新元号「令和」に続き天皇陛下のご即位の記念として神社に御朱印をいただきに行くという「御朱印ブーム」が起こっています。しかし神社にお参りをするとき、「どのようにお参りしたらよいか」という作法は意外と知られていないもの。そこで、知っておきたい一般的な礼拝作法やマナーを詳しく紹介していきます。
礼拝の順序
鳥居のくぐり方
神社の鳥居には、一般社会と神域を区切る結界のような意味があるともいわれています。目上の方のお宅を訪問するような気持ちで、一礼してからくぐるのが丁寧なくぐり方です。いくつも鳥居がある神社では全ての鳥居で行う必要はなく、その場合は神社の入り口にあり、神域に邪悪なものが入るのを防ぐ「随神門」で一礼し、入るようにしましょう。
参道の歩き方
神社では参道の中央は神様が通る道「正中」と捉えられており、敬意を表すため、中央は避け、左右いずれかに寄って歩を進めます。参道の中央を横切る場合は、軽く頭を下げ、礼をしながら通るようにします。人の前を横切る際にマナーとして会釈をする要領と同じです。
手水の作法
境内に入ると手水舎があります。お参りをする際に身を清めるという意味で手水を行います。
1. 右手で柄杓(ひしゃく)を持ち、水を汲んで左手にかけます
2. 柄杓を左手に持ち替え、同じように右手を清めます
3. 再度柄杓を右手に持ち替え、左の手のひらに水を受けて口をすすぎます
4. 再度水を左手に流す
5. 最後に水の入った柄杓を立て、柄に水を流し伏せて置きます
慣れないうちはぎこちない動きでも、何度か行ううちに自然な所作が身につきます。
参拝
ご神前まで進んだら、帽子などは取り、バッグなどの手荷物もできれば下に置くなどします。賽銭箱の前に立ったら軽く45度の会釈をし、賽銭箱に賽銭を入れます。このとき注意したいのが決して勢いよく投げないこと。静かに入れるようにします。次に鈴を鳴らしますが、このときも力任せに鳴らすことのないようにしましょう。
1. 深いお辞儀を2回繰り返します。「二礼」
2. 両手を胸の高さで合わせ、右手を少し手前に引くようにして拍手を2回打ちます。「二拍手」
3. 両手をきちんと合わせ心を込めて祈ります
4. 両手をおろし、深いお辞儀をします。「一礼」
5. 軽く会釈をし、できればそのままの姿勢で階段を後ろ向きに降ります。混雑していて難しい場合は軽く体を斜めにして階段を下ります。神様にお尻を向けることのないようにしましょう
お祈りのポイントとしては、いきなり願いごとをするのではなくまず自分の名前、住所、職業などを名乗るのがよいとされています。神様もどこの誰か分からなければ願いを叶えにくいかもしれません。
お参りを終え、境内を出る際も社殿のほうに向き直って一礼するとよいでしょう。
御朱印の頂き方
寺社を訪れ御朱印を頂く人が増えており、「御朱印女子」という言葉も誕生しています。御朱印とは、もともと、写経を奉納したあかしとしてお寺から頂く証書を指していました。現代では、写経を納めなくとも、参拝のしるしとして御朱印を頂くことができます。
御朱印の一番の魅力は、美しい文字で寺社名や本尊名が手書きされていること。昨今では趣向を凝らした御朱印の神社も増え、人気はますます高まっていますが、御朱印をスタンプラリーのように捉えている人も少なくありません。正しい御朱印の頂き方も身に着けておきたいものです。
まずは社務所で「朱印料○○円」を納めます。現時点では神社・お寺問わず「300円」が多く、見開きなどサイズの大きいものや季節ごとの特別御朱印などは500円~1,000円の場合もあります。神社では正式には「初穂料(はつほりょう)」といいます。御朱印帳やお守りの価格も「初穂料」と呼びます。
次に持参した御朱印帳の書いてほしいページを開いて差し出します。カバーや袋などはあらかじめ外しておきましょう。書き終わった御朱印を頂くときは必ず両手で受け取ります。初穂料はできるだけお釣りのないように用意しておくとスマートです。
御朱印NG作法
寺社によっては御朱印をいただけないところもあります。また、社務所の閉まる時間が早く、夕方以降になるといただけない場合もあるでしょう。クレームをつけたり、社務所へ「どうしても御朱印が欲しい」などと無理を言うのもやめましょう。御朱印は、あくまで授かりものであり、お土産や記念スタンプではありません。それを肝に銘じて、スタンプラリーのようにただ集めて回るのを目的にするのは、マナー違反と心得ましょう。なお、大変混雑する神社の中には御朱印帳と引き換えに番号札を渡してくれるところもあります。その場合は先に御朱印帳を出しておき、お参りを済ませてから受け取るようにするとスムーズに頂けますよ。
まとめ
日本の長い歴史の中で大切に守られてきた神社。鳥居をくぐり、参道を進み社殿の前に立つと神様の存在が一層身近に感じることができるでしょう。家族の幸せを祈り、神様の恵みを頂くという意味でも正しいマナーを身に着け、お参りするようにしたいですね。
<取材協力>
讃岐国二宮大水上神社 権禰宜 宮本陽子(みやもと・ようこ)さん
古くから水の神様として崇められ、延喜式神名帳に讃岐国二の宮と記載されている「大水上神社」。境内には岩畳をなす宮川が流れています。昼でもうっそうとした社叢の中には、昔から干ばつの時に雨乞い神事が行われた「うなぎ淵」も。拝殿の前の石燈籠、2基の二ノ宮瓦窯跡から古くから祭祀の重要な場所であったことがうかがわれます。
香川県三豊市高瀬町羽方2136-1。さぬき豊中インターから車で約15分。