【データで見る】2020年の「花粉症」に関する環境はどうなっている?

寒い日が続いていますが、心なしか夕方の暗くなる時間が少しずつ遅くなっている気がします。あと1ヶ月もすると、徐々に春を感じる場面も少しずつ出てくるでしょう。春に向かって気温が暖かくなってくると、気持ちも明るくなるという人も多いかと思いますが、一方でそれを心から歓迎できない人もいるでしょう。そう、花粉症の人です。今回は今年の花粉症に関する環境についてデータを見ていきましょう。

3人に1人が花粉症? 現状を学ぼう

そもそも、花粉症とはどのような疾患なのでしょうか。環境省の『花粉症環境保健マニュアル 2019』には、「花粉症は体内に入った花粉に対して人間の身体が起こす抗原抗体反応」と書いてあります。人の鼻や目は異物が侵入してくると、その異物を無害化しようとして反応を示します。この際、反応の結果としてくしゃみや鼻水、目のかゆみなどを引き起こします。この反応が花粉症によるアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎の原因です。

日本では1960年代にブタクサ花粉症が報告され、次いでスギ花粉症、イネ科の花粉症などが続々と報告されるようになり、年々増加傾向にあります。

花粉症についての統計や調査データは、一般的な経済指標に比べると少ないのですが、2008年に1万人を対象にして行われた鼻アレルギーの全国疫学調査によれば、花粉症の有病率は29.8%ということでした。1998年の同調査の結果から比べると約10%も有病率が上がっていることを考えると、10年間での上昇率を一定と仮定すると2020年現在では4割近い人が花粉症に悩まされているかもしれません。

実際、東京都の福祉保健局が2017年の12月に発表した『花粉症患者実態調査報告書』によれば、東京都内におけるスギ花粉症有症率は48.8%と推定されています。つまり、東京都内に限れば、約2人に1人は花粉症に悩まされていることになります。同調査の結果は第4回のものであり、過去の有病率を見ていくと、第1回調査時(昭和58~62年度)の推定有病率は10.0%、第2回調査時(平成8年度)は19.4%、第3回調査時(平成18年度)は28.2%となっており、年を追うごとに状況が悪化していることが分かります。

前年の夏が花粉症の厳しさを占う

データ上は毎年悪化しているように見えますが、実際には「今年はあまりヒドくない」や「今年はキツい」など、年によって花粉症の程度に差がある気はしませんか? 実は花粉症の苦しさは前年の夏の日照時間に大きな影響を受けるようです。
花粉症がヒドい時というのは、当然ですが花粉の飛散量が多い時です。花粉を飛散させる植物の育成には前年の夏(6~8月)の気象条件が大きな影響を与えます。気象条件とは気温や日照時間、降雨量などを指しますが、花粉を飛散させる花芽は夏の中でも早い時期、つまり6~7月の日照時間に一番の影響を受けるようです。

6~7月の日照時間が、花粉の飛散量に大きな影響を与えます

この知識を基に考えると、暑くて天気がいい夏は休暇としては最高ですが、一方で翌年の春には厳しい花粉症が待っている可能性があるということですね。なんとも皮肉なものです。

今年の花粉症はどうなるの?

それでは、今年の花粉症が例年に比べてどうなるのか、実際に日照時間のデータを見て推察してみましょう。
気象庁のウェブサイトでは気温や日照時間、降水量などのデータを年ごとに時系列でダウンロードすることが可能です。ここでは、主要8都市の夏期(6~7月)の平均日照時間(月合計値)を1999年から2019年まで21年分見てみましょう。

主要8都市の平均日照時間(6月~7月)
出所:気象庁のデータを基に株式会社マネネが作成
注:主要8都市は東京、大阪、名古屋、札幌、仙台、広島、福岡、那覇

2019年は2018年に比べて23.1%減となり、ここ数年では一番日照時間が短くなっています。たしかに振り返ってみれば、昨年の6月は関東から北日本にかけて雨が多く、7月は全国的に記録的な冷夏となっていました。東北南部から九州にかけての日照時間は過去10年で最も短くなりました。

データを見る限りでは、今年の春は例年よりは花粉症に悩まされなくてすみそうな気がしますね。日本気象協会が発表している『2020年 春の花粉飛散予測(第3報)』によれば、花粉の飛散量は広い範囲で例年より少なく、九州では非常に少ない見込みということで、上図のデータから推察した結果と符合します。花粉シーズンは2月上旬からで、九州や四国、東海、関東の一部からスタートし、東京の花粉飛散のピークは2月下旬から3月下旬ということです。

どうやって対策すればいい?

今年の花粉症は例年よりはマシだろうといいましたが、それでも予測されている飛散量は、花粉症の症状を引き起こさせるのには十分な量ということです。それでは、どのようにして対策すればいいのでしょうか? 先の『花粉症環境保健マニュアル2019』によれば、最近は初期療法といって、花粉の飛散開始前または症状のごく軽い時期から薬物を予防的に服用することで、症状の発現を遅らせたり、症状を軽くしたりする方法が多くなっているようです。

また、薬に頼らずとも、花粉症がアレルギー症状ということを考えれば、暴飲暴食は避けて、規則正しい食生活をすることも重要でしょう。服装も花粉が付きにくいツルツルして凹凸のない素材を選んだり、帰宅時に玄関前で花粉を払い落としてから室内に入るのも効果があるようです。

今回は花粉症というテーマで書いてきましたが、花粉症についても統計データを基に分析すれば、今年の花粉の飛散量が多いかどうかなども推察できることが分かりましたね。ぜひ、データを基に分析する習慣を身に付けましょう。

参考:福祉保健局『花粉症患者実態調査報告書』

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