読書は語彙力や想像力を養い、学力の基礎となる国語力の向上が期待できることから、周囲から「本を読みなさい」と言われて育った人も多いのではないでしょうか。株式会社ベネッセコーポレーションの社内シンクタンクであるベネッセ教育総合研究所の「小学生の読書に関する実態調査・研究」から、読書が子どもの学力にもたらす効果が見えてきました。
子どもは読書でどのような効果を感じている? 小学生高学年に聞き取り調査
子どもが感じる読書の効果について尋ねたところ、いろいろな種類の本を読む子どもほど、そうでない子どもに比べて様々な効果を実感していることがわかりました。

出典:ベネッセ教育総合研究所HP
「わからないことを自分で調べるようになった」が40.6ポイント差で最も差が大きく、「いろいろな人の考えを知ることができた」「難しいことを考える力がついた」が39.7ポイント差、続いて「自分の考えを人に伝えられるようになった」(39.2ポイント差)や「新しいアイデアが浮かぶようになった」(39.1ポイント差)と続きます。特定のジャンルばかりではなく、いろいろなジャンルの本を読むことで、知識欲の向上や思考力や理解力、発想力や創造性など、多くの力を養うことができたと感じた子どもが多いことがわかりました。
次に、本を読む時にどのような読み方をしているか尋ねたところ、多ジャンルの本を読んでいる子どもの方が読み方に工夫がみられることがわかりました。

出典:ベネッセ教育総合研究所HP
いろいろな種類の本を読む子どもとそうでない子どもの間で「どこが大切かを考えながら読む」(38.1ポイント差)と「わからない言葉を調べたり、人に聞いたりしながら読む」(30.9ポイント差)が特に差が大きいことが分かりました。これは、いろいろな種類の本を読む子どもが、ただ読むだけではなく、より本の内容を理解するために効率的な読み方を考え、工夫している結果だと考えられます。
多ジャンルの本を読む子どもは「社会」の成績アップが顕著
では読書によって、学力はどのように変化するのでしょうか。同調査では、読書をしなかった子どもに比べ、読書をした子どもの方が偏差値が上がっているという結果が出ています。

出典:ベネッセ教育総合研究所HP
どの教科においても、様々なジャンルを読んだ子どもの方が偏差値の上昇幅は大きくなっています。なかでも社会において、その差が顕著に表れる結果となりました。社会は、文章を理解する国語力や分析力、思考力など、幅広い力を必要とされる教科です。社会や歴史に関する本を含めた様々なジャンルの本を読むことにより、多彩な知識や能力を身に着けることができ、成績アップにつながったといえそうです。
小学生に人気の本は? 各ジャンル5位までを発表
では、子どもたちは日頃どんな本を読んでいるのでしょうか。この1年間で読んだ本をジャンル別に質問したところ、次のような結果となりました。

子どもに馴染みのあるジャンルである「お話・読み物」では、『おれがあいつであいつがおれで』のような定番の児童文学のほか、アニメや映画の原作やノベライズ版が上位にランクインしているのが特徴です。また、「自然・科学に関する本」と「社会・歴史に関する本」では、『いきもの最強バラエティー ウソナンデス』『ジュニア空想科学読本』『しくじり歴史人物事典』など、子どもが楽しみながら読める作品が多くランクインしました。こういった読みやすい切り口の本は、子どもが苦手意識を感じることなく知識の習得ができ、学力向上に一役買っていると考えられます。
まとめ
子どもの読書は、知識や興味の広がりや、想像力や思考力の向上だけでなく、学力の向上にも役立つことがわかりました。文部科学省による「子どもの読書活動推進に関する有識者会議(第5回)」において、1ヶ月に一冊も本を読まない高校生の割合は、2017年時点で50.4%と、約半数に上ることが報告されています。小さなころから読書習慣を身に着けることが重要ですが、楽しいものでないと長続きしないのが子ども。読書を勧めるなら、ベネッセ教育総合研究所の調査・研究結果を参考に、子どもが親しみを持てる切り口の本を紹介しながら、様々なジャンルの本に触れる機会を提供するとよさそうです。
ニュース提供元:PRTIMES
情報提供元:ベネッセ教育総合研究所