日本は地震や台風をはじめとした自然災害の多い国です。近年では豪雨も頻発しているため、避難を促すニュースを耳にする機会が増えているのではないでしょうか。しかし、一般的な避難所は、学校の体育館や公民館といった大部屋の場合が多く、滞在にストレスを感じるケースも多いといいます。また、都市部では、大きな災害が発生した場合、大量の避難者を避難所だけでは受け入れきれない可能性も指摘されています。
そのような状況のなか、一般社団法人空き家管理士協会が、災害時の避難所として「空き家」を活用する社会実験を開始しました。現在、社会問題にもなっている、大量の空き家をうまく活用することで、避難所数の増加や、避難生活の改善を目指しているそうです。
避難所が抱える問題とは?
災害時に開設される避難所には、学校の体育館や公民館などが活用されるケースが一般的です。これらの建物は、大勢を受け入れられるというメリットがある一方で、集まった被災者のプライベートを確保しにくく、ストレスを感じる人が多いといわれています。ストレスの多い悪環境下での生活が長く続くと、最悪の場合、死につながる危険性もあるようです。実際に、2016年に発生した熊本地震では、災害そのもので亡くなる直接死よりも、その後の避難生活の環境悪化などを理由とした関連死の方が圧倒的に多く、直接死の4倍程度にのぼっています。
また、人口の多い都市部で大規模災害が発生した場合には、避難所が足りなくなる可能性も考えられます。例えば、2019年10月に発生した台風19号で多摩川流域の住人が避難した際には、都内にある複数の避難所が満員になり、避難者を別の避難所へ移動させるなどの対応が取られたようです。
年々増加している空き家。新たな活用法が求められている!
災害時の避難所が不足している一方で、現在の日本では、使われていない空き家の増加が社会問題となっています。総務省が2019年4月に発表した2018年10月時点の「住宅・土地統計調査」によると、国内の空き家戸数は、過去最多の846万戸に上っています。さらに、国内の住宅総数における空き家の割合も過去最高の13.6%まで上昇しているようです。政府は中古住宅の活用や、老朽化した住宅の撤去を促す政策を導入していますが、空き家の増加には歯止めがかからない状況が続いているため、新たな活用法が求められています。
空き家を避難所に活用する社会実験を開始
これらの社会問題を解消する取り組みとして、一般社団法人空き家管理士協会が空き家を災害時の避難所へ活用することを目指す社会実験を開始しました。空き家を避難所として利用できれば、より多くの人を避難所へ受け入れられるだけでなく、避難時の生活環境が改善され、災害関連死を減らす効果も期待できます。現在このプロジェクトでは、避難所として利用可能な住宅の数や地域などの調査が進められており、集まった情報をもとに、今後は行政と連携しながら避難所の開設が進められる方針です。
避難所は、被災者の生活場所としてではなく、食料の供給場所などとして活用される可能性もあるとのこと。いざという時に利用できるように、今後の進展に注目したいところですね。
ニュース提供元:@press
情報提供元:一般社団法人空き家管理士協会