・消費者還元事業」をスタートさせ、一層の普及推進をはかっています。今後、消費者心理はどう動き、キャッシュレス決済は、市場規模をどう広げていくでしょうか。
日本クレジット協会(JCCA)が、株式会社野村総合研究所の協力で実施した、消費実態調査「キャッシュレス社会実現に向けた消費実態の客観的把握」から、キャッシュレス決済の実態と将来性を探りました。(以下、JCCA調べ)
キャッシュレス決済の成長余地は73兆円
今回の消費実態調査「キャッシュレス社会実現に向けた消費実態の客観的把握」では、「店舗での支払」シーンにおいて57%が現金決済をしていることが判明。さらに「EC」では12%が、「定期的な支払」では7%が現金決済を選択しており、合計で年間決済総額の38%、約73兆円が、今後キャッシュレス決済の成長する余地であると考えられます。特に店舗においてのさらなるキャッシュレス決済普及と進展に、キャッシュレス社会実現がかかっているといえるでしょう。
なお、家計消費調査から見るキャッシュレス、現金決済の額とその比率は表の通りです。
キャッシュレス派でも、現金派でもない「使い分け派」が4割存在
次に、「キャッシュレスツール利用の選考」のアンケート結果を見てみましょう。キャッシュレスツール利用の傾向として、キッシュレス派(24%)でも現金派(36%)でもない、両方の使い分け派が40%も存在していることがわかりました。
この使い分け派は、「普段は現金で支払うが、特定の店や特定の商品にだけキャッシュレスツールを利用する」という「使えるのに使わない」という消費行動をとる層です。なぜ、こうした使い分け決済を行うのか、消費者の声を聞いてみましょう。
「財布のカード類を少なくしたい」
「最も重視することは、『お得』ではない」
「後払いはなるべくしたくない」
「多くのお札を持ち歩くことに抵抗はない」
「支払履歴がデータ化されるのに抵抗がある」 ※一部抜粋
「使い分け派」を動かす付加価値をいかに提供するかがキャッシュレス決済普及のカギ
今後、使い分け派はキャッシュレス派へと転化するでしょうか。そのためには、現金決済を上回る付加価値の提供や、さらなる技術革新、消費者ニーズを捉えた環境づくりとその周知が必要でしょう。より安全に・より安心に・より簡単に・より便利に。経済産業省が推進する「キャッシュレス・消費者還元事業」は、2020年6月で終了します。しかし、それはキャッシュレス社会構築の動向を注視し、一人ひとりがより良い消費行動を選択する、はじまりでもあるはずです。
【調査概要】
調査目的:キャッシュレス社会実現に向けた消費実態の客観的把握査
調査時期:2019年7月
調査地域:全国
有効回答者数:1,000サンプル
調査対象者:20才以上の個人
家計消費支出明細データ数:21,303件
ニュース提供元: PRTIMES
情報提供元:日本クレジットカード協会