相続で引き継いだ家を、有効活用せずにそのまま持ち続けている人は少なくありません。空き家には街の景観を損ねるなど街づくりに影響がある、防犯上危険な場合がある、建物倒壊などで近隣の住宅や住民に危険を及ぼす可能性があるなどのリスクが潜んでいます。そこで、国は空き家の発生を抑制するための特例措置を設けるなどして対策を講じています。今回は空き家に関する2つの節税対策を紹介します。
空き家に関する3,000万円特別控除
「空き家に関する3,000万円特別控除」は、相続時から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、被相続人の居住していた家屋を相続した相続人が土地を売却した場合、土地の譲渡所得から3,000万円を控除するというものです。この制度は取り壊して土地だけになったものでも控除可能です。また、住宅に耐震性がない場合は耐震リフォームをしたものに限ります。
通常、自宅ではない不動産を売却したときは、譲渡益に対し15~30%の高い所得税率(保有期間により税率は異なります)が課されます。この適用を受けられれば、大きな節税になるでしょう。
適用されるためには、
・相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する
・被相続人が居住していた家である
・1981年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建築物を除く)である
・相続から売却の時までに、事業や賃貸などで利用していない
・耐震性を有する。耐震性のない空き家の場合は耐震リフォームが必要)
などの要件があります。詳しくは国土交通省のホームページで確認ください。
空き家を放っておくと固定資産税が上がる
2015年度税制改正によって、空き家の固定資産税が上がってしまう可能性が出てきました。
現行の住宅用地の固定資産税は、
・小規模住宅用地 (200㎡以下の部分)は固定資産税の課税標準額×1/6
・一般住宅用地 (200㎡を超える部分)は固定資産税の課税標準×1/3
に減額される特例措置がありました。
しかし改正により、適切な管理が行われていない空き家に対して、この特例措置を行政が解除することができるようになりました。空き家の全国的な増加が懸念される中、各市町村はさまざまな空き家対策を打ち出しています。これを支援するという観点から、国はこの措置を決定しました。
※詳しくはこちら
空き家の除却等を促進するための土地に係る固定資産税等に関する所要の措置(固定資産税等)
とはいえ、所有している空き家の維持・管理をきちんと行っていれば、これまで通り節税は可能です。
空き家売却促進のための、さらなる対策も
さらに今後、売却額が500万円以下の土地を対象に、売却益から最大100万円を控除し、節税できる仕組みができる方向です。政府は空き家売却促進のため、2020年度の税制改正大綱に新たな対策を盛り込む予定でいます。
土地を売却する際には、建物の解体費用、仲介手数料、譲渡所得税などの費用がかかり、手間がかかる上、利益はほとんど残らないケースも少なくありません。特に地方は土地の売却価格が低価格になりがちなので、売却をせずにそのまま放置される物件が多くあります。
自己居住物件以外の不動産取引の場合は、特に多額の譲渡所得税がかかります。節税の方法を知っておくことで、納税金額がかなり変わってきますので、ぜひ活用しましょう。