そんなこと言える人が優しくないわけないのだ。ゆうこちゃんはアホだ。
「ねえゆうこちゃん、行かないでよ。どうか行かないで。一緒に居ようよ。
私ゆうこちゃんが好きだよ。お嫁さんにしたいって思うもの。でもできないから、それが歯がゆいの。凄く歯がゆいの。上手く言えないけどさ、でも、いつの日か鈴木さんがゆうこちゃんを拾ったように、その家にまた私が拾われてきたように、今度は私がゆうこちゃんを拾うよ。だからそんな、全てを失ったような顔しないでよ」
私の一世一代の告白に、ゆうこちゃんは驚いたような顔をして俯いた。しばらくしてから顔を上げた時の表情が、本当に美しくて息を呑んだ。
「ごめんね」
何に対して、誰に対して謝ったのかわからない。けれどいい。それでいい。震える小さな手が私の手をぎゅっと掴んで離さない。もうそれだけで何もかもどうでもいい。
いつかわかればそれでいい。
「ARUHIアワード」10月期の優秀作品一覧はこちら ※ページが切り替わらない場合はオリジナルサイトで再度お試しください