都市化、産業化が進み、生活が便利になった一方で、現代ならではの疾病“現代病”に悩まされている人がいます。長時間のパソコンやスマートフォン、ゲームなどが原因となる目の疾患や、アレルギーが原因の皮膚疾患など様々な現代病を予防するためにはどのような方法があるのでしょうか。毎日の生活の中に潜む“現代病”の原因や兆候、症状、実際に該当する病気と診断された場合にはどのような治療方法があるのかを専門医に聞きました。加えて、日々の暮らしの中でできる予防策、改善策などもあわせて紹介します。
前編の今回は眼や皮膚など頭回りに関する「現代病」を解説します。
ドライアイ
パソコンやスマートフォンなど、仕事だけでなく目を酷使する環境が続き“ドライアイ”を訴える人が増えています。気になる原因や予防方法などをチェックしてみましょう。
・ドライアイとはどんな病気? 自覚症状とは?
ドライアイとは、涙の分泌量が減る、涙の質が低下することによって、目の表面を潤す力が低下した状態をいいます。具体的な症状としては、個人差はありますが、目がしょぼしょぼする、痛みがある、目が疲れやすいと感じる、かゆみを感じるといったものが挙げられます。
・ドライアイを引き起こす原因とは
パソコンやスマートフォンなどの使用に加え、コンタクトレンズの連続装着、長時間の運転など目を酷使する状況が続くことのほかに、エアコンの風が長時間当たることによる乾燥や睡眠不足、ストレス等も原因となります。
・ドライアイの治療とは?
潤いを持たせる点眼薬で症状を緩和させることが可能です。また人工涙液、ヒアルロン酸製剤、ムチンや水分の分泌を促進する点眼薬などが用いられることもあります。点眼薬はたくさん種類がありますが、コンタクトを装用している人はできるだけ防腐剤の入っていないものを使用してください。
・日常生活で予防するポイントは?
パソコンやスマートフォンは長時間使用せず、1時間に1度は10分程度の休憩をとるようにするのが望ましいです。またエアコンを使用する場合には加湿するなどの工夫をするようにしてください。以上のようなことをしても改善されない場合、また痛みやかゆみを感じる場合は、早めに専門医に相談するようにしましょう。
眼精疲労
眼精疲労とは、目の痛み、かすみ、充血などの症状に加え、頭痛・肩こり・吐き気、イライラ、倦怠感などの全身症状が出現し、休養をとっても十分に回復しない状態をいいます。
・原因は?
パソコンやスマートフォンによるドライアイが高じて眼精疲労につながるケースもあります。またメガネやコンタクトの度数が正しく合っていない時にも起こります。
・眼精疲労と診断された時の治療方法は?
ドライアイが原因の時は点眼薬などを用いて治療します。またビタミン剤を処方する時もあります。度数が合っていなかったメガネ、コンタクトなどを正しい度数にするだけでも症状が改善する可能性があります。
・眼精疲労を慢性化させないために日常生活で気をつけたいこととは?
パソコンやスマートフォンを使用する際には1時間に10分程度の休憩やストレッチ、目の体操も効果的です。室内では照明の明るさや、パソコンモニターやテレビの高さをチェックします。位置が高過ぎると眼精疲労の原因にもなりますので注意してください。
花粉症皮膚炎
花粉症は目のかゆみや鼻水、くしゃみなどが一般的な症状として知られています。それに加え、肌に症状が出ることがあり、これを花粉症皮膚炎といいます。首や顔など露出している部分を中心にかゆみや湿疹、乾燥、ヒリヒリした痛みなどの症状が見られます。
・花粉症の人は注意が必要
皮膚に花粉が付着することが原因で皮膚炎を発症します。乾燥や過度のメイクなどでバリア機能が低下したところに、花粉による刺激が加わってアレルギー症状が起こるのです。時期としてはスギが飛散する春だけでなく、ブタクサ、ヨモギなどが飛散する秋も発症する可能性があります。
・治療は塗り薬が一般的
抗アレルギー薬などによる花粉症の治療に加えて、湿疹には塗り薬が有効といわれています。症状が治まってからは保湿剤に変更し、肌のバリア機能を保ちます。
・日常生活での予防方法とは?
