消費税増税対策として実施されている「次世代住宅ポイント」制度。新築は1戸当たり最大35万ポイント(35万円相当)、リフォームなら最大60万ポイント(60万円相当)が付与される嬉しい制度ですが、十分に認知されず、使いこなされていないのが現実のようです。それではあまりにももったいない。改めて、どんな制度なのかシッカリと理解して、確実にポイントをゲットできるようにしておきたいところです。
エコ・長持ち・耐震・バリアフリー住宅が対象
「次世代住宅ポイント」制度は、2019年10月からの消費税増税に対応して創設された制度。増税後の税負担増加を軽減して、増税の影響が出ないようにする対策のひとつで、一定条件を満たす新築住宅の建設・取得には1戸当たり最大35万ポイント(35万円相当)が付与されます。次の1~4のうちいずれかひとつを満たしていればいいので、さほど難しい条件ではありません。新築住宅を取得したり、建設したりする人の多くが利用できるはずです。
1.エコ住宅(断熱等級4または一次エネ等級4を満たす住宅)
2.長持ち住宅(劣化対策等級3かつ維持管理対策等級2等を満たす住宅)
3.耐震住宅(耐震等級2を満たす住宅または免震建築物)
4.バリアフリー住宅(高齢者等配慮対策等級3を満たす住宅)
これらのいずれかに当てはまれば1戸当たり30万ポイントで、それにオプションポイントなどが追加されて、最大では35万ポイントになります。
若い世代のリフォームには最大60万ポイントも
住宅のリフォームもポイントの対象になります。リフォームする部位ごとにポイントが決められていて、それを合算したポイントを取得できる仕組み。1戸当たりの上限は30万ポイントですが、上限特例が設けられていて、40歳未満の若者世帯、18歳未満の子を有する子育て世帯は上限45万ポイントに、加えて既存住宅(中古住宅)の購入を伴う場合は上限60万ポイントに引き上げられます。それ以外の世帯でも、安心R住宅を購入してリフォームする場合には、45万ポイントに引き上げられます。
政府の住宅関連の支援策、少し前までは新築住宅建設や取得促進一辺倒でしたが、近年は、中古住宅やリフォーム市場の拡大を促進する方向に軸足を移しつつあります。そのため、中古住宅を買ってリフォームする場合には、付与されるポイントが新築より多くなっているのです。
しかも、新築は自己居住用の住宅に限定されますが、リフォームは賃貸用の住宅でもOKです。賢い賃貸住宅経営者なら、この機会にリフォームしない手はありません。
用意された予算枠の4%しか消化されていない
しかし、この次世代住宅ポイント、消費税増税に先立って2019年4月からスタートしているのですが、思いのほか消化が進んでいません。図表1にあるように、9月までの申請の累計は2万戸強で、図表2でも分かるように、発行ポイントの累計は約53億ポイントにとどまっているのです。
9月の月間申請件数は7,910戸ですが、国土交通省の『建築着工統計調査』における、同月の新設住宅着工戸数は7万7,915戸ですから、10戸に1戸程度しか次世代住宅ポイントの申請を行っていない計算になります。これは何とももったいない。先にも触れたように、新設住宅なら四つの条件のうちのひとつを満たせばOKですから、もっと対象になる住宅は多いはずです。申請すれば対象になるのに、気づいていないケースも多いのではないでしょうか。
図表1 次世代住宅ポイント申請受付状況
図表2 次世代住宅ポイント発行ポイント数と戸数
予算を残したまま時間切れになるのはもったいない
この制度、2019年度予算による時限措置で、1,300億円の予算が組まれていますが、それに対して発行ポイントは累積で約53億円分ポイントですから、予算枠の4%程度の消化にとどまっていることになります。申請するためには2020年3月末までに着工することが条件なので、このままでは、大幅に予算を残してしまう可能性が高いのではないでしょうか。締切りが近づけば申請が急増するかもしれませんが、その点を考慮しても、これまでのピッチからすれば、予算枠には到達しないように思われます。
予算が残れば、2020年度に継続される可能性もありますが、予算を残したまま予定通りに打ち切られるようなことになれば、実に残念な結果です。
こうした現状に至っている背景には、政府や国土交通省、そして住宅・不動産業界のこの制度に対する消費者への広報戦略が、十分に行き届いていない面もあるのではないでしょうか。実際、この次世代住宅ポイントへの認知度は、まだまだ低い状態にとどまっているようなのです。
四つの施策のなかでは一番認知度が低いのが現実
2019年10月からの消費税増税に当たって、政府は住宅需要、建設の平準化を図るために、四つの住宅取得支援策を実施しました。
図表3にある、住宅ローン減税の控除期間延長、すまい給付金の拡充、住宅取得等資金贈与特例の非課税枠拡充、そしてこの次世代住宅ポイントの四つですが、不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が実施した『不動産情報サイト利用者意識アンケート調査』によると、四つの施策のうち、次世代住宅ポイントへの理解度、認知度が最も低くなっているのです。
住宅ローン減税の控除期間延長については、43.4%の人が理解し、65.8%が認知しているのですが、次世代住宅ポイントは、理解度が25.3%、認知度は52.2%にとどまっています。
これは、消費税増税が実施される前の調査ですから、その後は多少なりとも理解度や認知度が上がっているのではないかとみられますが、実際のポイント申請状況をみる限り、そうともいえないのかもしれません。
図表3 消費税増税対策の住宅取得支援策への理解度
住宅設備から家電、食品までさまざまな商品に交換できる
この次世代住宅ポイント、すまい給付金のような現金での給付ではありませんが、交換できるポイントの対象は幅広く、なかなか魅力的な商品が揃っています。
主なものを挙げると――。
省エネ家電などの家電品、家具、寝具、カーテン、カーペットなどのインテリア製品、キッチン・バス・トイレ用品などの雑貨・日用品、ファッション・小物、工芸品などの地場用品、食料品、飲料・酒類などの食料品・飲料、スポーツ、アウトドア用品などのスポーツ・健康推進関連、さらに、防災・避難用品、福祉介護用品、ベビー・キッズ用品なども対象になっています。
取得したポイントを家電や家具、インテリアなどに交換して、新居での生活を充実させる、また新居への引っ越し祝いに和牛や蟹、ワインなどに交換して食事を楽しむといったことも可能。せっかくの制度なので、フルに活用していただきたいところです。