洗濯物といえば、日当たりのよいベランダに干すのが定番でしたが、最近は花粉症対策やライフスタイルの変化によって室内乾燥のニーズが高まり、洗濯機や浴室乾燥機の世帯普及率(※1)が半数を超えるようになりました。なかでも浴室乾燥機は、衣類の乾燥や換気、冬の暖房、夏の涼風と1台で何役もこなしてくれる優れものとして注目されています。そこで今回は、時短家事コーディネーター認定講師・柴田さちこさんに、浴室乾燥機の効果的な使い方や電気代の節約術を教えてもらいました。
(※1)内閣府「消費動向調査」(2018年)「主要耐久消費財等の普及率(二人以上の世帯)」では普及率56.1%
浴室乾燥機のどの機能を使うと、いくら電気代がかかる?
どんな機能があるの? 機能別の電気代について
浴室乾燥機は、家電メーカーや住宅設備機器メーカーなどからさまざまな機種が発売され、浴室以外に洗面室の暖房を兼ねたものや、高機能な機種も登場しています。1年を通して活躍する便利な設備ですが、一方では電気代が高くなるイメージがあります。
まずは、基本的な機能をチェックしながら、それぞれの電気代(※2)をみていきましょう。
(※2)電気代の計算方法
消費電力W×0.027×使用時間=電気代
・消費電力は主要6社の平均値
・電気代は新電力料金目安単価27/kWh(税込)にて計算
(公社)全国家庭電気製品公正取引協議会より(2017年12月現在、税率8%)
1.衣類乾燥 …3時間の運転で約97円
洗濯物を部屋干しすると、室内に湿気がたまったり、見た目がごちゃごちゃしたりするのが気になりますよね。浴室で乾燥できれば、そんな悩みも解決し、部屋がすっきりします。
さらに、浴室乾燥機を使えば短時間で乾かせるので、雑菌が発生しにくくなり、部屋干しによって発生しがちな臭いも防ぐことができます。
2.暖房 …入浴前30分の運転で約17円
寒い季節に、暖房の効いた居間から冷え込んだ浴室に移動すると、急激な温度変化によって血圧が一気に上昇し、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす危険性が高くなります。これを「ヒートショック」と呼び、入浴前に浴室を暖めておくことで予防できるといわれています。
3.涼風・送風 …入浴前後30分間の運転で約5円
蒸し暑い夏は、入浴することでかえって汗をかいてしまうことも。そんな時は涼風機能が涼しい風を送って浴室内の湿った空気を取り除き、送風と換気で温度上昇を抑えてくれます。夏場の風呂掃除をする時に、扇風機代わりにも使えます。
4.換気 …入浴後3時間の運転で約6円
浴室のカビ発生を防ぐためには、換気扇代わりに入浴後3時間程度は換気運転を行うのがおすすめです。浴室に窓がない場合も、しっかり換気ができます。
5.24時間換気 …24時間の運転で約11円
24時間換気運転することで常に空気をリフレッシュでき、湿気を排出して浴室のカビ発生を抑えることができます。また、シックハウス対策(※3)の1つとしても有効です。
(※3)気密性の高い住宅が増えたことでシックハウス症候群やアレルギー症状が増加。2003年に建築基準法が改正され、住宅全体を計画的に換気する24時間換気システムの設置が義務付けられた。
基本的な5つの機能の中で最も電気代がかかるのは「衣類乾燥」です。1回の乾燥で3時間運転した時の電気代が約100円、月に10日使えば1ヵ月で1,000円、1年間で1万2,000円になります。花粉症やPM2.5への対策として日常的に使う場合はさらに電気代が高くなるため、できるだけコストを抑えたいところです。
【比較表】主なメーカーの浴室乾燥機の消費電力
浴室乾燥機を扱うメーカーから6社を選び、機能別に調べた1時間当たりの消費電力は表の通りです。
いずれの機種も、1時間当たりの消費電力は「衣類乾燥」と「暖房」機能が高く、「涼風」「換気」「24時間換気」はそれほどかからないようです。
