新年を迎えると、誰もが「今年1年も頑張ろう!」と新鮮な気持ちを持って、新たな目標に向かって歩き出すと思います。筆者が専門とする「お金」に関する目標を持つ人もいるでしょう。しかし、「お金」に関することは、年が変わるタイミングで制度が変更されることが多く、注意が必要です。今回は2020年に変わることについて学びましょう。
2020年から変わる「お金」のルール
「お金」に関することで、毎年のように制度が改正されるものはなんでしょうか。それは税金に関する制度です。
2018年は配偶者控除の改正があり、2019年10月には消費税増税が実施されました。どちらも、私たち個人に大きく影響を及ぼす税制改正になります。既に「サラリーマン増税」として報じられていますが、2020年は私たちにも大きな影響を与える所得税のルールが変わります。今回はこの所得税のルール変更について知ると同時に、税に関することを学んでいきます。
所得税とは、個人の所得にかかってくる税金です。所得とはなんでしょうか? 働いた時にもらえる給料と思っている方もいるかもしれません。しかし、それは所得ではなく収入といいます。収入から、その収入を得るのにかかった費用(経費)を差し引いたものが所得となります。この所得から所得控除とよばれるものを差し引き、そこに所得税率を掛け、税額控除を差し引くことで、所得税額が算出されます。
所得税額 = (所得 - 所得控除)× 所得税率 - 税額控除
この式を見ると、所得控除と税額控除をうまく活用すると、納める所得税額を少なくできることが分かりますね。所得控除とは、病気や子どもの有無など納税者の事情に応じて税金負担の差を調整することで、生活レベルを一定水準以上に保てるようにすることが目的とされています。また、税額控除とは住宅ローンの負担低減や、国内外で二重課税されないようにするためなど、様々な目的があります。
所得税には基礎控除や配偶者控除など全部で14もの種類があります。全てを把握して、しっかりと活用できるかどうか、とても重要です。
今回の税制改正では、まず基礎控除に変更があります。従来は基礎控除の控除額は所得額に関わらず38万円で一定となっていましたが、今回の改正では合計所得金額が2,400万円以下の場合は48万円になります。そこから所得金額が増えるごとに控除額は減っていき、2,500万円を超えると控除額は0円となります。
また、給与所得控除も改正されます。給与所得控除は給与などの収入金額により段階的に設定されています。具体的には下表のように改正されるのですが、全体的には改正前の給与所得控除から控除額が10万円引き下げられることになっています。収入金額が850万円以下の場合は、基礎控除が10万円増加する一方で、給与所得控除が10万円減少するため、実質的には変化がないのですが、収入金額が850万円超の場合は控除額が195万円の上限に抑えられるため、収入金額が多い場合は改正前よりも実質的には税負担が増えることになります。
ただし、収入金額が850万円超の人の税負担のダメージを緩和させるため、新たに「所得金額調整控除」というものが新たに設定されます。以下の条件に該当する場合に適用されます。
・特別障害者に該当する人
・年齢23歳未満の扶養親族がいる人
・特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる人
日本人の金融リテラシーが低いと言われる理由
さて、ここまでに書いてきた内容をすでにご存じの人もいらっしゃるでしょうし、初耳の方もいらっしゃるかもしれません。
日本人の金融リテラシーは海外と比べて低いと言われることが多いですが、その理由の1つが今回の内容が挙げられると考えています。それはつまり、日本人の多くが会社員として働いていますが、会社側が税金や社会保険料を全て差し引いた上で給与を振り込んでくれて、年末調整や確定申告をしない会社員も多いため、実際に税制について知る機会が極端に少ないのです。
筆者は日本で金融教育を普及させるためにマネネという会社を立ち上げていますが、金融教育をする時には必ず税金や社会の仕組みについても話をしています。残念ながら、現在の金融教育は投資や資産運用に比重が偏っている印象がありますが、本来はこのような税金の話もするべきだと考えます。
これもよく話していることですが、金融教育の教材は日常生活にたくさん眠っています。たとえば、会社員であれば毎月給与明細をもらうと思います。普段は捨ててしまっているかもしれませんが、せっかくなので見てみましょう。自分がいくら税金や社会保険料を払い、年末調整や確定申告をするとどうなるのかを調べてみるといいと思います。2020年、まずは金融リテラシー向上の第一歩として、給与明細を確認してみましょう。