毎日の暮らしをちょっと幸せにしてくれるおいしいパン。「365日、パンのことで頭がいっぱい!」というライター・斎藤若菜さんが、地元の人に愛されるとっておきのベーカリーをめぐる連載「絶品パンさんぽ」の後編をお届けします。前編に続き、名店ぞろいの「新高円寺」駅周辺のベーカリーの中から、ベーグル専門店とフランスパンがおいしいお店を紹介します。
前編はこちら:【新高円寺】パンさんぽ前編・うさぎ尽くしの本格派ベーカリーを訪問!
本場ニューヨーク並みのビッグサイズ!「えび寿ベーグル」
2店舗目は五日市街道沿いにある「えび寿ベーグル」へ。3年ほど前にオープンしたベーグル専門店です。
ニューヨークスタイルにこだわったベーグルを提供
オーナーの釜井さんはもともと会社勤めでしたが、ホームベーカリーでパンを焼いたときに「なんて幸せな香りなのだろう」と感動した体験から、パンが大好きになったそうです。ベーグルと出合ってからは、国内はもちろん、本場・ニューヨークにも足を運び、ベーグルを食べ歩く毎日に。パンと具を選んでその場で挟み、サンドイッチにしてもらって食事を楽しむスタイルが気に入り、「日本でニューヨークスタイルのベーグルを出したい」と決意したそうです。
その後、SNSへの投稿がきっかけとなり、代官山のカフェでベーグル教室を開講。製パンの専門学校にも通った後、満を持して「えび寿ベーグル」をオープンしました。
外はパリッ、噛むともっちりのベーグルに仕上げる秘訣は?
「えび寿ベーグル」のベーグルは、本場ニューヨークと同じビッグサイズ。なんでも、日本で一般的なベーグルはニューヨークで「ミニベーグル」と呼ばれているのだとか。オープン前に試作品として焼き上げたベーグルは、現在よりも一回り小さかったそうですが、試食したカナダ人の男性に「これはニューヨークサイズというより、イングリッシュサイズだね」と言われてしまったことから、当初よりさらにもう一回り大きくしたそうです。
ベーグルの主原料となる粉は、北海道産の強力粉・キタノカオリと、フランスパン専用粉・リスドールを1:1で使用。「趣味でベーグルを焼いていたときから、豊かな香りやしっかりとした味わいに惹かれていて、絶対に使いたかった」というキタノカオリに、バランスのよいリスドールを加え、200度前後で焼き上げることで外はパリッと、噛むともっちりとした食感を実現しています。開店時間の11時に合わせて焼き上げているため、早めの時間に行けば好みのベーグルを選びやすそうです。
ちなみに、えび寿ベーグルという店名は、お母さんと妹さん、釜井さんの名前の頭文字をとって名付けたとのこと。お母さんが総菜店を開こうと考えていた際に考えた店名が元となっています。残念ながら、お母さんがお店を開くことは叶いませんでしたが、生前に「ベーグル店の名前として譲ってほしい」と伝えたところ、大変喜ばれたそうです。
ベーグルと具材の組み合わせを考えるのも、同店の楽しみ。ヒマラヤ産の岩塩「ピンクソルト」のベーグルは、淡白な「スモークサーモンクリームチーズ」と相性ぴったり。「チョコレート」のベーグルに「カフェモカ」の組み合わせもおすすめだそうです。
香ばしくもっちりとした食感のベーグルは、食べ応えばっちり。シェアする場合は、カットして提供してもらうこともできます。挟んだ具材もおいしく、個人的には、ひよこ豆のペーストににんにくやオリーブオイル、クミンなどを加えた「フムスサンド」がお気に入り。「ハム・レタス・トマト(HLT)」は、調味液に漬け込んでから低温でじっくりと仕上げた自家製の豚ハムがポイントです。
「シナモンレーズンくるみクリームチーズサンド」はおやつになりそうな味ですが、甘さ控えめなので誰でも食べやすそう。クリームチーズにコーヒーとココア、刻んだチョコを入れた「カフェモカ」はコーヒーの香りがしっかりと出ていて、少し大人味でした。
合わせて、オリジナル焙煎の有機栽培コーヒーや自家製ジンジャエールなどのドリンクも提供しています。コーヒーは開催しているベーグル教室の生徒として知り合った方が、えび寿ベーグルのためにオリジナルで焙煎。コーヒー豆も販売しています。
