2019年9月28日のウェブ版日本経済新聞によると、総務省はふるさと納税制度からの大阪府泉佐野市の除外を継続する方針を固めました。本来のふるさと納税の趣旨にそぐわないことが除外の理由です。このことは、私たちにとってマイナスの要因になることはなく、対象商品のクオリティの向上につながると見込まれています。
泉佐野市が除外となった理由
ふるさと納税は「東京一極集中」を是正するための、地方創生政策として生まれました。自分の出身地域や応援したい自治体に寄付することが可能です。この仕組みが開始されて以降、寄付額に関連した過度な争いが、自治体同士に起こるようになり、本来のふるさと納税の趣旨にそぐわないケースが出てきました。
大阪府泉佐野市や佐賀県みやき町は、返礼品として「Amazonギフト券」や「高額な家電製品」を選定したため、特に問題視されていました。その中には、返礼品の還元率が4~5割を超えるものもありました。
問題点を改善するため、法改正が実施されました。改正により、返礼品を「寄付額の3割以下の地場産品」に限った自治体だけが参加できるようになりました。改正は、2019年6月から適用されています。
総務省は、法改正実施前である2018年11月までに、返礼品を寄付額の3割以下などに抑えるよう自治体に要請する措置を取りました。多くの自治体は2018年中に返礼品の見直しを行いましたが、泉佐野市は従わず、同省は泉佐野市を新制度の対象から外しました。同市のほかにも見直しを行わなかった市町村がありましたが、同市だけが国地方係争処理委員会に審査を申し出ていました。
泉佐野市への寄付額は突出しており、6月からのふるさと納税新制度に参加を申し出た4月以降もAmazonギフト券などの提供をやめなかったことを理由に、同市が除外されることが5月15日に総務省により告示されました。
私たちの生活への影響は
ふるさと納税の市場は年々拡大の方向にありました。
総務省による「ふるさと納税に係る現況調査」によると、平成25年度以降右肩上がりで、平成30年度は295.5万人となっています。
給与の昇給が見込めない現代では、節税することが可処分所得を増やすための大切な手段であることは、年金問題やiDeCo、NISAなどのトピックスが市場で取り上げられるたびに、私たちにインプットされています。ふるさと納税による節税も同じこと。一度ふるさと納税を利用した人は、再度利用する可能性が高くなります。この295.5万人という数字が、法改正により今後しぼむことはないと推察します。
1.返礼品のクオリティが上がる?
法改正により、ルールが詳細に定まったことで、返礼品のクオリティが高くなることが予想されます。自治体は、みんなに受け入れられる返戻品をと意欲的になるでしょう。たとえば、消費税の増税にともない送料が上昇する現状の中、「モノ」ではなく、「コト」を消費するような商品を提案する可能性も出てくるのではないのでしょうか。
2.「モノ消費」ではなく「コト消費」の商品が登場
「コト消費」を返礼品にする自治体は増加傾向になるようです。
JTBが運営する、ふるさと納税ポータプルサイト「ふるぽ」は、旅先でその地域を応援する「旅ナカ寄附」という企画を開始しました。訪れている自治体への納税申し込みをスマートフォンで行うと、その場で返礼品を受け取ることができるというものです。返礼品はすぐに使うことができ、納税だけでなく返礼品を通しても地域活性化に貢献することができます。石川県七尾市はこの返礼品として、和倉温泉の「加賀屋」と姉妹館「あえの風」の売店などで使える「加賀屋館内利用券」と「加賀屋宿泊券(1泊2食)」を提供しています。館内利用券は寄付した当日から使うことができ、旅を充実させるツールとなっています。
ほかにも、花火大会やマラソン大会への参加などの体験型、「清水寺の夜間参拝」「ダム内部の見学」など、普段公開していないものを寄付者だけに特別に見せる招待型返礼品もあります。
新しい企画が「ふるさと納税」の返礼品対象となる可能性が今後はさらに大きくなるでしょう。