1.肌の保湿
日頃から保湿剤などでスキンケアをし、室内では加湿器を使うなど肌を乾燥から守りましょう。
2.花粉をガード
外出時はメガネ・マスク・帽子などの着用が効果的です。帰宅後は玄関先で服についた花粉を落としましょう。洗顔やシャワーで花粉を洗い落とすことも有効です。花粉が多い時期は、髪の毛をまとめておくのがおすすめで、意外と花粉がつきやすいコンタクトレンズの使用や、ハイネックの着用は避けるとよいでしょう。また、室内では空気清浄機の使用も効果的です。
3.ストレスのない生活
肌の免疫機能を高めるためには、ストレスをためないことや良質な睡眠をとることも大切です。規則正しい生活を心がけ、睡眠時間をしっかりとって体調を整えるようにしましょう。
紫外線アレルギー
紫外線に当たった皮膚で生じる湿疹反応のことを一般的に、日光あるいは紫外線アレルギーと呼びます。日光に当たった部分に赤み、腫れ、かゆみ、ブツブツした湿疹のようなものが出ます。
・症状を引き起こす主な原因とは?
紫外線によってアレルギー症状が起こる経路は幾つかあります。身近な例では、湿布薬による光線過敏症に注意が必要です。ケトプロフェンという薬剤が主成分の湿布は、貼った時に症状が出なくても、湿布を貼った部分に日が当たると、その部位が赤く腫れることがあります。長い時には貼がしてから腫れが数ヶ月間も続くことがあるので要注意です。また高齢者の場合、血圧治療のために飲んでいる薬剤が原因でアレルギー症状が起こることがありますので場合によっては薬剤の変更が必要です。
・受診した場合の治療方法とは?
ゴールデンウイークの頃に主に若い女性の手の甲から肘までに小さいブツブツが出るタイプの紫外線アレルギーでは、2~3日で自然に治ることもありますが、かゆみやブツブツがひどい時はステロイドの塗り薬が処方されることもあります。6月以降、紫外線に耐性ができてくると自然に出にくくなります。
・日常生活の中で気を付けたいこと
強い日差しを避け、紫外線が強くなる春先以降は日焼け止めを塗る、日傘や帽子、手袋や長袖でガードすることが効果的です。また他のアレルギーに関しても同じことがいえますが、ストレスは万病の元となるため、規則正しい生活をする、睡眠をしっかりとることも大切です。
ストレートネック&猫背
肩こりだけでなく首こりや頭痛の原因ともいわれるストレートネック。本来、首の骨は緩やかに前弯のS字のカーブを描いています。スマートフォンやパソコンゲームなどで顎を前に突き出すような姿勢が長く続くと、頸椎の前弯カーブが損なわれ、頸部がストレートになります。この状態がストレートネックです。
・ストレートネックはどんな症状になる?
ストレートネックになると肩こり・首こりや冷え、背中の痛み、腰痛などを引き起こします。またイライラや不眠、頭痛など様々な不調につながってしまう場合があります。頸椎と背骨はつながっているため、ストレートネックから猫背になっているケースも多くみられます。ストレートネックになると背中の筋肉なども硬くなり、猫背になるため横隔膜を十分使えなくなることから呼吸も浅くなりがちです。
・どのような治療が効果的?
痛みがある場合には、原因になっている筋膜・筋肉の緊張をとる施術が必要です。また首の付け根から顎にかけてのストレッチを行うことで症状の緩和を行います。
・日常生活での注意点
ストレートネックや猫背などにならないために、長時間同じ姿勢にならないように、1時間ごとに休憩をとって体を軽く動かすなどしましょう。仕事中などで席を立つのが難しい場合は座ったままで顎を引いて首の後ろの筋を伸ばす、首や肩などを回すなどの簡単なストレッチを行うだけでも症状が緩和します。
まとめ
現代病と呼ばれる疾病の中には、放置しておくと重大な疾患につながることもあります。しかし、普段の生活をほんの少し見直すだけで症状が緩和されるものも多いようです。「もしかしたら?」と感じる症状があれば、早めの受診、対策をとることがおすすめです。後編では呼吸やメンタルに関する「現代病」を解説します。
<取材協力>
●ドライアイ・眼精疲労
医療法人 畑眼科
院長 横須賀 裕美子先生
●花粉症皮膚炎・紫外線アレルギー
服部皮膚科アレルギー科
院長 服部 浩明先生
●ストレートネック&猫背
こう接骨院
院長 木ノ上 洸先生