(表紙写真:photographer イチカワ カオリ)
どんな家具を置くかで部屋はもちろん家全体のイメージまで大きく変わるもの。新築やリフォームを考えるのであればなおさら、より理想の空間に近づけるために、家具をオーダーしたいという人が増えているのも納得です。しかし、興味を持つ人が多くなるにつれ、「高級なイメージで敷居が高い」「イメージを正確に伝えられるか心配」「椅子だけでも注文できるの?」などと不安を覚える声も聞こえてきます。
そこで、今回は家具工房で修業後に独立し、無垢材を使ったオーダーの椅子やソファ、テーブル、キャビネットといった家具やキッチンなどを手掛ける家具職人で、wood furniture+1 (ウッドファニチャー プラスワン)の代表・二宮靖夫さんにオーダー家具の魅力について教えてもらいました。
決して敷居は高くない。椅子1脚からオーダーOK
オーダー家具の魅力は何といっても好きな素材や色、デザインで世界に一つだけの家具を手に入れられるということ。材質・色合い・デザインなどに、自分の好みを細かく反映させることができるため、つくり上げる部屋の床材や壁に合わせた材質を使用して完成度の高いトータルコーディネートが実現できます。
二宮さんの家具作りに対するスタンスを聞くと「椅子1脚からのオーダーももちろんOKです。置く場所に合った長く使ってもらえるような家具作りが身上です。デザインの美しさはもちろんですが、それだけでなく家具は生活に密着した“道具”であると考えています」と話してくれました。お気に入りの椅子が1脚あるだけで、座って読書や音楽、映画を楽しむ時間が増えたり、外の景色を眺めながら四季の移ろいを感じたりと生活スタイルに変化がうまれることがあるのだとか。
既製品とはどう違う?
既製品にもステキな家具はありますが、欲しいサイズの商品が販売されていないことも。「その点オーダーなら材質はもちろんですが、希望のサイズで作ることもできます。ピッタリのサイズで作ることができるため、デッドスペースがなくなるというメリットもあります」と二宮さん。
素材によっては熱に強いものや水気に強いものもあり、既製品とは一味違った演出を与えてくれると同時に、耐久性にも優れた家具も作ることができます。また、ダイニングテーブルなどは既製品の場合、テーブルと家具があらかじめセットになっていることもありますが、オリジナルであればテーブルと椅子、それぞれ好みのデザインでオーダー可能とのこと。たとえば4脚の椅子をすべて違うデザインにする、2脚ずつ同じにするなどのアレンジができ、こだわりの空間づくりもかなうといいます。
希望するイメージを伝えるには? オーダーのタイミングは?
思い描いているイメージを正確に伝えるためには、やはり写真や画像などを活用するのがベスト。「素材、デザインなどイメージに近いものを用意しておくとスムーズです」と二宮さん。何度か打ち合わせがあるのでその際に要望を聞き、修正を重ねていくそうです。オーダーのタイミングは住宅の設計段階で床材、壁の素材や色などが決まり、広さが決まった頃が理想的。ただし、キッチンをデザインする場合は、電気の配線、水道管などの配置と並行して進める必要があるので、設計の初期段階からの打ち合わせが必要になるそうです。
メンテナンスを繰り返しいつまでも大切に使う
無垢材を使った家具は、長く使っていると経年劣化等により修理やメンテナンスが必要となることがあります。
「うっかりへこみを付けてしまった場合なども元の状態に近い姿に戻すことが可能ですし、椅子の座面を張り替えて異なる雰囲気を楽しむこともできます」と二宮さん。修理を繰り返し、お気に入りのモノを長く大切に使うことができるのもオーダーならではの魅力です。
価格は椅子1脚55,000円より、テーブルは10万円よりとのこと。
世界に2つとないオリジナルのデザインで丁寧に作られる家具は、メンテナンスにより長く使えることを考えれば決して高くはないといえるでしょう。家族の成長を見守りながら共に思い出を重ねていく、お気に入りの家具をオーダーしてみませんか?
<取材協力>
二宮 靖夫(にのみや やすお)さん
木工職人。wood furniture+1代表。
1982年岡山県出身。神戸芸術工科大学プロダクトデザイン学科卒業後、香川県高松市の木工所「桜製作所」に入社。「ジョージナカシマ」を中心とした、家具の制作を担当する。2007年、第6回暮らしの中の木の椅子展 入選。2011年より、wood furniture+1として活動開始。2014年より自身の工房を新設し、さらに活動を広げている。
http://wood-furniture-plus1.net/about/
(最終更新日:2019.10.05)