なぜ預金口座に維持手数料が? 銀行の懐事情をFPが解説します

現在、先進国を中心に世界的な低金利状態になってきています。日本でもマイナス金利の導入から3年半以上が経過し、銀行の業績悪化も懸念されています。今後さらにマイナス金利政策が強化されるなら、預金口座の維持・管理手数料の導入も検討するという大手行幹部のコメントが報じられ、現実味を帯びてきました。今回は、口座維持手数料が導入された場合を想定して、対応策を考えてみることにしましょう。

銀行の収益を圧迫し続けるマイナス金利状態

銀行に預金をしている私たち個人の口座から、維持・管理手数料を徴収することを検討する動きがあるようです。金融庁内ではそれを容認する考えも出てきているようで、将来的に導入される可能性もゼロではないようです。

そもそも、なぜ預金口座にも手数料をかけなければならないのか。なぜそんな状況になっているのか。

理由その1:マイナス金利の長期化で業績が悪化

その理由の一つには、マイナス金利の長期化が挙げられます。それも、ただ長期化しているだけでなく、実質的なマイナス幅が拡大していて、銀行の収益を圧迫し続けているからです。

日本銀行(以下、日銀)は、2016年2月にマイナス金利を導入しました。

このマイナス金利は、一般の銀行が日銀にお金を預けている当座預金のうちの一定金額を超えた部分の金利をマイナス(現在-0.1%)にするという政策でした。すでに導入から3年半以上が経過しています。

導入時の日銀の意図としては、銀行に対して、日銀の当座預金にたくさん預けるのではなく、融資や投資に資金を振り向けて、企業やマーケットにお金をたくさん回してほしい、日銀が掲げているインフレターゲット(=物価上昇率の目標)年2%の早期達成に協力してほしいということだったと思われます。

しかし、現実は日銀の思惑どおりにはなかなか進まず、日銀はさらなる追加対策を打ち出し、日本の金利水準をさらに下げていく方向で進んできています。

その間、銀行の収益はどんどん圧迫されていきました。企業等への融資に適用される貸出金利は下げざるを得ない。預金金利はほぼゼロのまま。銀行の収益源である貸出金利と預金金利の差がどんどん縮小していき、銀行の業績は悪化へ。

日本銀行

理由その2:国債利回り低下で収益難しく

さらに、銀行が余ったお金を運用しようとしても、国債の利回りがどんどん低下していきました。現在は、満期までの残りの期間が10年を超える国債の利回りまでマイナス状態。ただ国債を保有しているだけでは収益を得ることが難しくなってしまったのです(実際には、国債の売買によって収益を得ている場合はあります)。

理由その3:金融商品販売強化も規制

銀行としては、収益確保のためにも投資信託や保険商品の販売による手数料収入の拡大を目指したいところなのでしょうが、強引な販売や不適切な販売に対する監視も強化されていることから、販売強化にあまり力を入れられないという事情も伺えます。

理由その4:預金通帳の印紙税負担が収益圧迫

預金通帳も銀行業界全体では年間数百億円規模の印紙税負担

また、細かい話ではありますが、銀行は、預金者に対して紙の預金通帳を発行している場合、1件あたり年間200円の印紙税を負担しています。銀行業界全体では年間数百億円規模の負担となっていて、銀行の収益圧迫要因の一つにもなっているようです。

このような状況から、消去法的にも浮上してきたのが預金口座の維持・管理手数料の導入です。これには世界的な流れの影響も考えられます。いまや世界の債券市場では、マイナス利回りで取引されている債券が過去最高レベルに増加しているのです。9月には、世界で流通している債券の約4分の1がマイナス利回り状態であると報じられました。

日本と同様のマイナス金利状態が欧米諸国でも起きていて、スイス金融大手のUBSでは、11月から大口の預金口座を対象に年0.75%の手数料を徴収し始めたようです。実際にこのような動きがあると、いずれは日本でも導入されるかもしれないと考えるのが普通でしょう。

実際に導入されたら、条件を確認し、冷静に行動を

では仮に、近い将来、日本で預金口座の維持・管理手数料の制度が導入されたとして、その際はどのように対処すべきか、その対処法を考えておきましょう。

まず最初に調べるべきなのが、各銀行の手数料がかかる条件とその金額です。

おそらく、給与振込口座とか年金受取口座などに指定している口座は、手数料がかからないか、かかったとしても少額であるはずです。また、住宅ローンを利用しているとか、投資信託などを利用している場合も、手数料は安いはずです。なぜなら、それらを利用している人は、その銀行の収益に貢献しているからです。

それから、預入金額によって手数料が異なる可能性も考えられます。一定額以上の預入金額だと手数料が安い(または高い)とか。また、紙の預金通帳の発行の有無でも手数料が違う可能性もあるでしょう(銀行が支払う印紙税の有無の違いがあるため)。

実際に導入されるような動きが明確にならないと何とも言えませんが、当然ながら各銀行によってスタンスは異なるでしょう。ネット銀行では手数料はかからないとか、地方銀行やゆうちょ銀行のほうが手数料は安いなどの差が出てくるかもしれません。現時点でも商品やサービスは各銀行によって異なりますので、賢く利用したい人は、定期的に比較検討することが重要です。いつでも最新情報をゲットできるようにアンテナを張っておきましょう。

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