えび寿ベーグル
住所:東京都杉並区梅里2-6-3
営業時間:11:00~20:00
定休日:木曜
公式ホームページ: https://ebisubagel.com/wp/home/
毎日通う常連客も多い「boulangerie ECLIN(ブーランジェリー エクラン)」
ルック商店街にある「boulangerie ECLIN(ブーランジェリー エクラン)」は、新高円寺駅と高円寺駅の中間あたり位置するお店です。
「家族の想いを詰め込んだ宝箱」をイメージした店内
「ブーランジェリー エクラン」という店名の「エクラン」はフランス語で「宝箱」を意味するそうです。家族の想いを詰め込んだ宝箱のような店をイメージし、みんなで作り上げたお店とあって、店内の壁には趣味のベースギターや好きなアーティストのCD、サインなどがディスプレイされています。
壁面には、イラストレーターに依頼して描いてもらったという、家族をモチーフとしたイラストも! アットホームな雰囲気に満ちています。
地元在住のオーナーによる種類豊富なパンを楽しんで
オーナーの本間さんは、阿佐ヶ谷のベーカリーなどを経て、7年前に現在の店をオープン。以来、店内のパンは本間さんが1人で責任をもって仕込み、焼き上げているそうです。11:00までに全商品が揃うように焼き上げているため、豊富なラインナップから選べる午前中が狙い目! 「作る側も、買う側も楽しめるように」と、たくさんの種類のパンを、オリジナルの配合で一つひとつ丁寧に仕上げていることも特徴です。物価も人件費も高騰しているため、少しずつ値上げせざるを得ない状況ではあるものの、できるだけ抑えた価格で提供しているといいます。
毎月新しい商品を出すことを心がけているそうで、何度足を運んでも飽きずに楽しめるところも、うれしいポイント。「でも、毎日気に入ったパンをひたすらリピートする常連さんがとても多くて。もっといろいろなパンを試していただけたらうれしいのですが」と苦笑いの本間さん。老若男女、さまざまな常連さんが訪れる同店ですが、「お客さまと会話をすることを心がけている」そうで、地元の人々に愛されている様子が伝わってきました。
ちなみに、フレンチレストランやスペイン料理店など、近隣の飲食店からの購入も多いとのこと。ふらりと入ったレストランで、もしかしたら同店のパンを口にしているかもしれませんね。
人気の「バゲット」や「バタール」は、フランス産小麦粉(ブション)とゲランドの塩を使用。平日は12本、土日は20~30本程度焼成しています。水分を多く含むドロドロの扱いにくい生地からつくるため、熟練の技術が必要な逸品です。
筆者はバゲットとバタールのどちらを購入するか迷った結果、「パリッとした皮を楽しむならバゲット、もっちりとした中身を重視するならバタール」というアドバイスを参考に、バタールをチョイス。そのまま食べるとやわらかな食感を、焼くとパリっとした食感を楽しめました。何もつけなくても味わい深く、大満足でした。
「すっごいコーンパン」は、粉100グラムに対し、コーンが100グラムが入っているという、名前の通り“すっごい”配合のパン。持ち帰っていただきましたが、焼きとうもろこしのようなあまじょっぱい味が食欲をそそり、あっという間に完食してしまいました。
boulangerie ECLIN
住所:東京都杉並区高円寺南2-21-9 木の下ビル101
営業時間:8:00~20:00
定休日:月曜(祝日の場合は翌日休み)
公式Twitter:https://twitter.com/eclin_kouenji
編集後記
いかがでしたか? 首都圏に「パン激戦区」と言われるエリアは数多くありますが、新高円寺を思い浮かべる人はまだ少ないのではないでしょうか。しかし、今回紹介した3店舗のほかにも個人経営の魅力的なパン屋さんが点在している、パン好きにはたまらないエリアだと感じました。みなさんも、新高円寺で”パンさんぽ”を楽しんでみてはいかがでしょうか?
前編はこちら:【新高円寺】パンさんぽ前編・うさぎ尽くしの本格派ベーカリーを訪問!
(最終更新日:2021.03.29)