これまで不可能といわれてきた食塩水を泥状に凍らせる冷凍技術が開発されたり、発売以来、賛否両論の意見が続出していた液体ミルクが、台風被害の影響で一気に賛成派が優勢になったり…。カット野菜や冷凍フルーツ、チルドや冷凍のミールキットなど、いま、食品業界には、ちょっと前なら考えられなかったような、商品やサービスが次々と登場しています。
劇的な進化をし始めた日本の食文化。大根を干して漬けるタクアンのような手間のかかる料理は家庭から消えつつありますが、その代わり、利便性が高く手軽な新商品や新技術が続々と登場しているのです。その中から、最も身近な食文化の新潮流、食品トレーとベビーフード、そして鮮魚の輸送や保存を革新するハイブリッド冷凍技術について3回にわたってご紹介します。
進む食品トレーのファッション化!?
いま進化の勢いが止まらないのが食品トレーです。食品トレーは、毎年1,500種類以上もの新商品が登場しているってご存じでしたか? 1960年代に登場した当初、食品トレーは白一色が常識でした。1980年代にファッション化が始まり、カラートレー、色柄付きトレーが登場。1990年代に入りコンビニ弁当が普及すると、ラップ包装から蓋付き容器が主流になります。そして2000年代に入ると、食器代わりにそのまま食卓に出せる柄付きのカラフルな食品トレーが登場し、形状も商品に合わせてバラエティ豊かになっていきます。いまや寿司用・刺身用のトレーなどは、高級感がありそのままテーブルに出しても、本物のお皿と遜色ないほどデザイン性が高くなっています。
レンジ仕上げ調理ができる食品トレーが登場!
食品トレー市場の約3割を占めている、食品トレー製造のエフピコ 経営企画室IR広報課 高島裕人さんは、最近の人気傾向について次のように説明してくれました。
「現在の売れ筋商品は、レンジ対応の商品です。お弁当や麺類の容器のようにレンジで温め直せるのはもちろん、生の食材を入れて販売し、レンジで仕上げ調理をするタイプのものが人気です。火を使わずに調理できるため、お年寄りやお子さまでも安心して調理できますし、食べる直前に調理することで野菜のシャキシャキした食感を楽しむこともできます」
熱々の料理でも容器が熱くならない
また、エフピコでは、発泡倍率を高め、同じ容積でもより軽く薄く強度の高いトレーを開発。MFP(マルチFPシート)は、耐熱性に優れた発泡素材容器で耐熱温度110℃。発泡素材のため、レンジ加熱後の底面の温度は容器の中より約30℃軽減され、中の食品が、湯気が立つほど熱々になっていても容器を持つことができるのです。
実は、エコフレンドリーな食品トレー
発泡スチロール製の食品トレーの特性は、軽い・強い・断熱性・耐水性・緩衝性・衛生的・鮮度保持・食品ロスの防止などがあります。また、素材は5~10%のポリスチレン樹脂と90~95%の空気というから驚きです。ほとんどが空気でできているようなもので、実は、石油の使用量を抑えたエコフレンドリーな製品なのです。
さらに、単一素材でできているため製品を材料に戻して再利用するマテリアルリサイクルが可能な上、リサイクルに必要なエネルギー消費が少なく、CO2削減につながるといいます。
またエフピコは、環境における取り組みにも積極的で、2019年3月現在、全国約9,200拠点に発泡スチロール製トレーの回収ボックスを設置し、消費者・スーパー・包材問屋・エフピコによる「エフピコ方式の循環型リサイクル」システムを構築。国内3カ所(広島県福山市・岐阜県輪之内町・茨城県八千代市)にあるリサイクル工場で、リサイクルを行っています。福山リサイクル工場では、現在1日7トン、175万枚のトレーを回収しています。
「現在の回収率は3割程度ですが、今後、回収率を上げていきたいと思っています」(高島さん)
同社では2014年12月に、地上4階、延べ床面積約2,000坪の「エフピコ総合研究所』を開設。約100名で、新素材開発から加工技術・形状技術開発、性能分析評価を行っているといいますから、今後も、独創的で高機能な食品トレーの登場が期待できそうです。