2019年7月、都営地下鉄大江戸線の車両に「子育て応援スペース」が設置されました。大江戸線に限らず、ここ数年、電車やバスなど公共交通機関では、子連れでも利用しやすい環境が整えられています。この記事では、子連れやベビーカー利用時の乗車に関する鉄道会社やバス会社各社の取り組みをまとめて紹介します。
都営地下鉄大江戸線
一部の列車の3号車および6号車のフリースペースに「子育て応援スペース」を設置した大江戸線。車両の壁には、人気キャラクター「きかんしゃトーマスとなかまたち」が描かれているため、子ども向けスペースであることが一目でわかります。
このスペースは座席が少ないため、ベビーカー利用者や子育て世帯が利用しやすい造りとなっているのが特徴です。ただし、「子育て応援スペース」はすべての列車に設置されているわけではありません。設置された列車の運行時刻を知りたい場合は、乗車当日、東京都交通局のホームページで確認ください。
西武鉄道
西武鉄道では「パートナーゾーン」という名称で、2017年3月より一部列車で子連れ・車いす用のスペースを設置しています。特徴は、ベビーカーや車いすを置くスペースを提供しているだけではないということ。たとえば、乗車している子どもたちが車窓の景色を楽しめるよう、従来よりも窓を大きくしています。
この「パートナーゾーン」が設置されているのは「40000系」と呼ばれる列車。「S-TRAIN(西武池袋線)」や「拝島ライナー(西武新宿線)」などの有料列車に使われることが多いため、現状では日常的に利用することは難しいかもしれません。
東急電鉄
東急電鉄の池上線・東急多摩川線で使われる「7000系」と呼ばれる車両には、両端に3人掛けのクロスシートが設置されています。
クロスシートとは座席が進行方向(あるいは逆方向)を向いて設置されている座席のこと。2人掛けと1人掛けの座席が向かい合わせになっているのですが、1人掛けの座席隣のスペースにベビーカーや車いすを置くことが可能です。
列車により形状は異なりますが、田園都市線でもベビーカーや車いすに対応しているフリースペースが設けられています。
東急電鉄は2016年度以降に造られたすべての車両にフリースペースを設置しており、子育て世帯への対応が進んでいるといえるでしょう。
JR東日本
2015年11月より運用を開始したJR東日本・山手線の新型車両・E235系にもフリースペースが設けられています。それまでの山手線との違いは大きく2つです。
1つは、1本の列車に設置されている車両数の違い。これまでは1号車と11号車のみに設置されていましたが、このE235系には11両編成すべて(1号車から11号車まで)の車両に設置されています。
もう1つはその用途。これまでは「車いす用スペース」とされていましたが、このE235系では「フリースペース」と呼ばれ、用途を限定しないスペースとなっており、ピンク色に塗られた床面にはベビーカーと車いすのマークが描かれています。
東京メトロ
東京メトロでは、ベビーカーや車いすなどに対応したフリースペースが全線に設置されています。このフリースペースは、丸ノ内線の「2000系」と日比谷線の「13000系」にはすべての車両に、それ以外の車両には1編成あたり2ヶ所設けられています。今後も車両の改修に合わせ、フリースペースの設置を進めていくとのことです。
大阪モノレール
2018年10月に運行を開始した大阪モノレールの新型車両「3000系」にも、子ども用のスペースが設置されています。運転席の後ろに設けられているキッズスペースは、床が一段高くなっており、運転士越しでも前面の景色がよく見えます。
また、キッズスペース隣にはベビーカースペースも。ここには腰当て用のクッションが貼られており、子連れユーザーにやさしい造りとなっています。
そのほかの鉄道会社の事例
そのほかの鉄道会社でも、各車両にフリースペースが設置されている新型車両の導入が進んでいます。主な例は以下の通り。
路線バスの事例
路線バスにもベビーカー用のスペースが設けられているケースもあります。たとえば、都営バスでは、バスの中扉正面あたりにベビーカー用の補助ベルトが設置されている座席があり、ベビーカーを固定することができます。
ただし、常時このスペースが使えるわけではないので注意が必要です。朝夕のラッシュ時など混雑している場合や、補助ベルトがすべて利用されているときなどは利用できません。また、ベビーカーより車いすが優先となります(すでにベビーカーを固定している場合でも、車いす優先に)。そのほかにも乗車できない場合がありますので、利用するバス会社のホームページで確認ください。
※すべてのバス会社のバスにベビーカー用のスペースがあるわけではありません
「子育て応援スペース」への反響は?
本記事のはじめに紹介した大江戸線の「子育て応援スペース」は、誰もが安心して子供を産み育てられる環境を整備していく取り組みの1つとして打ち出されたプロジェクト。施策への反響は、「子育て世代としては本当にありがたい」「子どもが喜んでいる」といった好意的な意見が多いようです。
都としては、小さな子ども連れの乗客にも安心して気兼ねなく電車を利用してもらえるように、譲り合いや配慮など、ほかの乗客への理解を促進すること、社会全体で子育てを応援する機運を醸成することなどを目的とした取り組みであるため、「優先」「専用」といった言葉は使用していないそうです。
まとめ
電車やバスなどの公共交通機関でも、子連れで利用しやすい環境が整ってきました。続々と整備されている今だからこそ、子育てに関して社会全体で考えることがより必要といえるかもしれませんね。