電気代を節約するためにできること
電気代がかかっても、やはり活用したい衣類乾燥機能。より効率的、経済的に使うコツをご紹介します。
まず浴室の湿気を取り除く
衣類乾燥機能で早く乾かすためには、あらかじめ浴室内の湿度を下げておくのがポイントです。入浴後すぐに衣類乾燥を始めたい場合は、まず換気機能で空気を入れ替えましょう。より早く湿気を取り除くには、浴室の壁面や床の水滴を拭き取っておくのがおすすめ。窓ガラスの掃除によく使われるスクイージー(水切りワイパー)や、吸水力の高いスポンジワイプなどを使えば、一気に拭き取れて時短効果も抜群です。
また、完全な密室では乾燥効果が十分発揮されないので、浴室に給気口がなければ窓やドアを少し(1センチメートル程度)開けて適度な空気を取り入れる必要があります。メーカーによって給気口の有無や使用方法が異なるので、取扱説明書を確認しましょう。
干し方を工夫する
洗濯物の間隔を空けて干し、空気の通り道を作るのが早く乾かすコツです。天井埋込タイプの場合、温風の吹き出し口が中央にあるので、その真下にジーンズやパーカーなど厚手で乾きにくいものを干し、両サイドの端に薄手のものを干すようにします。ジーンズなど筒状の衣類を早く乾かすには、筒内に空気が通るように干すのがポイントです。市販のジーンズ用ハンガーや、ワイヤーハンガーで簡単に作れるお手製ハンガーを使うのもおすすめです。
お手入れを忘れずに
浴室乾燥機のフィルターやファンにホコリがたまると効率が落ち、電気代がかさむ原因になります。月1回を目安に定期的に掃除をしましょう。水洗い不可のフィルターもあるため、取扱説明書でお手入れ方法を確認しましょう。
オール電化なら深夜料金がお得
各電力会社が指定する温水器を備えた家庭なら、昼間時間より深夜時間(夜11時~翌朝7時まで)の電気代のほうが安い料金体系となっているのが一般的です。この時間帯に衣類乾燥機能を使えば節電できます。
各メーカーのおすすめ機能は?
浴室乾燥機を発売する各社では、その技術力を生かした付加価値の高い機種が続々と開発されています。大きく分けると、ヒートショックを防ぐ機能、カビ発生を抑える機能、省エネ効果を高める機能があります。
ヒートショックを防ぐ機能
三菱電機の「ロング気流暖房モード」は、温風が床面までしっかりと届くので、早く足元を暖めることができます。
HITACHIの「グラファイトヒーター」は、電源を入れるとすばやく温度が上がり、遠赤外線効果で体の芯まで暖めてくれます。
カビ発生を抑える機能
Panasonicは、乾燥機能や換気機能の運転時は循環風に微粒子イオン「ナノイー」を放出し、浮遊カビを抑制します。
マックスは「プラズマクラスター」技術を搭載し、換気や乾燥機能の運転後にプラズマクラスターイオンを発生させ、浴室内を浮遊するカビを取り込んで繁殖を防ぎます。
- 省エネ効果を高める機能
LIXILの「サイドブロー機能」は、風を効率よく循環させることで、浴室の壁際に干している衣類でも消費電力を抑えながら乾かすことができます。
TOTOの「ecoモード」は、温風乾燥の時間を短くし、電気の使用量を抑えたモードです。標準モードよりも乾燥時間は倍以上と長くなりますが、スタート時と後半は送風乾燥を行うことで、電気代を抑えることができます。
まとめ
1台5役ともいわれる、便利な浴室乾燥機。乾燥機能付きの洗濯機も人気ですが、浴室乾燥機があれば、浴室で洗濯物を乾燥させている間も洗濯機を回せるので、洗濯物の量が多く1日に何度も洗濯機を回す家庭にも便利です。今回紹介した機能の使い方や、洗濯物の干し方を参考にしながら、より快適な暮らしをお得に実現させましょう。
【取材先】
一般社団法人ワーク・ライフ・インテグレーション協会理事
時短家事コーディネーター®Expert認定講師
柴田さちこさん