地域貢献にもつながる「電子地域通貨」は意外と使える? メリット、デメリットは?

1990年代後半~2000年代前半に全国でブームになった特定エリアのみで使える「地域通貨」。昨今のキャッシュレス化によって「“電子”地域通貨」として再びブームになりつつあります。「電子地域通貨」のメリット、デメリット、また今後どのような発展が見込めるか考えてみました。

「お金」と「地域通貨」の違い

機能性の高い「お金」と比べて、地域通貨の利便性は?

地域通貨の最大の目的は「地域貢献」です。少子高齢化による地域経済の停滞を食い止めるひとつの手段として1990年代後半~2000年代前半に全国的なブームとなり、600件以上の地域通貨が生まれたにもかかわらずほとんど定着することなく衰退しました。

地域通貨が「お金」の代わりとして利用促進されるためには「便利」でなければいけません。「お金」の機能には以下の3つが挙げられます。

・決済手段としての利便性
・貯蓄機能
・増殖機能

「お金」が決済手段として使えないところはありません。また、長期にわたり保存が利くので、貯めて保有することが可能です。さらに利子や利息により増えていくという特徴も持ち合わせています。

しかし、これが地域通貨になるとどうでしょうか。使えるお店が限られているので利便性は低く、有効期限があるものが多いため、保存が利きません。また、利子や利息が付かないので、増殖機能もありません。そうなると、たとえ「地域貢献」という大義名分があったとしても、ユーザーである消費者にとってはメリットが少ないため、衰退してもおかしくありません。

電子地域通貨のメリット、デメリット

キャッシュレス決済の増加によって、各地域での導入が見られます

例えば飛騨信用組合が運用を始めた「さるぼぼコイン」など、電子地域通貨は、以前の地域通貨とは違って発行額が増えており、キャッシュレス決済が増えてきたことで各地域での新たな導入が見られます。キャッシュレス決済の仕組みを利用して、電子地域通貨にしたことで利便性が上がり、かつ安全性が上がったことが原因でしょう。あらためてキャッシュレス決済のメリット、デメリットを消費者目線と事業者目線で確認してみましょう。

次に、電子地域通貨のメリット、デメリットを消費者目線と事業者目線で考えてみます。

「地域貢献」として使える金額はいくら?

現在はチャージした額しか使えない残高払いがほとんどですが、これがクレジットカードと紐付けされたら、利用金額が増え、クレジットカードのポイントも付与されるため、通貨として発展する可能性があります。しかし、利便性もお得感も高い一般の電子マネーやクレジットカードが流通している現状で、電子地域通貨がそこまで発展するかどうかは少々疑問です。電子地域通貨の目的である「地域貢献」に一般の消費者がどこまでお金を使えるのでしょうか。

総務省が毎年発表している「家計調査」では、何にいくら使ったのか? という平均額を知ることができます。それによると、二人以上の世帯のうち勤労者世帯の毎月の食費の平均額は、7万6,090円という結果となっています。(出典:総務省2018年「家計調査」) 

1ヶ月の食費が約8万円なら、大手スーパーや大手外食チェーンを除いた地域のスーパーや飲食店で使う金額はその半分以下で、多くても4万円くらいと想定されます。

また、食品以外でも電子地域通貨が使えるとはいえ、買い物にはレジャー的要素が含まれるので、住んでいる地域以外でお金を使うことも多いのが現状です。使用期限内で確実にその地域で使う金額と考えれば、月に2万円程度しかチャージしないのではないでしょうか。そうなると、クレジットカードとの紐付けもコストと手間を考えると難しいかもしれません。

電子地域通貨の今後の見通し

今後の電子地域通貨の発展にはいくつかの課題が存在します

チャージ式の電子地域通貨は、同じように少額決済で利用される「Suica(スイカ)」などの電子マネーや一般のQRコード決済と性質が似ているため、やはり「すみ分け」が必要になるでしょう。しかし、ポイント付与に関しては明らかに劣るため、「地域活性化」を担う通貨としての満足感を消費者がいかに得られるかがポイントになるのではないでしょうか。自分の住む地域にお金を落とすことが、自分と家族そして地域に住む人々のためになることを、どのように伝えていくかも課題となります。

また地域の事業者にとっても、現金での決済以外に多くのキャッシュレス決済を導入するのは負担になるため、利益につながらなければおのずと衰退します。例えば、「さるぼぼコイン」の成功の原因の一因には、観光名所の「飛騨高山」で使われるため、外国人や観光客の利便性も考慮している点が挙げられると思われます。地域それぞれが、電子地域通貨を取り入れるべきかどうかは、地域の特性も考えながら、消費者・地元企業・地域の「三方よし」になるかどうかを客観的に判断する必要がありそうです。

利便性や損得だけではなく、自分と家族、さらに地域の幸せや豊かさにつながるひとつのツールとして考えて、電子地域通貨を使ってみるのもまた「生きたお金の使い方」とも言えるのではないでしょうか。

(最終更新日:2019.10.05)
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