国土交通省が5年ごとに実施している「住生活総合調査」によると、2008年~2013年の間に住み替えた世帯のうち「同居・隣居・近居」をした親子の割合は10.6%と、2008年に行った前回調査の5.3%に比べ約2倍に増加しています。同居や近居をすることで子育てや介護体制を整えたいと考える人が増加しているためと考えられます。国土交通省の「若年・子育て世帯、高齢者世帯の現状と論点」によると、子育て世代となる30~40歳代の約60%が3世代同居または近居を理想の住まいと考えていることも分かっています。
そこで今回は、工務店向け業務効率化ソフトを提供するエニワン株式会社が2年以内に二世帯住宅を建てた人を対象に行った「二世帯住宅に関するアンケート調査」から、二世帯住宅のメリットとデメリットについて考えました。
二世帯住宅の3タイプをおさらい。あなたはどのタイプ?
二世帯住宅には以下に説明する部分共有型、完全同居型、完全分離型の3タイプがあります。
・部分共有型…玄関やLDKなど住まいの一部を必要に応じて共有するタイプ
・完全同居型…玄関やLDK、浴室など住まいの多くの部分を共有するタイプ
・完全分離型…玄関から浴室まですべてを分離し、各世帯が完全に独立しているタイプ
本調査で二世帯住宅のタイプを尋ねた質問では、最も多かったのが「部分共有型」43.4%で、「完全同居型」31.3%、「完全分離型」25.2%と続きます。
2年以内に二世帯住宅を建てた人の4割強が、住まいの一部を共有する部分共有型を選んでいることが分かります。
二世帯住宅のメリット・デメリットを紹介
次にそれぞれのタイプのメリットとデメリットを見てみましょう。
・部分共有型
部分共有型を採用した理由を聞いた質問では、「建築費用が抑えられる」が40.0%でトップになりました。次いで「税金の軽減ができるため」22.1%、「距離の近い暮らしができる」18.7%、「何か起きた際に対応できるため」18.5%となっています。玄関やキッチン、お風呂やトイレなどを共有することで、費用を抑えられることがメリットとなっているようです。一方で「お風呂を共有しているため入りたい時間に入れないことがある」(広島県/40代/会社員/女性)といった、共有部分に関するストレスをデメリットも挙げられています。
・完全同居型
完全同居型を採用した理由を尋ねた質問では、以下のような結果になりました。
「建築費用が抑えられる」が44.4%とトップで、「税金の軽減ができるため」が24.0%と続き、こちらも費用面の理由が上位に挙がっています。また、「将来一世帯となる可能性を考えて」18.4%が3位となっており、将来的なことも考えて完全同居型を選択している人も多いといえそうです。デメリットとしては、プライバシーが確保されにくいことと、生活リズムを双方が合わせる必要があることが挙げられ、実際に「プライベート空間があまりなく、たまにストレス…」(青森県/30代/会社員/男性)という声も聞こえてきます。
・完全分離型
世帯ごとの居住スペースを階や棟、壁によって分ける完全分離型を採用した理由を尋ねた質問では、「プライバシーの確保のため」が71.8%と圧倒的に多くなりました。
完全分離型の場合、お互いの様子がすぐ分かる距離にいながらプライバシーを保つことができる点をメリットと考える人が多いようです。また、「税金の軽減ができるため」8.7%が3位となった点に関しては、2013年に相続税の小規模宅地等の特例の範囲が拡大されたことが大きな要因となっていると考えられます。小規模宅地等の特例は土地の相続税評価額を最大80%減額できる制度で、小規模宅地等の特例の適用を受けるためにはいくつかの条件が必要ですが、完全分離型の場合に適用されるケースが多く、相続税対策に有利になる方法として注目されているといえそうです。一方でデメリットとして、それぞれの世帯の共有部分がないため設備費用や光熱費の節約にならない点が挙げられます。
まとめ
一生のうちで最も高い買い物ともいえる住宅購入。「家は3回建てないと満足するものにならない」というものの、実際に3回建てるのは難しいですよね。二世帯住宅のそれぞれのタイプのメリット・デメリットを把握するには、実際に建てた人の声を聞くことが重要なポイントとなりそうです。なるべく後悔のない家づくりをするためにも口コミ情報の活用や完成見学会などに積極的に参加し、経験者の生の声を拾ってみるのがおすすめです。
【調査概要】
調査期間:2019年11月28日(木)〜2019年12月1日(日)
調査方法:インターネット調査
調査人数:1,097人
調査対象:2年以内に二世帯住宅を建てた人(その家族)
モニター提供元:ゼネラルリサーチ