【フラット35】2020年2月の金利予想、中東情勢と金利動向はどうなる?

住宅購入の判断に大いに関係する住宅ローン。不動産や金融についてその業界の人に匹敵する知見をもつ、公認会計士ブロガー千日太郎さんが、連載形式で住宅を買う側・住宅ローンを借りる利用者側の視点で情報発信。2020年2月の住宅ローン金利について世界情勢や国内金融市場にインパクトを与えそうな事柄を踏まえ、解説いただきます。

こんにちはブロガーの千日太郎です。去年の12月には米中貿易協議の進展期待から長期金利が上昇しました。年明けには米国によるイラン司令官殺害、そしてイランからのミサイル攻撃による報復と立て続けに事態が急変し、一時は一触即発の状態にまでなりかけましたが、すぐに両国ともに火消しに動き、事なきを得ています。

戦争リスクが遠のき、マーケットは再びリスクオンの流れがもどりつつある中で2020年2月の【フラット35】金利がどうなるのか? 予想していきます。

中東情勢は長期金利に影響せず横ばい

日本の長期金利の推移

こちらは2020年1月9日までの日本の長期金利の推移をグラフにしたものです。12月までは右肩上がりとなっていて、0%に達したところからほぼ横ばいで推移しています。年明けに発生した米イランの対立時には少し下がっているように見えますが、当時の緊迫感の割にかなり微妙な下落だと言ってよいでしょう。

長期金利推移

結論から言いますと、米VSイランの地政学的リスクは経済面に直接影響を及ぼすことは無さそうです。米VS北朝鮮のときと違い、トランプ大統領の行動パターンに我々が慣れてきているのかもしれませんね。

直近では再び上昇して0%のラインを超えそうですが、このままプラス圏に入っていくかというと、そうはならないでしょう。

日本国債は長い間マイナス金利で取引されてきましたから、それがプラス金利になるというのはリスク回避型の投資家たちにとっては、極めて魅力的な投資対象となります。つまり日本国債の利回りがプラスになれば、たちどころに買いが入って債券価格は上がり、利回りは下がります。

このようにして、いままで0%が天井となり、横ばいが続いているのですね。この傾向はしばらく続くものとわたしは予想しています。つまり、このまま長期金利が0%付近を横ばいで推移していくとなると、【フラット35】の金利も横ばいで推移していくことになります。

長期金利の動向から【フラット35】の金利が予想できる訳

長期金利が横ばいで推移するとなると、なぜ【フラット35】の金利も横ばいで推移すると予想できるのかを解説しておきましょう。

住宅ローンの【フラット35】を融資するのは住宅金融支援機構という国の機関なのですが、わたし達が融資を申し込む窓口については、民間の銀行が代行して行う形をとっています。そして、わたし達が住宅ローンとして借りるお金は、住宅金融支援機構が金融市場から調達して貸しているのです。

典型的な例として「買取型」という【フラット35】のスキームを図にすると以下のようになります。

フラット35の仕組み
フラット35の仕組み

住宅金融支援機構が民間金融機関からフラット35の債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて「機構債」という形で販売するという仕組みになっています。機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家たちは機構債を国が取り扱う安全な債券という考えで購入します。そのため、表面利率は国が発行する債券=10年国債の利回りに連動する傾向があるのです。

民間金融機関は住宅ローンのお金を出しますが、すぐに住宅金融支援機構に債権を買い取ってもらいますので、住宅ローンの金利で儲けるということはありません。民間金融機関は融資事務を代行する手数料で儲けています。

実際の長期金利の推移と【フラット35】金利

長期金利と【フラット35】金利推移を振り返ってみましょう。青い棒グラフ(左の軸)が【フラット35】で、オレンジの折れ線(右の軸)が長期金利です。

【フラット35】と長期金利

【フラット35】の金利は毎月20日ごろに発表される機構債の表面利率によって決まるため、ちょうど20日ごろの長期金利の影響を強く受けます。なので、機構債の表面利率が発表される20日ごろの長期金利がどのくらいの水準になるか?が予想のポイントになります。

長期金利は0%付近を横ばいで推移しています。長期金利が0%ということは、上のグラフで【フラット35】の金利は左の軸で1.3%ということになりますね。多少のブレを想定して1.25%~1.35%の間くらいだと考えておけばいいでしょう。

まとめ~金融情勢が不安定なときには【フラット35】がお勧め

2019年10月から2020年1月までの長期金利の上昇局面において、ずっと【フラット35】の金利上昇が抑えられてきました。

下表は2019年10月~2020年1月までの【フラット35】金利が決まるタイミングの長期金利、機構債の表面利率を並べて各金利の上がり幅を比較したものです。

各金利の上がり幅

長期金利+0.21%上昇に対して、【フラット35】金利は+0.16%の上昇ですから、0.05%も金利上昇が抑制されているのですね。

基本的にマーケットの金利動向は、必ずしも普通に生活しているわたし達の感覚と同じとは限りません。中東があれほど緊迫した状態にあったときに、株価が下がったタイミングを「好機」と捉えて、株を買った投資家がかなりいたのです。だからこそ金利があまり下がらなかったのです。

今後、住宅ローンの実行までの間に、どんな事件が起こりそれに市場がどう反応するのか?正確に予想することはまず無理です。

金融情勢が不安定な今、金利の上昇を緩和してくれている【フラット35】で審査を通しておくことは、高い金利で住宅ローンをかりなければならなくなるリスクから自分を守る保険になると思います。

※本記事は、執筆者の最新情勢を踏まえた知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めておりますが、内容について、弊社が保証するものではございません。

(最終更新日:2020.11.17)
~こんな記事も読まれています~